第22話〜間違った恋心。
「間違ってる、間違ってるよ……」
仲良く並んで校門を出て行く二組の男女を見据えながら、そう呟く男がいる。
「僕の隣にいることが正しいんだよ……」
『その男』は意味ありげに口角を上げた。
「……なぁ? 池内小夜クン?」
……?
リュウスケは誰かの強い視線を感じて立ち止まり、思わず周りを見渡した。
「どうしたの?」
不思議そうにサヨが覗き込んで来る。
「気のせいかな……」
見渡した辺りには、こちらを見ている人はいない。
「リュウスケぇ、また自意識過剰?」
呆れた口調でアキラが声をかける。
リュウスケが人前が苦手で人の視線に人一倍敏感なことを、アキラは百も承知なのだが、その反応が過剰だったと彼は感じたのだ。
「そんなんじゃないって。そんなんじゃないけどさ……」
何となく『悪意』を向けられた感じがして、リュウスケは少し寒気まで覚えたのだ。
「何かちょっとイヤな感じだったからさ」
「大丈夫だよ」
そう言って微笑むサヨ。
「きっと気のせいだから。それとも……」
サヨは人差し指を立てて、リュウスケの顔の前に差し出しながら言った。
「何か恨まれることでもしてるのかなっ? リュウスケ君?」
彼女の可愛らしい仕草に、リュウスケの心は一気に和む。
「わかりましたー 自意識過剰で申し訳ないですねぇ」
リュウスケがそう言って険しい表情を崩せば、二人はフフっと小さく声を出しながら笑い合った。
もう見ていられない、とばかりにアキラがユウコの手を取って歩き出せば、リュウスケとサヨも微笑み合ったまま並んで歩き始めた。
そんな微笑ましい光景に『その男』は憎悪のこもった視線を送り続けていた。その言葉を呪文のように繰り返しながら……
「間違ってる、絶対間違ってるんだ…… !」
その男の名前は、高島秀一。