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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第2章 好きなのに
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第18話〜温かい親友。

 寝れなかったなぁ……


 明くる日の朝、寝不足の頭を傾げながら、リュウスケは昨日の出来事を思い返してみる。

 この寝不足の原因をつくった昨日の電話でのやり取り。夢ではないのか、という不安を振り払うように声に出してみた。

「夢なんかじゃない… よね?」

 その言葉で甦る『彼女』の声。「会いたい」と言ってくれた、甘くかわいい声。


 やっと、「会える」んだね……


鏡の中の顔がほころんだ。


 ベッドサイドに置いたままの携帯が着信を知らせる。通話ボタンを押した途端、大声が届いた。

「お、お前さっ!」

 アキラだ。少し慌ててる様子。何を言われるかは、だいたい分かる気がする。

「お前『彼女』に告ったんだって?」

 え? 「告った」ってのはちょっとニュアンスが違う気が……

「会いたい、って言ったんだろ?」

「言ったけど?」

 それは間違いない。

「向こうも会いたい、って言ってくれたんだって?」

「うん」

 確信を持ってリュウスケは答える。

 少し間が空いて、寂しそうなアキラの声が届いた。

「何で俺に言ってくれないの?」

 コトの内容が内容だけに、からかわれるのもつまらない、と思ってアキラには特に報告してなかった。

「これでも俺さ、お前のこと心配してたんだぞ……」

 そうだった。

 いつでもリュウスケのことを気に掛けて心配してくれるのは、幼馴染みのアキラ。今回も人づてに話を聞いて、やきもきしてくれていたに違いない。

「すまん、ありがとう」

「あんな高嶺の花に惚れてさ、絶対うまくいく訳ないと思ってたからな」

 サラッと失礼なこというな、コイツ。

「でも… 良かったな、うまくいってさ」

 電波の向こうでそう言って笑う、アキラの顔が脳裏に浮かぶ。


 いいヤツだなぁ。


改めて思い直すと、リュウスケは心が温かくなった。

 リュウスケを良く理解し、叱咤し励まし、いつも勇気づけてくれるアキラ。かけがえのない存在であることを思い知らされる。


 「でさ、ユウコさんから伝言」

「何?」

 ふふっ、と含み笑い。これはリュウスケをからかう時のアキラの癖だ。

「待ち合わせは駅でいいか? ってさ」


 そういえば… 場所決めてなかった?


「相変わらず詰めが甘い! どうやって会うつもりだったんだ?」

 リュウスケの額には冷や汗が浮かぶ。

「い、今から電話して…」

「心配ご無用。もうユウコさんと段取りしたからさ」

「え?」

「夕方5時に駅で。ユウコさんになぁ、心配だからアキラ君連れてきて、って言われちゃったぞ」

 アキラのニヤニヤが目に浮かぶようだ。

「申し訳ないです。何から何まで」

 恥ずかしさと申し訳なさで、リュウスケはついつい丁寧な口調になる。

「何だそれ? まあいいや、何かお前らしくて」

 アキラのからかい口調はますます調子づく。

「ユウコさんに、確実にお届けします、って伝えたからな」

「そんな言い方しなくたっていいじゃんか」

 ヘタレな自分をからかわれっぱなしのリュウスケは、少し気色ばんだ。

「まあまあ。でも俺が一緒の方が気は楽だろ?」

 悔しいがそれは間違いない。でも『彼女』は……

「むこうはユウコさんが連れて来るってさ。ダブルデートってヤツ? その方がお互い気楽にいられるだろうから、って」


 みんな、優しいんだなぁ。


友達の温かい思いやりに、思わず目頭が熱くなる。

 リュウスケは感謝の気持ちでいっぱいだった。


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