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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第3章 好きだから
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第26話〜「好き」の正体。

 突然物陰から飛び出してきた人物の顔に、リュウスケははっきりと記憶があった。だがその人物は、ありありと動揺の色を浮かべている。

 彼が発した一言で、荒い息をつきながらへたり込んでしまった5人の男達。その光景と後ろでニヤニヤ顔を浮かべている友人の姿を認めれば、リュウスケはある推論をもって、走り込んできた人物に視線を向けた。


 「高島秀一さん、ですよね?」

 口調は丁寧だが、刺すような冷たく強い視線は、秀一を捉えて離さない。

 リュウスケの視線に秀一は、さらに狼狽の色を深め、言葉も発することが出来ない。


 落ち着け…… !


 自分に暗示をかけることで、秀一はいつもの余裕に満ちた態度を取り戻そうと努める。

 だがリュウスケの確信に満ちた次の一言で、秀一の努力は打ち砕かれることになる。


 「これを仕組んだのは、君だよね?」

 一応相手に尋ねる形になってはいるが、リュウスケの口調は決定事項だ、と言わんばかりだ。

 腰に両手を当てて否定を許さないといったリュウスケの態度に、秀一は妙な敗北感を感じるも、彼を睨みつける視線を送ることで、自分の矜持をかろうじて保った。

 「何でこんなことした?」

 リュウスケは、完全に見下した口調と態度を秀一に向ける。それに反応するかのように、秀一は強い憎悪のこもった視線をリュウスケにぶつけた。


 これだ、間違いない!


前に感じた悪寒は、この視線によってもたらされたことを確信する。


 でも、どうして?


リュウスケはここまで秀一に恨まれる理由がどうしても思い浮かばない。

 背後ですべてを知るかのように、薄ら笑いを浮かべている腹ただしい友人を一瞥して、リュウスケは口調を強めて秀一に詰め寄る。

「何でだ!」


 「気に入らない……」

 秀一が呟く。低いが意志を持った声。

「僕は君が気に入らない!」

 感情をぶつけるかのように秀一は叫んだ。

「どうして僕が気に入らない?」

 リュウスケは当然浮かんだ疑問を投げかける。秀一はニヤリと少し笑って問いかける。

「好きな『女』が自分じゃない男に笑顔を向けるのは、誰だって許せないだろう?」

 秀一の瞳に宿る憎悪の炎がさらに燃え上がる。


 「つまり君は、池内さんが好きだってことでいいのか?」

 先程の男の会話と、秀一の言い分をまとめれば、そういう結論になるだろう。

「まあ、そういうことになるな。」

 当然、といった風に秀一は答える。

「あんなに美しい『女』を可愛がることが出来るなんて、男冥利に尽きると思わないかい?」

 そう言って秀一は悪趣味な笑顔を浮かべたが、すぐに表情を引き締めて、リュウスケを睨みつける。

「彼女は僕にこそふさわしい」

「な?」

 秀一のあまりに独りよがりな言い分にリュウスケは驚く。

「あの『女』は僕の隣でこそ輝くってことは、君にも理解出来るだろう!」

 秀一の言葉と思い込みの強さにリュウスケは少したじろぐが、強い視線は彼に向けたままだ。

「だから許すことが出来ない」

 狂気を孕み始めた目で秀一は言い放つ。

「あいつが笑顔を向けるお前の存在は、絶対に許すことが出来ないんだ!」


 「それは違うな」

 冷静さを欠いた秀一を冷ますかのような静かな口調で、アキラが近づいてきた。

「アンタは確かにサヨちゃんを『好き』なのかもしれない」

 言葉は静かだが、秀一に向ける視線は鋭い。

「だがな、それはアンタの自己チューな思い込みを、アンタが発散させたいだけに過ぎない」

「何だと?」

 気色ばむ秀一を鼻で笑って、アキラは言葉を繋ぐ。

「ふさわしい、なんてどんだけ俺様なんだ? アンタは」

何かを言いかけた秀一を制してアキラは続ける。

「アンタは自分を飾るために、彼女を『好き』になっただけだ。綺麗な女性を側に置いて、それを思うがままにしたい、という欲望のためにな」


 それの何が間違ってる?


 美しい『女』を常に侍らして、性欲の捌け口にするのは男のステイタスだろうが…… !

 それ以外に何があるって言うんだ!

 答えの出ない疑問に困惑しつつも、秀一は目の前の二人の男を睨みつける。


 だが次の瞬間、秀一は驚愕の表情を浮かべた。思いがけない人物が、視界に飛び込んで来たからだ。

 「リュウスケ君!」

 その声は、不安と慈しみに彩られていた。


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