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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第3章 好きだから
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第27話〜カタチの違う想い。

 無事でいて…… !


サヨは胸の潰れる思いを抱えながら、息を切らし走っていた。愛しい彼の危機に、一時も早く彼の元にたどり着きたかったから。


 「リュウスケ君!」

 不安で染められた瞳で彼の姿を確認する。特に怪我もなさそうな様子に、サヨは心から安堵した。

 それと同時に、彼女の瞳からは大粒の涙が溢れ出す。不安から解放され、嬉しさが込み上げてきたからだ。

 驚いた顔でリュウスケはサヨを見詰めている。放心したように立ち尽くし、涙を流し続けるサヨ。

 

 次の瞬間、サヨはリュウスケの体にしがみついた!

 リュウスケは驚きつつも、サヨの髪にそっと手を添えた。

 暫くの間、サヨはリュウスケの腕の中でしゃくりあげていたが、ふと顔を上げてリュウスケを見詰める。

 「本当に良かった……」

 サヨはそう囁くと、あの綺麗な「笑顔」をリュウスケに向けた。

 「大丈夫だよ」

 リュウスケはそう言って、サヨに安心させるようなあの「笑顔」を向ける。

 それを見たサヨは、またリュウスケの胸に顔を寄せた。


 何でそんな顔出来るんだ!?


 秀一はまた憎悪の炎を燃やし始める。自分の側にいるべき『女』が、他の男と微笑み合っているのだ。絶対に許せない!

 秀一は、あらんかぎりの憎しみを込めて、体を寄せ合っている二人を睨みつけた。


 その禍々しい視線にリュウスケとサヨが気づく。リュウスケは、サヨを庇うように自分の腕の中に抱き込んだ。

 その時、サヨが静かに高島に問いかける。ただ、涙に濡れる瞳に強い光を宿して。


 「高島君、どうしてこんなことしたの?」

 サヨの口調はあくまでも静かだが、強い非難の色が込められている。

 高島はそれを意に介することもなく、こともなげに質問に答える。

「気に入らなかったからさ」

「何が?」

 サヨはその答えが納得出来ないとばかりに、語気を強めて秀一に詰め寄る。

 秀一は、理解出来ないと馬鹿にしたように頭を振りながら薄笑いを浮かべて、とうとう自分の欲望を対象の『女』にぶつける。

「君には僕こそがふさわしい! 君もそう思うだろう? 池内君?」

 確信に満ちた秀一の口調。だがサヨはリュウスケの腕から抜けると秀一に真っすぐ向き直り、怒りのこもった目を彼に向けた。


 何? それ。


この人の独りよがりな考えで、リュウスケ君がイヤな思いしたっていうの?

「許せない!」

 凛とした口調でサヨは秀一に言い放つ。

「何がだい?」

 サヨの口ぶりに少し戸惑いを見せた秀一だったが、すぐに薄ら笑いを復活させた。

「君のように聡明で美しい人は、僕の側でこそ輝くんだよ? そんな男の側じゃなくってさ。わかるだろ?」

 それは決定事項だ、と言わんばかりに、秀一は持論を語る。

 肩に置かれたリュウスケの手に力がこもる。それを感じたサヨは、振り返ってリュウスケに微笑みを向ける。リュウスケが笑い返してくれたのを確認して、双眸に強い光を宿して秀一に向き直った。


 「あなたの思い通りにはならないわ」

 サヨは秀一に歩み寄りながら語りかける。

「あなたは自分の思い込みだけで、私の大切な人を傷つけようとしたんだもの」

 落ち着いてはいるが、その声は怒りで震えている。

「あなたは絶対に許せない!」

 そしてサヨは切なる想いを秀一にぶつけた。

「私たちの『幸せ』を邪魔しないで!」


 秀一はおとなしいと思っていたサヨの強硬な態度にたじろいだ。追い込まれてサヨから視線を外せば、小さな人垣が出来ていることに気づいた。このままではさすがにマズいと、秀一は心の中で舌打ちする。

「わかったよ、今日は引くことにするけど」

 秀一は再び薄ら笑いを顔に浮かべて、

「君を絶対諦めないからね……」

 サヨに低く囁きかけた。


 仲間を促し帰途につこうとした秀一は、大股で近寄ってきた男に、いきなり胸ぐらを掴まれた。

 「高島ぁ……」

 その男の瞳には、憤怒の黒い炎が燃え上がっており、秀一は恐怖に身を竦めた。

「彼女に何かあったら、お前をツブす、からな。覚えとけ!」

 信じたくはないが、本物の「力」をリュウスケに感じた秀一は、恐怖心を抱えながら、そそくさとその場を後にした。


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