第15話〜もう迷わない。
信じられない言葉だった。
ユウコが発した「会いたい」の言葉。
「本当ですか?」
と、リュウスケが勢い込んで訊いてしまうのも無理はない。リュウスケは『彼女』を怒らせてしまっていると思い込んでいるし、自分の行動が『彼女』との距離を遠くしていると考えているからだ。
「本当よ」
真剣な眼差しでユウコは答える。
「サヨは今、悲しんでるみたいなの。理由を聞いたら『わからない』からだって」
その意味はリュウスケには何となく理解出来た。
親切にされたかと思うと、冷たい態度を取られる。その人の真意が見えないということなのだろう。羞恥心から来たこととはいえ、教室での言動はやはり大失敗だったと、リュウスケは後悔の念が消えない。
「リュウスケ君さ……」
ユウコが念を押すように、
「サヨのこと、好きなんだよね?」
そのことは、さっきみんなの前でも認めてしまったので、言われてもさほど気にならなくなってきた。
リュウスケは頷く。
「だったらさ、サヨと会ってあげて?」
もちろんそうしたい気持ちは大きいのだが、自信のないリュウスケは、返答に詰まってしまう。
「私はあのコに悲しい思いをして欲しくないの」
ユウコは、瞳に強い意志を宿して言葉をつなぐ。
「お願いだから勇気を出して」
勇気。
それが持てないからこそ、次の一歩が踏み出せないことは、リュウスケにもわかっている。と同時に「引け目」というものを感じてしまっているのも自覚している。
リュウスケは、次の行動に臆病になってしまっているのだ。
「サヨはね、リュウスケ君のことばかり話してるんだよ」
ユウコは優しく微笑む。
「ずっとずっと嬉しそうな顔してさ……」
少し遠くを見るような顔をしたが、すぐにリュウスケに向き直って、
「まっすぐ向き合って欲しい。『彼女』の想いにも、自分の本心にも」
きっぱりとリュウスケに告げた。
もう迷わなくてもいいのかな?
ユウコの言葉は、温かいものでリュウスケの心を満たしていく。
あとは僕の勇気だけ。
強い気持ちでそれを思えば、改めて抑えられない感情が頭をもたげる。
『彼女』に逢いたい。
「ユウコ先輩、池内さんに伝えて下さい」
リュウスケはきっぱりと言った。
「僕もあなたに会いたい、と」