第44話〜楽しみだね。
前話の続きになります。
帰り道の電車の中……
二人は寄り添うように座り、彼の左手と彼女の右手はいつものようにしっかりと繋がれている。そして柔らかな微笑みを交わし合いながら、楽しそうにお喋りをしている。
その微笑ましい光景は、行き帰りの電車の中にすっかりとけ込んでいて、やっかみの視線などを送る者も少なくなっていた。
二人の話題は明日からの修学旅行のことばかりのようだ。
「楽しみだねっ!」
彼女がそう言って微笑みかければ、
「うん、本当に楽しみ」
と、彼も笑顔を返す。あまりのラブラブっぷりに、これではあらぬ噂を立てられるのも仕方がないと、苦笑いを浮かべる学生達もいた。
そうこうするうちに、電車は彼女の家の最寄り駅に到着し、ゆっくりとホームに滑り込んだ。
「じゃあまた明日ね、サヨちゃん」
「うん、また明日、リュウスケ君」
挨拶を交わして名残惜しそうに見つめ合う二人。最後に彼女は、彼の手をキュッと握って席を立つ。そして大きく手を振りながら電車を降りていった。
出発していく電車の窓の外には、少し寂しそうな笑顔を浮かべた彼女の顔。その姿をずっと見守っている彼。二人の間に少しの切なさを残して電車は走り去り、ホームには見えなくなるまで電車を見送る彼女がいた。
その夜の二人の心情を、それぞれの角度から見てみよう。
○サヨside
最近リュウスケ君と別れるのが辛いなぁ。
今日もずっと電車を見送っちゃったし。別れるのが切なくて仕方がないよ。でも明日からは……
ずっと一緒にいられるんだ。
修学旅行の間だけなんだけどね。班も一緒にしてもらったし、バスだって電車だってずっと隣に座っちゃうんだから。
嬉しいな。
リュウスケ君と初めての旅行。何だかドキドキしちゃう。いっぱい思い出作らなきゃ。
どんな思い出を作るの?
一緒のものを見て、一緒に感動したい。たくさん一緒に遊んで、たくさん笑い合いたいな。そうだ、写真もいっぱい撮らなくっちゃね。
それだけ?
それだけ? って… ううん、わかってるの。ずっと一緒にいられるんだから。それにリュウスケ君も言ってくれたじゃない。「もっと感じたい」って。私もそう思ってるの。
リュウスケ君、私をいっぱい感じて?
私にもあなたを感じさせて?
ずっと手を繋いでて欲しい。腕組んで歩いちゃおうかしら。それはリュウスケ君が困っちゃうかな? 何だか私、少し大胆になってきてるかも。でも… もっと大胆になってもいいかな?
いっぱい抱き締めて。
いっぱいキスして。
そんな二人の思い出をいっぱい作りたいな。いいでしょ? リュウスケ君。
あーあ、早く明日にならないかなぁ。
逢いたいよ、リュウスケ君……
○リュウスケside
最近理性の歯止めが利かない気がする。みんなの前で凄いこと言ったような気がするし、「サヨちゃんを感じたい」なんて、ホントそのままじゃんか。キスまでしちゃったしさ。
何だかサヨちゃん大胆になってきたし、ますます可愛くなってきてるもんなー。どこまで我慢出来るか自信がないよ。
まあ明日からの修学旅行では、ずっと一緒にいられるんだから、ずっと君に触れてることが出来るんだね。
嬉しいな。
ずっと君を感じてたいし、君のぬくもりを僕の中に閉じ込めたいと思ってる。
サヨちゃんは僕のもの
一緒に行く初めての旅行で、それを確かめたいと思ってるんだ。まあ修学旅行だし、他の人もいっぱいいるから難しいかもしれないけど。
それに、アキラにあんなこと言っちゃったからさ、修学旅行なりの楽しみ方をしなきゃね。一緒のもの見て、一緒に笑って、一緒に感動してさ、いっぱい楽しもうね。
ホントにそれだけ?
それだけ? って… わかってるさ。二人っきりの思い出作り、しっかりさせてもらうさ。サヨちゃんも望んでくれてるみたいだしね。
ずっと一緒にいられるんだから。
君とずっと触れ合ってたいよ。繋いだ手を離してあげない。肩を抱いちゃうかもよ。おおっ! 俺って大胆。ちょっと前なら考えられないよ。でもね……
強く抱き締めたい。
いっぱいキスしたい。
そんな二人の思い出を、たくさん作れるようにがんばるからね。
本当に、楽しみだよ。
早く逢いたいね、サヨちゃん。
二日連続の更新です。本当にムラっ気でごめんなさい。
何だか二人とも気持ちが大胆になってきてますねー。修学旅行の高揚感があるとはいえ、もうこのまま最後まで突っ走りそうな勢いですね。電車の中でのバカップルぷりといい、書いてて楽しいです。自分に経験が少ないもので、あまり上手に表現出来てないかもしれないですが。
さあ、次回から修学旅行に出かけます。が、しかしっ!どこに行かそうか全然決めてないのですorz この辺が泥縄作家の本領発揮です(←威張るな)。
まあ僕は42都道府県を制覇(通過も含む)していますし、地理は得意なのでどこでも描写することは出来ると思いますが、あまりリアリティーのないのも僕の主義に反しますので、定番の行き先になるのではないかと思われます。多分関東方面かな。
それではまた、次回の話でお会いしましょう。