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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第5章 蜜月、そして
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第50話〜季節はずれの転校生。

新キャラの登場です。

 何だか朝から教室内がざわついている。その原因は、学期途中の中途半端なこの時期に、転校生が入ってくるという噂が流れたからだ。

 予鈴がなり全員が席に着く。そして噂の真相をもたらしてくれるであろう、先生の到着を固唾をのんで待っていた。

 足音が…… 二つ聞こえる。それが徐々に近づいてきて、教室の入り口で止まった。何事かを話す声が聞こえて、教室の扉が開いた。

「おはよう」

「「「おはようございます!」」」

 元気のよい挨拶がモットーのこのクラスは、小学生のように全員が大声で朝の挨拶を交わすことで有名だ。

「今日も元気だなー、よーし」

 元気な挨拶とはうらはらだが、いつも気怠く間延びした感じで返す嶋津先生。しかし今日に限っては、その先生の言葉が耳に入った生徒はいなかった。先生について入ってきた女生徒に目を奪われていたからだ。みんなの注目を一身に浴びた彼女は、はにかんで俯いてしまっている。

「興味津々なのはわかるがなー、そんなに注目するんじゃない。今紹介してやるから、その無遠慮な視線を止めなさい」

 嶋津先生はそう言って、皆を制するように右手を上げた。

 忽ち、教室の緊張が和らぐ。そう、この先生の雰囲気は、いつも「Love & Peace」。この気遣いを学ばなければと、リュウスケはいつも真摯な気持ちにさせられる。


 それにしても……

 どっかで見たことあるコだよなぁ……


俯く女生徒の顔を何となく覚えてはいるが、それが誰なのかどうしても思い出せない焦燥感に駆られるリュウスケ。


 嶋津先生が教壇に立ち、教室を一通り見回すと声をかけた。

「今日は転校生を紹介します」


 いよいよだ。


「彼女の名前は……」

 先生はそこで一旦言葉を切ると、チョークを手に取り、彼女の名前を書き始める。


 橘 真夜


「タチバナ マヤさん、です。学期途中の中途半端な時期での転入となりますが、みんな仲良くするように」

 先生はそう言うと、もう一度教室内を見回した。


 タチバナマヤ…… ?

 ……!


リュウスケはある事実に気が付いたが、自分の推測を確かめるべく、自己紹介を始めようと顔をあげた彼女の顔を見つめた。

「橘マヤ、です。東京から来ました。右も左もわからず戸惑っていますけど、どうか仲良くしてください。よろしくお願いいたします」

 彼女はそう言うと、綺麗なお辞儀をして顔をあげると、ニッコリと微笑んだ。


 名前は間違いないんだけどな。

 こんなに可愛かったっけ……


自分が思い描く人物と目の前の美少女とのギャップが大き過ぎて、リュウスケは少し混乱していた。

 少し放心していたリュウスケに、嶋津先生から声がかかる。

「リュウスケ」

「…… はい!?」

 よそに行っていたリュウスケの返事はおかしなものになって、みんなの失笑を買う。

「お前、また遠くに行ってたろ? まあいい、橘の席はお前の隣の空いた所だ。責任もっていろいろ教えてあげなさい」

 先生はそう言って、ウィンクを一つリュウスケによこした。何とも不可思議な先生の態度に、リュウスケは少し憮然としてしまったが、綺麗な所作で近づいてくる女の子の方に集中することにした。


 やっぱりな。


どうやら自分の推測が誤りでなかったと、リュウスケは確信した。そして……


 「久しぶりね、リュウスケ君」


そう言って微笑む女の子は、紛れもなく彼の『いとこ』だった。

「ここ、いいかな?」

 空いた席を揃えた指先で指し示し、マヤはリュウスケに訊ねる。そのさりげない動作の中にも、育ちの良さが伺える美しさがあった。

 リュウスケが首肯すると、マヤは席に着いて彼に顔を向け微笑む。リュウスケはその笑顔に思わずドギマギしてしまうが、気を取り直すと彼女に声をかけた。

「何も聞いてないから、ビックリしたよ」

「え? そうなんだ…… てっきり知ってることかと思ってた」

「いや、初めて知ったよ。多分アキラも知らない」

「そうなの? じゃあ、誰も知らないってこと?」

「多分。親は朝、何も言ってなかったし」

「ふーん、そうなんだー」

 マヤは何かに感づいたようで、急にその話題に感心がなくなった様子を見せ、別の話を始めた。

「そう言えばさ、さっき先生に『リュウスケ』なんて呼ばれてたけど」

「ああ、それはね、このクラスではお互いをファーストネームで呼び合うことにしてるんだ。仲良くするための掟みたいなもんだね」

「へーぇ、随分お互いが親しくしてるんだね、このクラスは……」

 マヤはそこで言葉を切ると、じっとリュウスケを見つめる。

「少し、妬けちゃうな」

 そう言って少し意地悪な笑みをよこした彼女に、リュウスケは気のきいた答えを返せずにいた。

 「はい、そこー」

 嶋津先生の間延びした声が飛んでくる。

「積もる話もあるだろうが、私語は後からなー」

 空気の読めない行動を指摘され、またしてもみんなの失笑を買ってしまったリュウスケは、マヤ共々赤い顔をして俯いてしまった。

 

 その時サヨは……


 突然現れた美少女と仲睦まじくしている『彼』を、悲しそうに見つめているのだった。


今回も短めのお話ですが……

またもやずいぶんとお時間をいただきまして、新しいキャラクターを登場させることになりました。

ここでちょっとネタばらしをさせていただくと、マヤはリュウスケとサヨにも、アキラとユウコにも波紋を投げかける存在となりそうです。ちょっとややこしいキャラ、として描いて行きたいと思っています。

第5章も次で最終話。ここでマヤのキャラ設定をしっかりとお伝えした上で、第6章に繋げて行きたいと考えております。

引き続きご愛読の程を、よろしくお願いいたします。


それではまた、次話でお会いしましょう!

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