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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第3章 好きだから
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第28話〜あたたかい。

 秀一が去り、ホッとした空気に包まれ始めた夕暮れの路地。

 緊張の糸が切れたサヨは、目眩を感じて足下がふらつく。倒れそうになったところで腕が伸びてきて、しっかりとサヨの体を支える。

 「大丈夫?」

 顔を上げると、心配そうに微笑みながら、サヨの顔を見詰めるリュウスケの顔があった。

 

 「心配だったんだから……!」

 サヨは小さく叫んで、リュウスケの体にしがみついた。

「ごめん」

 囁くように言ったリュウスケの顔をもう一度見上げれば、困ったような、申し訳ないような表情がそこにあった。

 その顔を見たサヨは、いたたまれないような気持ちになって、再びリュウスケの胸に顔を寄せる。と同時に得体の知れない感情が込み上げてきて、彼女の瞳からは、大粒の涙が溢れ始めた。


 自分の腕の中で泣きじゃくっているサヨに、リュウスケは愛しさが募る。気がつけば力を込めて彼女を引き寄せ、両腕の中で強く抱き締めていた。

 突然の抱擁に、サヨは驚き息苦しさも感じていたが、それ以上に幸せな思いを噛み締めていた。


 あったかい。


力強く抱き締める手から、触れ合う体から、彼の体温がサヨに伝わる。制服の上からでもわかるその熱を、もっともっと感じていたいとサヨは思う。

 リュウスケもサヨの体温を感じて、恍惚とした思いに駆られる。彼女のこの熱が、今は愛しくてたまらない。リュウスケは、抱き締める手にさらに力を込めた。

 

 すっかり日も落ちて静けさを取り戻した場所で、彼女の涙が止まるまで、二人の抱擁は暫くの間続いた。


 「いつまで抱き合ってんの?」

 呆れたような、でもからかうようなアキラの口調に、二人は我に返った。思わず体を離して顔を見合わせてしまったが、人前で抱き合っていたことに気づいた二人は、顔を真っ赤に染めて、視線を下に向ける。

「見せつけてくれちゃってさ、あーぁ、ごちそうさまっ」

 明らかに面白がっているアキラに、リュウスケはひと睨みを入れるが、彼の今の視線に迫力があろうはずもない。

「でも良かったね、サヨちゃん」

 アキラはニヤニヤを引っ込めて、彼女と自分の親友を労るような表情を浮かべた。

 「ホント、リュウスケ君に何もなくって良かったわ」

 アキラの背後で、ユウコが安堵の表情を浮かべている。彼女は、アキラからの連絡でサヨを探し出し、ここまで連れてきてくれたとリュウスケは聞かされた。


 そう言えば。

「何でお前はここがわかったんだ?」

 リュウスケはアキラに訊ねた。

「いやな、お前の周りにちょっと妙な噂が立っててな、いろいろと調べたら高島に行き着いたんだ」

 アキラは不穏なことを何でもないことのように話す。

「そしたら挙動不審な高島をたまたま見つけてな、後をつけたらここに着いた、ってワケだ。お前が5人に囲まれてるのは少し焦ったけどな」

 ニヤリと口角を上げて、アキラは話を続ける。

「高島クンはお前らを見て何だかイライラしてるみたいだったから、声をかけて差し上げたんだよ、何やってんの? ってな」

 緊迫感のないその話し振りは、いつも場を和らげてくれる。

「最初はヤツもとぼけてたけどな、何もかも知ってると言ったら、誰にモノを言ってる、なんて開き直りやがった」

 不愉快を隠すことなく、吐き捨てるようにアキラは話した。

「リュウスケの『家』のことを持ち出してちょっと脅してやった」

 アキラはそう言って、リュウスケを一瞥する。リュウスケは少し眉尻を上げたが、特段気にする様子もないので、アキラは愉快そうに言葉を続けた。

「アイツの慌てっぷり、ザマぁなかったぜ」

 馬鹿にしきったような口調だった。

 リュウスケはアキラの行動力に改めて驚かされたが、自分に向けられた友情が、とても熱いものだと感じずにはいられなかった。


 「さあ、帰ろうぜ」

 アキラが促す。リュウスケはアキラに向かって頷くと、サヨの手を取った。


 あたたかい……


重なる手と手、そこから伝わる体温を互いに確認しあって、二人は微笑みを交わした。


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