第1話〜入学式①。
「…おいっ! リュウスケ!」
ハッとして我に返ると僕の顔を見つめる奴いる。
幼なじみの江藤アキラだ。
「あぁ、アキラか」
「アキラか、じゃねえよ。ボーッとしやがって」
「悪いな」
「まあいつものことだけどな」
軽口を叩きながら歩いているのは、いつものこと。いつもの光景。
「彼女」を見つけたついさっきまでは。
「で? 何だぁ? かわいい女子でもいたのか? はっきり何かに見とれてる感じだったぞ」
—こいつやっぱりスルドイな。
「そ、そんなことないって」
「何慌ててんの。図星か? まあいいや。とにかくしっかりして下さいよ、委員長さん」
僕らは高校生になった。
真新しい制服に身を包んだ『同級生』達でごった返す駅の構内。みんな何だか嬉しそうだ。
僕らが入学した南高校の制服は、男子は詰襟の金ボタンなんて至ってシンプル。女子はというと、白い3本ラインのセーラー服に黒のスカーフ。黒いスカーフなんて随分大人っぽい感じだよなぁ。
—そう言えば、あの子の制服、ウチのだった。
間違いない! じゃあ同じ学校なんだよな。
しかも多分同い歳、なんだよな?
ちょっとドキドキしてきたぞ。
「…って、話聞いてる?」
「ちょっと考えごとしてたから」
「ヤラシイことばっかり考えてんじゃの?まあ俺たちぐらいじゃ仕方ないけど」
「そんなんじゃないって!」
まあ女の子のことは考えてたけどさ。
「でさ、お前学級委員に推薦されてるらしいぞ」
「俺もチラッと聞いたけど、入る前から学級委員ってどういうこと?」
「これも噂だけどさ、看護科を外した9クラスは、入試の成績上位の奴が割り振られてるんだってさ。つまりそのクラスで一番頭のいい男子と女子が学級委員ってこと」
「そんなんで決めていいのかなぁ」
「あんなに人数いたら人間性なんか見てるヒマないだろ?それが一番無難なの」
「そんなもんなんかなぁ」
「ってかさ、お前何にも気づかないの? 今の会話で」
「何が?」
「お前ね、入試で少なくとも18番以内ってことだよ。すごいよね」
そっか。噂が本当なら自慢してもいいことなんだよね。まったく実感ないけど。
「はい! 到着〜」
そう言うアキラと一緒に校門をくぐる。
でっかい学校だなぁ…
第一印象はこれ。地元の中学とは全然違う。
入試の時にしっかり見ときゃ良かった。何だか気圧される雰囲気だよ。1学年450人のマンモス校だから仕方ないか。さすがのアキラも緊張してるみたいだ。
「リュウスケ、お前何組?」
「俺は2組。お前は?」
「俺は9組。割れちまったな」
「ああ。残念だけど。でさ、やっぱり俺学級委員みたいだ。◎ついてたから」
「そっか。とにかくがんばれ!」
「ああ。とにかくがんばるよ」
そして僕らは入学式の行われる体育館に向かった。