第6話〜「好き」ということ。
「で? リュウスケはどうなんだ?」
聞いて来たのは意外にも藤川。興味津々な顔だ。
「お前はハルミをどう思ってんの?」
どうって言われても、心の準備が……
「やめやめっ。この話終わりっ!」
割って入るハルミ。
「いきなりだったからね。リュウスケだって困ってるでしょ? ごめんね」
少し笑いながら、拝むように僕に頭を下げるハルミ。
さみしそうな笑顔だなぁ。
またハルミに庇ってもらったな。
「気になる」って気持ちを僕にくれた彼女に、僕は何も「答え」をあげられなかった。
後悔と申し訳なさで、心が苦しくなる。
ごめん、ハルミ。
「でさ、あの子のこと誰か知らねぇの?」
トシクニが場を見渡す。こういう空気を変えるのが本当に上手いんだな、こいつは。
「知ってるよ。」
と言うのはアヤ。
「あの子M中でテニスやっててさ、私もテニス部だったから知ってるんだ」
M中だったんだ。それで?
「総体とかで一緒になるから少し話したこともあるけど、何か静かなおとなしい子だよ」
ふんふん、それから?
「モデルみたいに綺麗な子がいるって、男子達が騒いでたみたいだけど」
そんな情報はいらないからさ。
「女の私から見ても綺麗だもんねぇ、あの子。あんた達知らなかったの?」
「知らねぇから聞いてんの! でさ……」
そうそう!知らないから聞いてるんだって。
「ほら、名前何つったっけ?」
ナイスだ! トシクニ。
「名前? イケウチサヨ。確か小さい夜ってかいて『小夜』だったと思うけど」
池内 小夜……
僕の心に『彼女』の名前が刻みこまれた瞬間。
あの日「ヒトメボレ」した女の子の名前を初めて知った。
嬉しくって、嬉しくってさ。少し近づけたような気がして、心が温かくなる。
これが「好き」ってことなんだよね?
そう。僕は君が「好き」。