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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第3章 好きだから
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第23話〜好意の果ての狂気。

 彼にとってもヒトメボレだった。

 非の打ち所のない容姿を持った可憐な美少女。彼は一目でクラスメイトに恋をした。

 ただ、自信家で自己中心的な彼の好意は、邪な願望に変換されて彼女に向けられる。

「僕の隣こそが彼女にはふさわしい場所なんだ。絶対僕のものにしてみせる!」と。




 1年7組 高島秀一。

 満点の成績でトップで入学してきた彼は、入学式で新入生代表挨拶を務め、当然の如く、最優秀クラスの学級委員に収まった。

 その明晰な頭脳と整った容姿を兼ね備えている上に、父親は地元で大きな水産会社を経営し、叔父が国会議員を務めるという、財力と権力を恣にする家庭に育った。

 挫折を知らずこれまで暮らしてきた秀一には、邪魔をする者は絶対に許すことが出来ない。ましてや自分が愛でるべき『女』が、他人に笑顔を向けるなんてことは、絶対にあってはならないのだ!


 港に面して建つ豪邸の一室で、秀一は四、五人の男達と密談をこらしている。問題のありそうな人達に彼が囲まれていることで、その内容が手に取るようにわかるというものだ。

 「で?そ のナントカってヤツをちょいと脅して、女を諦めさせればいいんですかい?」

 品の悪いニヤニヤ笑いを浮かべて、秀一に男が確認を取る。

「ああ、そうだ」

 二回同じことを言わせるんじゃない! とイライラしながら、秀一は付け加えた。

「少々手荒なことをしてもかまわない。ただ『女』が一緒だったら、そっちには絶対に手を出すな」

 手に入れた美少女の写真を一瞥して秀一は彼らに言い渡した。

「それは約束出来ませんぜ、坊ちゃん。こんな綺麗な女、指くわえて見てるだけ、って訳にはいかねぇよ?」

 男が気色ばんで答えると、秀一が口角を上げて彼に告げる。

「別にいいんだよ? 僕は。他を当たることも出来るからね? ただ、覚悟はしといてね」

 冷たい一瞥を彼らに落とし、「力」を見せつけるように悠然と微笑んだ。

「わ、わかりましたよ……」

 気圧されるように一人の男が答えると、秀一は満足そうに頷いた。

「成功したら、お前達にも褒美をあげよう……」

 更に黒い微笑みをたたえて秀一は呟く。

「僕が飽きるまで『彼女』を堪能した後でね……」




 今日は一人かぁ……

サヨは体調を悪くして早退してしまったので、仲のいい二人に当てられてはたまらないと、リュウスケはそそくさと帰り支度を始めた。

「お先でーす」

 ひと声かけて歩き始めたリュウスケの周りには、どういう訳か誰もいない。

 秋が進み、ことわざ通り急速に薄暗くなり始めた夕景に、リュウスケはふと寂しくなって、サヨに電話してみようと携帯を取り出した瞬間、異変は起きた。

 突然伸びてきた手に腕を掴まれて、強い力で物陰に引っ張り込まれたのだ!


 そこにいたのは、男が5人。どの顔にも悪意に満ちた嘲笑が貼付けられている。

 「誰だ? お前ら。」

 リュウスケには全く心当たりのない男達だった。

「秋葉さん、ですよねぇ?」


 何故僕のことを知ってるんだ!?


疑問が頭の中を渦巻き、緊張で鼓動が激しくなってきながらも、思考だけは意外にクリアで、彼らの次の発言を待つ余裕がリュウスケにはあった。

「坊ちゃんに頼まれましてねぇ、あんたに『お願い』をしにきたんですよぉ。」

不愉快な笑い顔をこちらに向けながら、粘つく声で男は言った。


 何のことだ? そもそも『坊ちゃん』って誰なんだよ?


聞けば聞く程、疑問が沸き上がって来る。

「坊ちゃんはね、俺の『女』に手を出すな、って言ってたぜ。」


 はあ? ますますワケわかんねぇ!


要領を得ない男の話に少しイライラも募り始めたリュウスケ。

「ちゃんと説明してもらえないかな!」

 彼は決然と言い放った。


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