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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第4章 ふたりで
31/54

第30話〜『記念日』ハジメテノキス。

キスシーンがあります。

 今日は12月24日。

 街にはデコレーションが施され、クリスマスソングが鳴り響く。そんな浮かれた街の光景はいつものことなのに。

 

 今年は違う。


幸せそうな笑顔を湛えて、寄り添うように街を歩いているカップル。

 いつもの年とは違う『特別な日』になりそうな予感が、二人の気持ちを高揚させていた。


 


 クリスマスイブなんて、どうでもいいじゃん? クリスチャンでもあるまいし。

 リュウスケはずっとそう考えていた。

 御馳走とケーキを食べ、プレゼントの貰えた子供の頃は、ずっと楽しみにしていたのだが、思春期を迎え、恋愛に憧れを抱き始めた頃から、このイベントを疎ましく思っていた。


 でも今日は……


 隣に『サヨちゃん』がいるから。


すぐ横を歩く愛しい人に、リュウスケは特別な笑顔を向ける。


 やっぱり、うれしい。

 サヨの心は、その想いで満たされている。

 思えば、このシチュエーションにずっと憧れ続けていたような気がする。大好きな人とクリスマスの街を歩く。私にもそんな日が訪れるのだろうか、と不安に思ったこともあった。

 でも今日は…


 隣に『リュウスケ君』がいるから。


自分だけに向けられている彼の笑顔に、サヨも特別な笑顔を返す。


 どちらからともなく、手を取り合い指を絡め合う。「恋人つなぎ」でしっかりと結び合った、彼の左手と彼女の右手。

 幸せな恋人達の群れに加わって、二人は夕暮れの街を歩いていた。




 二人がやってきた場所は、イルミネーションが美しい公園だ。グループの人達や家族連れでとても賑わっているのだが、ちょっとした片隅には、愛を囁き合っているらしいカップルの姿もある。

 それに気づいたリュウスケは、照れる気持ちを隠すかのように、サヨにおどけた口調で話しかけた。

「ほら、あっちにカボチャの馬車があるよ! 行ってみよう?」

 リュウスケの大きな声に、サヨはちょっと驚いたが、彼のその申し出に、ホッとしたのは確か。すぐ側でイチャイチャしているカップルに、いたたまれなくなっていたから。

 そうでなくても、ロマンチックなこの雰囲気が、二人を意識させるには十分だった。

 

 白、青、緑、黄、赤。

美しく煌めくLEDの光が、夜の帳が降りた公園に幻想的な光景を浮かび上がらせる。

 雪が舞い降りたかのように、白と青の光で彩られた冬枯れの木々。

 カボチャの馬車やサンタのおうちは、暖色系の柔らかい光で可愛らしい。

 ひと際目を引く、巨大な光のツリー。

「すごぉーい!」

 二人で見上げて歓声を上げる。

 同じ目線で同じものを見て、感動を共有出来る幸せ。それを噛み締めながら、リュウスケは光に浮かぶサヨの横顔を見つめ続けた。

 

 サヨはその視線に気づいて、リュウスケを一瞬見て恥ずかしそうに視線を逸らす。そして、はにかむような笑顔を彼に向けて、可愛らしく小首を傾げた。

「何かな?」

 あのかわいい声で、サヨはリュウスケに訊ねた。


 ズキュン……


一瞬にして恋心を打ち抜かれてしまう。

 その仕草、その声、その笑顔。反則だって!

 リュウスケの理性の堤防が決壊した。


 気がつけば、リュウスケは自分の腕の中に、サヨを抱き込んでしまっていた。彼女の髪と背中に手を回してしっかりと抱き締める。

 サヨは、突然のリュウスケの行動に体を固くしたが、温かな彼の体温に気持ちがほぐれ、彼の胸に頭をつけ、彼の体に腕を回した。

 人前で抱き合うなんて、二人には恥じらいに満ちた行為のはずであった。でも、今この瞬間、とても当たり前で自然なことに思える。

 そびえ立つ光の塔の下で、通りすがりの人々の好奇の視線に怯むことなく、二人はしっかりと抱き締め合っていた。


 この幸せがいつまでも続けばいいのに


と願いながら。




 今なら言えるんじゃないかな?


リュウスケがサヨに言いたい言葉。高校生の分際で、その言葉を使うのは間違ってるかもしれないけど。

 でも、この気持ちを伝えるには、その言葉しかあり得ない!


 「愛してる」


 溢れ出す想いが、甘い声に載せてその「言葉」を紡ぎ出す。

「え?」

 サヨは思わず聞き返す。


 「愛してるよ、サヨちゃん」


 想いよ、届け! とばかりに、リュウスケはサヨに告げた。


 刹那、サヨの瞳からは涙が溢れ出す。

 思いがけない愛の言葉に、どうしようもなく嬉しい自分がここにいる。


 嬉しいのに。

 どうして涙が出るの?

 

 サヨの頬を流れる涙を、掬い取るように動くリュウスケの指の動きは、とても優しい。頬に感じる彼の優しさを、もっと感じていたいと思う。

 でも… 彼はきっと困った顔して私を見てるから。


 ちゃんと答えなきゃ。


サヨは意を決してリュウスケを見上げた。



 

 そこにあったのは、意外な顔だった。

 リュウスケはあの「笑顔」でサヨを見つめていた。

 その「笑顔」を見た瞬間、サヨの中にある想いが浮上する。


 大好き。


その想いを、もう押し止めることは不可能だった。

 サヨは少し体を離すと、顎を上げて目を瞑った。


 キスして…… !


 リュウスケの顔がサヨの顔に近づく。

 涙に濡れた長いまつ毛にドキリとするが、リュウスケは彼女の桜色の唇に目を奪われた。


 次の瞬間……


 二つの唇が重なる。


 触れ合うだけの優しいキス。

 それでも二人には、今の気持ちを確かめ合うのに十分の行為だった。


 「愛してる」


 サヨはリュウスケに笑顔で答える。

 そして二人は微笑みを交わし合い、再びきつく抱き締め合った。


アメブロの方には書かせてもらいましたが、ちょっと次の展開に迷っています。

作者の願望がストーリーの中に入り過ぎて、二人が仲良くなり過ぎている気がします。

プロットを練り直して、もう一度じっくりと取り組みたいと思います。


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