第42話〜変えられない真実。
10日ぶりです。ごめんなさい。
ある春の日の昼下がり。
3組のカップルが、日の当たる公園のベンチでお喋りに興じている。
藤川とエリカ。
アキラとユウコ。
そして……
リュウスケとサヨ。
その場所は温かな春の日差しに包まれて、幸せな雰囲気を醸し出していた。
「実際焦ったよな」
そう言って、ニヤリと笑う藤川。
「リュウスケが女の子と裸で抱き合ってんだからな」
「んな!?」
慌てて言葉が詰まるリュウスケ。もちろんそれは、事実に脚色を加えた藤川のからかいの言葉。しかし、サヨの表情が一気に曇る。
「それはホントのことじゃないよね?」
消え入りそうな声でサヨが問いかけると、彼女の今にも泣き出しそうな表情を見た藤川が、慌てて否定する。
「冗談。冗談だって……」
きまり悪そうな顔をする藤川に、みんなの視線が集まる。
「この子の前では、そんな冗談言わないで」
やや強い口調でユウコが言えば、すっかりしょげ返ってしまった藤川の様子に、エリカがいたわりの視線を投げる。そこにアキラの余計な一言。
「まあ、ムッツリだからね、リュウスケは。仕方ないんじゃない?」
コイツはなぜ火に油を注ぐようなことを言う、とリュウスケは内心憤慨するも、サヨ以外の4人は小さく頷いている。ユウコ先輩まで、と彼は少々落胆してサヨの方を見やれば、彼女はますます表情を固くしていた。
それも無理ならぬことだった。サヨはリュウスケと美月がキスした写真を見せられていた。眠らされる前に秀一に見せられた衝撃の姿は、トラウマにも似た形で彼女の記憶に刻まれている。アキラにあれは美月の策略による事故だと説明され、そのことに納得しようと努力しても、彼女の頭の中からは容易に消え去らなかった。
「リュウスケ君……」
サヨの消え入りそうな声は、今度はリュウスケに向けられる。
「本当のことを話して?」
サヨの一言に、リュウスケは息を飲む。
「高島さんと何があったのか教えて?」
彼女の問いかけに、リュウスケは2、3回目を泳がせて狼狽の表情を見せたが、一つ息を吐くと、真っすぐにサヨを見つめた。
「本当に情けなくてイヤな話なんだけど、ちゃんと聞いてくれる?」
サヨは小さく頷く。それを見てリュウスケはゆっくりと話し始めた。
「サヨちゃんが休みだった日の話なんだけど、高島さんが話があるって、僕の席まで来たんだ。二人きりで話したいって言うから、少し考えたんだけど、結局2人で屋上に出てしまった」
サヨは黙ってリュウスケの顔を見つめている。
「そしたら突然抱きつかれて、彼女に告白された」
サヨは潤んだ目をいっぱいに見開いて、驚きと悲しみの表情をしている。周りのみんなも驚いているみたいだ。
「もちろん、即座に断ろうとした。そしたらまたしがみつかれたんだ。どうしようかと考えてたら、キスされてた」
サヨの瞳からは、とうとう涙が溢れ出す。ユウコが彼女の傍らにそっと寄り添い、優しく肩を抱いた。
「それを写真に撮られたってワケだな?」
アキラの問いにリュウスケは頷くと話を続ける。
「保健室でのことだけど……」
リュウスケは言葉を切って、サヨの表情の変化を見守る。涙を流し続ける彼女を前に、発言がためらわれたが、気を取り直して話を続ける。
「サヨちゃんが倒れたって聞かされて、慌てて保健室に行ったら、サヨちゃんじゃなく彼女がいたんだ。つまり最初から騙されてたんだね」
リュウスケは自嘲気味にため息をつく。
「半分裸の彼女と抱き合ってるように見えたのは間違いない。その時僕はパニックだった。録画されてるから、なんて脅されたからね。でもそこに藤川が来てくれて助かった」
得意そうな顔をしている藤川を尻目に話を続ける。
「その時藤川に、サヨちゃんが高島に捕まってるって聞かされて、胸が潰れる思いだった」
リュウスケの想いが溢れ始める。
「サヨちゃんに何かあったら、って思ったら、いても立ってもいられなかった。僕はどうなってもいい、とにかくサヨちゃんを助けなきゃ! って思ったんだ」
その時だった。
サヨがリュウスケに向かって、ふわりと笑顔を浮かべた。
「私、信じてもいいんだよね?」
驚いた顔をしたリュウスケに、サヨは言葉を繋ぐ。
「あの時もうダメ… って思った時に、リュウスケ君、助けて! ってお願いしたの。そしたらリュウスケ君が入り口に立ってたの」
サヨの表情に明るさが戻って来る。
「想いが通じたんだ、って本当に嬉しかった。やっぱりリュウスケ君と私は繋がってるんだ、ってすごく感じた」
サヨはひとつ息を整えて、リュウスケを見つめる。
「リュウスケ君は高島さんが好きになっちゃったんじゃないかって、悲しい気持ちにもなったけど、今のリュウスケ君の話を聞いて、もう信じてもいいんだ、って思ったの」
サヨの想いも溢れ出す。
「私はリュウスケ君がそばにいないとダメなの。ずっと一緒にいてくれるんだよね?」
そう言って見つめるサヨ。力強く頷くリュウスケ。
背中をユウコにそっと押されて、サヨはリュウスケの元に駆け出す。飛び込んできた彼女をリュウスケはしっかりと抱き締めた。
リュウスケの胸で泣きじゃくるサヨ。いつの間にか話の輪に加わっていたハルミとトシクニを含め、彼らの友人達はホッとした思いで2人を見つめている。
「まったく! アンタ達は世話が焼けるわねぇ。」
呆れたようにユウコが言い放つ。
「ホントにすみません……」
リュウスケが小声で謝る人々の顔は、みんな笑顔。
「なんでリュウスケ君は、サヨを悲しませるかなぁ?」
ユウコの言葉に、女性陣は激しく頷いている。それを見たリュウスケは、ある想いに行き着く。
2人だけの想いじゃないんだ
そう、ユウコの、ハルミの、エリカの想いも僕たちには向けられてるんだ、ということに気づく。そして、アキラの、藤川の熱い友情にも支えられているんだと。
絶対に、サヨちゃんを守るんだ
その想いが、リュウスケの言葉を紡ぎ出す。
「サヨちゃん、君だけが好きだよ。ずっと君のそばにいるから。だから、ずっと僕のそばにいて欲しい」
リュウスケの言葉に応えたのは、あの眩しいサヨの笑顔。リュウスケは、サヨに柔らかな微笑みを返した。
柔らかな春の日差しに包まれて……
2人はいつまでも微笑みを交わし合っていた。
第4章、やっと終了です。
前回の更新が終わってから、この話にどう仕舞いをつけようか悩んでいました。どういうシチュで、誰を登場させて、もちろんどう落とすか、大変に悩みました。
結果このような形になり、やや強引さも感じさせるような内容になってはしまいましたが、ええい!もうやってしまえ!と更新させていただきました。
どうやら2人の危機はとりあえず去ったようで、ちょっとらぶらぶな感じで終われたことには満足しております。本当はもっとイチャイチャさせたいと思っているので。
次話より第5章。
作者の願望を再び前面に出して、正統派学園風らぶいちゃや、はたまたR−15的らぶいちゃまでやってしまおうと考えております。
ただ、活報に書いた通りの自転車操業ですので、更新がいつになるかがわかりません。あしからずご了承下さい。