第14話〜余計なお世話。
「で?」
相変わらずニヤニヤした顔でトシクニがリュウスケの顔を覗き込む。
部活が終わりちょっと話をしようと集まったのはトシクニ、藤川、なぜかアキラとユウコもいた。どうやら、いつの間にか仲良くなっていたらしい。
「ハルミを振っちゃったってワケね?」
まあ結局そういうことなんだろう、と思うのでリュウスケは反論しない。
「何て言ったんだ?ハルミに」
少々熱血気味の藤川が、少し怒気を含んだ声で訊いてくる。
「好きな人がいるからって言った」
少し気圧されるようにリュウスケは答える。
「お前さ、それ直球過ぎ」
藤川の言葉に一同があきれたように苦笑する。
「まあでもさ……」
アキラが口を挟む。
「コイツはそっち方面、本当にオクテだからさ、そういう言い方しか出来なかったんだと思うよ、俺は。むっつりスケベだし」
アキラの言葉に一同激しく同意した様子だ。
「いらんことは言わなくていいの!」
コンニャロ! とは思いつつも、リュウスケには自分の気持ちを翻訳してくれるアキラの存在が、今はとても頼もしい。
「犠牲者、二人目かぁ……」
ユウコは心の中で呟く。本当に自覚が無い人って困るのよねぇ…… 小さくため息をついた。
「それで? リュウスケ君はどうするの?」
え? という顔で自分を見据えるリュウスケに、今度は大きくため息をついてユウコは言い放つ。
「サヨはどうするつもりなの?」
アキラ以外が目を丸くして驚く。
「リュウスケが好きなのって、池内だったのか?」
「何ともハードルが高いねぇ」
驚くのも無理はない。今や全校注目の的になっている美少女に、目の前の男が好きだと言ってるんだから。
「俺が誰を好きになろうと勝手だろ? 余計なお世話」
少しムッとしながら、リュウスケは気色ばむ。
「でもやっぱ、成功率低そうだよな?」
「競争率もメチャメチャ高そうだし」
トシクニと藤川が歯に衣着せぬ発言をしているのを聞いて、さもありなん、とリュウスケは弱気になる。
「そうでもないのよねぇ」
したり顔で微笑みながら、ユウコが意外な発言をする。
「リュウスケ君はサヨのお気に入りみたいなの」
心底驚く二人の様子を横目に、リュウスケは俯きながら心の中で喚く。
ここで言っちゃうかなぁ? ユウコ先輩……
確かに、ユウコの前でのサヨの言動には、希望が持てる感じがしないでもないし、それが雨の日の行動の後押しなってるのも間違いない。
でもまだ確証もなく、自分に自信が持てないこの状態では……
まだ知られたくなかった
と思う。
事情を知るユウコとしては、いい方向に持っていくために、後押しする人間を増やしたいという意図はわかるのだが、恋愛に不慣れなリュウスケは、とやかく言われるのが苦痛でしかなく、有難迷惑だとしか思えない。
まだ何かと騒いでいる三人の前で、落ち込んだように俯いているリュウスケに、ユウコが微笑みかける。
「リュウスケ君、あのね……」
ユウコが一番『彼』に言ってあげたかったこと。
「『彼女』がもう一度会いたい、って」
リュウスケの顔が、ゆっくりと上がる。
「『彼』の気持ちが知りたい、って」
今度こそ伝わって欲しいと強い願いを込めて、ユウコはリュウスケの目をまっすぐに見つめながら言った。