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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第4章 ふたりで
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第40話〜疑問。

 …なぜだ!?


部屋の入り口に仁王立ちする男に、秀一は目を疑う。計画ではここにいるはずのない男。破綻を認めたくない秀一は、ゆっくりと立ち上がるとリュウスケを睨みつけた。

 しかし、リュウスケは怯まない。秀一のそれを上回る視線を彼に投げつければ、きっぱりと告げる。

「サヨちゃんを返してもらおう」

「どうして君はここにいるんだ?秋葉クン」

「そんなことはどうでもいい! 返せって言ってるのが聞こえないのか!?」

「返せって、君に所有する権利でもあるのかな?」

 秀一は小さく笑う。

「彼女はね、自分の意志でここまで来たんだ」

「それは違うよ!」

 サヨが間髪入れず非難の声を上げるが、秀一はそれを目で制し沈黙させる。

「君は自分の意志で来たんだ。そうだね?」

「じゃあ、何で縛りつけられてるんだ?」

「コレも彼女の希望さ。虫も殺さない顔して、こんなプレイがお好みとはね」

 そう言ってサヨを一瞥し、ニヤリと笑う。

「とにかく、彼女はボクに好意を持ってここまでついてきたんだ。それを邪魔する権利は君にはないだろう?」

 それがすべて秀一の嘘だってことはわかっている。しかし、リュウスケにはそれを論破するだけの確証がない。

「とにかく今すぐここから出て行ってくれ。不法侵入で警察に突き出してもいいんだぞ?」

 そう言って、秀一は勝ち誇ったような顔をする。

 リュウスケは歯咬みする思いだった。だがその時背後から、アキラが秀一に声をかけた。

「気は済んだかい? 高島サン」


 またコイツか。


秀一は明らかに嫌悪感を露にして、アキラを睨む。相手はニヤニヤを顔に張り付け、余裕の表情だ。頭の中が見えない分不安要素があるが、今回ばかりは勝算があった。

「何が言いたいんだ?」

「不法侵入ねぇ… お前がやってることの方が、よっぽど法に触れることなんじゃないのか?」

「ボクがやってること? どうしてだ?」

「誘拐に監禁、脅迫、暴行だろ? 強姦未遂も適用されるのか?」

「だから、すべて合意の上だといってるじゃないか」

「合意の上、ねぇ?」

 そう言ってニヤリと笑うアキラの様子を見て、秀一は背中に寒いものが走るが、怯んだ顔は見せられない。

「いくら君たちが、そうじゃないと言い張っても、それをどうやって証明するんだい?」

 そう、手抜かりはない。今回こそ完璧なんだ。


 じゃあ、なんでコイツらはここにいるんだ?


最初の疑問に戻れば、秀一の中に不安が芽生える。それでもシナリオが崩れてしまっていることを、秀一は認めることが出来ない。

 その時だった。

「もう降参しろ、高島」

 冷め切った視線を秀一に向けて、アキラが言った。

「お前の負けだよ、高島。下らねぇ茶番もこれで終わりだ」

 ボクの負けだぁ?何を言ってる!

「だから、何も証拠がないって言ってるだろうが」

 取り乱し始めた秀一に、アキラの口撃は続く。

「あるんだよ、それが。腐るほどな」

「何だって?」

 秀一には信じられないアキラの言い草。コイツはまた、ボクの上を行くというのか?

「ずっとお前を監視してた。お前の家も、オヤジの会社も。それとお前のいとこ、美月つったっけ?そっちにも手が回ってるよ」


 何てことだ…… !


すべてこちらの思い通りに運んでいるはずだった。秀一は怒りで体が震え始める。アキラは嘲笑を浮かべて秀一をさらに追いつめた。

「田舎の水産会社ごときに何が出来ると思ったんだ? 大企業の組織力を舐めてもらっちゃ困るな。」

「橘ってのは、本当なんだな?」

「嘘ついてどうする? だいたい、そんなことも調べもしないで、俺に楯突こうってのが間違いの元だ」


 負けるのか? このボクが?


信じられない思いが、秀一のプライドを崩壊させた。憎しみだけが彼の思いを支配する。

「うわあーーーぁっ!!」

 叫び声を上げて、アキラに突進する秀一。手にはサバイバルナイフが握られていた。誰もが惨劇を覚悟した瞬間……

アキラは巧みに秀一の腕を搦めとると、固いコンクリートの床に叩き付けた。

「バカヤロー、俺は合気道黒帯なんだよ。やっぱり調べが足りないようだ、高島クン」

 アキラは不敵に笑って、押さえつけたままの高島にそう言った。


 


 「リュウスケっ! こんなときに何をボーッとしてるんだ!」

 アキラと高島のやりとりに、すっかり気を取られてしまっていた。呆れる友の顔に我に返ると、サヨの方に顔を向ける。そこには拘束されたままベッドに横たわっている、愛しい人の姿があった。

「早く助けに行け」

 アキラの声でスイッチが入ったかのように、サヨの元にリュウスケは駆け寄る。腕に刻まれたロープの跡は痛々しく、頬に幾重にも残る涙の跡は、リュウスケの心を締め付ける。

「サヨちゃん、ゴメン……」

 何を謝りたいのかはわからなかった。ただ申し訳なさでいっぱいだった。急いで彼女の拘束を解き、そっと背中に手を添え上半身を起こす。そして手を取り、顔を覗き込んだ。


 「リュウスケ君……」

 絞り出すような声だった。瞳には大粒の涙が浮かぶ。次の瞬間……

サヨはリュウスケの胸に飛び込んだ。リュウスケはサヨの体をきつく抱き締め、彼女の嗚咽を聞き続けていた。


アキラ君、スーパーマンです。

リュウスケをヘタレにしてしまったばっかりに、補佐役のアキラが必要以上にすごいヤツになってしまいました。アキラが出て来ると、主人公食われっぱなしです。どうしたもんかと思案中です(笑)

次回、この出来事の解決編です。すべての企み、すべての思いが当事者の口から語られます。いろんな伏線を引いてしまったような気がするので、果たして上手くまとめられるかどうか、大変心配です。(←自業自得)

ではまた次回、お会いしましょう。


9月23日 今後のストーリーの関係上、「三友」→「橘」に変更しました。

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