第49話〜ここにある幸せ。
またまた久しぶりでごめんなさい。
それは夕方のいつもの光景。
暮れなずむ街を仲睦まじく歩くカップル達。幸せ全開のオーラを周りに振りまきながら。
誰もが羨むその下校風景は、すっかり南高の風物詩になりつつあった。
バレー部の練習が終わり、二組のカップルが体育館から出てくる。どちらも腕が触れ合う程の至近距離で並んで歩き、さすがにこのタイミングでは指までは搦め合ってはないけれども、手はしっかりと繋ぎ合っている。微笑みを湛えた顔はお互いをしっかりと見つめて。
リュウスケとサヨ、アキラとユウコだ。
深い仲となり愛を確かめ合った今となっては、お互いへの愛しさもいや増すばかりで、一時も離れがたいと寄り添い合っているようにも見えた。
「リュウスケ君、今日も一緒だねっ」
語尾に♡が見えそうなサヨの一言に、リュウスケが甘い答えを返す。
「いつだって、一緒だよ」
ドロドロに融けそうな二人の雰囲気に、もう一組も負けてはいない。
「ユウコさーん、俺たちも?」
「そうだよ? 当たり前じゃない」
そんなやり取りを交わしながら、フフっと小さく笑い合う。
ふと我に返り、お互いをからかい合うのもいつものこと。互いの関係を知っている彼らには、一切の遠慮はない。
「ちょっとサヨ、あんた最近色っぽくなったんじゃない?」
「そ、そんなことないよ?」
「そんなことあるわよ。全体的に女っぽくなった感じねっ。これもリュウスケ君のおかげかな?」
「なっ! ユウコさん、急に話を振らないで!」
「リュウスケ君ったら、照れてるの? カーワイイわねっ」
「お前さ、相変わらずヘタレなのな。やることやっといてさ」
「その言い草、なんかムカつく」
「でもさ男子はみんな言ってるぜ、サヨちゃんカワイイだけじゃなくって色っぽいって。もうたまんねー ってさ」
「あ、アキラ君…… ?」
「人の彼女を、そんな目で見るなー!」
こんなやりとりは当たり前のものになっていて。
そんな下校時のこの時間は、リュウスケにとって、サヨにとって、アキラにとって、ユウコにとって、とても大切なものになっていた。
ここにある幸せ。
今ここで感じる幸せ。
言葉を交わし、お互いを感じ、寄り添っていられることの、何て幸せなことか。4人はそのまっただ中にいる。
今もこれからも、それがずっと続くと信じて。
手を繋ぎ、抱きしめ合い、時にはキスを交わし、身体を繋ぐ。触れ合うことで愛し合える幸せ。
今もこれからも、それがずっと続くと信じて。
ずっと一緒にいよう。
ずっと幸せでいよう。
それを信じて疑わなかった。
ただ彼らは、それに慣れて少し無防備になっていたかもしれない。それがこの幸せな時間に波紋を投げかけることになるとは、この時には気づかなかった。いや気づくはずもなかった。
今回はかなり短めですが…… その後のラブラブっぷりを書いてみました。
ちょっと意味深なエンディングになっているのは、ここで話を展開させようと思っているから。
章タイトルの「そして」の部分は、最初っからHシーンでないことは想定していました。
幸せ全開のカップル達に、少し意地悪な試練を与えてみたいと思っています。
それがどんなものになるのか、次の章の伏線になるようにしたいので、暫く考えてみたいと思います。
またまたお時間をいただきますが、よろしくお願いいたします。