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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第5章 蜜月、そして
46/54

第45話〜湖畔の誓い。

R−15ではないとは思いますが…

大人の愛情表現がありますので、苦手な方はスルーをしてください。

 翌朝。


 空は瑞々しく晴れ渡り、初夏の爽やかな風が吹き抜ける。出発時間を間近に控え、大きな荷物を抱えた生徒達が三々五々集まって来る。


 サヨは集合場所に着くと、真っ先に『彼』の姿を探す。背の高い彼はすぐにわかった。穏やかな笑顔を浮かべて、級友達と談笑している彼。

 サヨは暫く彼の姿を見つめていたが、やがてゆっくりと彼の方に近づいていった。

「おはよう、リュウスケ君」


 間近で聞こえた愛しい人の声。『彼女』の姿を認めると、リュウスケはそれまでとは違う『特別な笑顔』を彼女に向ける。

「おはよう、サヨちゃん」

 そう言ってリュウスケは彼女の手を取り、そして顔を見つめる。



 そうやって見つめ合う二人。その顔には幸せそうな笑顔を浮かべて。



 「おーい、お二人さん……」

 遠慮がちなアキラの声に、二人の世界を抜け出して思わず周りを見渡せば、眉根を寄せたアキラの後には、呆れたような表情を浮かべた仲間達がいた。

 リュウスケは慌ててサヨの手を離すと、一つ咳払いをして居ずまいを正す。サヨは、赤い顔をして下を向いてしまった。

「さあ、バスに乗りましょう!」

 照れ隠しのつもりなのか、わざと大きな声でリュウスケが言えば、仲間達から盛大なツッコミが。

「「「お前が言うな!」」」

 いつまでも見つめ合っている二人に、仲間達は乗り遅れるのではないだろうかと心配してしまったようだ。リュウスケは少し恐縮しつつバスに乗り込み、サヨは下を向いたままそれに続く。リュウスケは窓際に座るようサヨに促し、自分はその隣に座を占める。そう、まるで当然であるかのように。

 そのことには、仲間達に全く異存はないのだが、再び微笑み合う二人の姿に、彼らも再び呆れ顔を浮かべるのだった。

 



 一行は空路にて大阪へ向かい、そこでバスに乗り換えて一路東へ向かう。

 途中、湖畔のサービスエリアでウナギに舌鼓を打ったり、徳川家康ゆかりの城址公園を見学したりしながら、一行は富士五湖地方を目指す。

 

 リュウスケは、アキラとの約束を果たすべく行動している。幼馴染みの二人は、やはり気が合うらしく本当に楽しそうな様子で、行動的な二人に引っ張られて、周りの仲間達も随分盛り上がっているようだ。


 サヨは、寂しい気持ちを押し殺してリュウスケを見ている。ずっと隣にいてくれるのだし、アキラを思うリュウスケの優しさを慮ることは出来るのだけれども、彼を独占したい乙女心は、チラチラと彼の顔を伺う行動に顕われてしまう。


 リュウスケはサヨのその視線に気づいていた。彼女を一番に考えたい気持ちはもちろんある。しかし自分が言い出したことを反故にすることも出来ず、彼女はきっとわかってくれていると信じて、苦しい胸の内を抱えながら旅程を続けていた。




 やがて彼らは、その日の目的地に到着した。そこは、『逆さ富士』で有名な湖の湖畔に佇む宿泊施設。大きなホテルとコテージ風の建物を多数備えた施設だ。彼らは男女別班ごとに分かれて、コテージに宿泊することになっている。

 それぞれの部屋に荷を解き、食事と入浴を済ませると集合がかかった。その夜は、施設側の好意でキャンプファイヤーが催された。班ごとに出し物を披露することになっており、楽器の得意なものはそれをかき鳴らし、マジックやお笑いを披露する者もいて、座は大いに盛り上がった。


 燃え盛る炎の前に、寄り添い座る二人。彼の左手と彼女の右手は、いつものようにしっかりと繋がれている。

 炎に照らされたリュウスケの横顔が魅力的で、サヨは彼の顔から目が離せない。ふとこちらを向いたリュウスケは、あの笑顔。サヨは思わず、自ら指を彼の指に搦めてしまう。


 余興の座も佩け、就寝時間までの自由時間となった。すっかり静かになった湖畔を、二人はゆっくりと歩いている。彼の左手と彼女の右手は『恋人つなぎ』。

 二人は見つけた四阿のベンチに並んで腰掛け、再び手を繋ぎ直すと微笑み合った。

「今日はあんまり構ってあげられなくてゴメン」

「いいの、謝らないで。リュウスケ君の気持ちはわかってるから、ね?」

「ありがとう。きっとそうだと思ってた。でもね、サヨちゃんが寂しい思いしてるんじゃないかと、ずっと気が気じゃなかったよ」

「大丈夫だよ。あんまり心配しないで」

 サヨの言葉にホッとした表情を浮かべるリュウスケ。

 

 「私、信じてるから」

 唐突なサヨの言葉に、驚きを見せるリュウスケ。サヨの次の言葉を待つ。

「大事にするって、リュウスケ君は言ってくれた。その言葉を私は信じる。ずっと私のこと考えてくれてるって、すごくよくわかるもの」

 リュウスケは、体ごとサヨの方に向き直り、サヨの両手を自分の両手で包み込んだ。

「もちろんだよ。どこにいたって、何をしてたって、サヨちゃんのことを考えてない時はないくらいだよ」

「嬉しい……」


 見つめ合い、そっと抱き合う恋人達。そのまま口づけを交わす。そしてその口づけは…… だんだん深いものに変わっていく。

 貪るように求めて来るリュウスケに、サヨは少し戸惑い気味だったのだが、舌で唇をノックされ、求められる幸福感に緊張も解け、薄く開いた口内にリュウスケの舌が入って来る。

 舌を搦め合い唇を求め合う大人のキス。何度も角度を変え、サヨを求めて来るリュウスケに、サヨは息苦しさも感じ始めたが、リュウスケも息が続かなかったのか、名残惜しそうに唇を離した。


 「愛してる」

 真剣な顔で愛の言葉を囁くリュウスケ。サヨは目を見張りそれを聞いている。

「一生君のことを愛していく。ずっと君のそばにいる。誓うよ」

 嬉し涙を浮かべるサヨを、リュウスケはきつく抱き締める。



 そして再び、口づけを交わした。


修学旅行編、お贈りします。


いやー、バカップル書くのって楽しいっすねぇ。学生時代に経験していないのがもったいない!と感じています。

そろそろ次の段階に、と考えてたものですから、ここでリュウスケにやらせてみました(表現がヤラしいですか?)。それでもキス止まりなのが、僕のヘタレなところでしょうか。

アキラのこともあるので、旅行中はこれ以上進むことはないでしょう。多分、いや、どうでしょう…


それではまた、次回の話でお会いしましょう。

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