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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第2章 好きなのに
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第12話〜ズルい。


 僕は自室で夜空を見上げながら、ため息をついている。その数は、見上げている星の数に迫りそうだと、少し荒んだ気持ちになる。


 疲れた。


 今日一日いろんなことがあり過ぎて、深い疲労感に包まれている。

 突然の『彼女』の来訪。

 うまく話、出来なかったな。多分がっかりしてるよなぁ……

 おそらく『彼女』を怒らせてしまった。取り返しがつかない想いが、僕の頭の中を渦巻く。

 自分の優柔不断さを後になって後悔するのが、僕の悪い癖だ。

 「後悔」の理由がもう一つ。『彼女』を見送った直後の出来事で、大事な友達をずっと傷つけていたことがわかったからだ。


 「リュウスケ君」

 席に戻って声をかけて来たのは、エリカだった。

 席に戻ろうと振り返った時に、僕を見つめる二つの視線には気がついていたんだ。

 悲しそうに見つめるハルミ。

 怒ったように見つめるエリカ。

 何となく気まずくなって、僕は二人から目を逸らしてしまった。

 席に戻るなり、いつになく怒気を含んだ声を投げて来たエリカに、僕は驚いて顔を上げる。

 「あのコ、7組の池内さんでしょ?」

「う、うん。傘を返しに来てくれて…」

「傘を貸してあげるくらい、仲良くしてるんだ? へぇー?」

いつもおとなしいエリカが、今日は妙にからんでくる。

 そもそもこのコはなんで怒ってるんだ?理不尽さを感じて、僕も不機嫌になる。

「濡れながら歩いてたら、傘を貸してあげなくっちゃ、って思うのが普通じゃない?」

 わざとぶっきらぼうに答える。

「優しーいんだねぇ、リュウスケ君は」

 嘲りと怒りが含まれた口調。何が何だかわからないまま、エリカの次の言葉を待つ。

 「でさ……」

 思わせぶりに間を置いて、チラッとハルミに目をやって……

「あのコとリュウスケ君、つきあってるの?」

 俯くハルミの肩が、ピクリと揺れる。

「随分仲良さそうに話してたから」

 畳み掛けてくるエリカ。でもどうしてそんな結論になるのか、僕には訳がわからない。

「そ、そんなワケないじゃん…!」

 お付き合いしてないのは事実。それをムキになって反論している僕が悲しかった。

「でも、好きなんだよね? 『彼女』のこと」


 どうして?


 誰にも話したことなんてないのに。

 その気持ちを気づかれないように、ずっと隠してきたつもりだった。

 エリカはそれに気づいてる。

 もしかして、ハルミも?

 呆然として、反論出来ない僕。

 「リュウスケ君が誰を好きになろうと構わないけどさ……」

 今度は何を言い出すんだ?


 「ズルいよ、リュウスケ君!」

 何だって? そんなことを君に言われる筋合いはないよ?

「ハルミの気持ちは置いてけぼり?」


 …!


 エリカの言いたいことがやっとわかった。

 確かに僕は、ハルミの「気になる」に未だ答えを出せてない。

「ハルミはね、ずっとリュウスケ君を見てるんだよ!」

 今までにない激しい口調でエリカは僕を責める。

「ハルミを待たせたまんま他のコを好きになるなんて、リュウスケ君、最低だよっ!」


 「……もう、いいよ」

 ハルミが囁くように言って、顔を上げる。

 その瞳には大粒の涙が光っていた。

 「ありがとう、エリカ。そんなに想ってくれて本当にありがとう……」

 ふわっと微笑みを浮かべて、ハルミは僕を見つめた。

「私が勝手に想ってただけだから。それをリュウスケに押し付ける気はないよ。だから気にしないで、ね?」

 笑顔のハルミの頬を一筋の涙が伝う。

 僕はその時、ハルミの涙を見つめることしか出来なかったんだ。





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