第9話〜諦め切れない。
『彼女』には好きな人がいるんだ……
今ここで突きつけられた現実に、リュウスケは大きな衝撃を受けた。
気になる男の子。僕じゃない他の「男」。ショックのあまり、リュウスケは呆然としてしまった。
諦めないといけないのかな。
僕が「好き」でも、『彼女』の「好き」は別の方向を向いている。
僕を「好き」になってもらえる自信はない。
今諦めれば、傷は浅くて済むんだろう。
今諦めれば、これ以上つらい思いをすることはないんだろう。
でも……
こんなに好きなのに。
こんなに『君』が好きなのに。
諦め切れない。
ユウコはまだ、リュウスケを見つめている。
なぜか落胆し、悄然としているリュウスケを見て、あることに気が付く。
このコ、自分のことだとわかってないんだ……
私は「好き」になりかけている自分の気持ちを抑えて、『彼女』の気持ちを伝えたつもり。
キューピッドになるつもりだったの。
でも…
『彼』の笑顔が私に向いて欲しいっていう小さな願望が、彼を誤解させる言い方になってしまったみたい。
もしここでちゃんと伝えなかったら……
ユウコの心が揺れる。
あなたは私に「笑顔」をくれる?
あなたは私を見つめてくれる?
あなたは私を「好き」になってくれる?
何をちゃんと伝えるの?
『私』の想い?
『彼女』の想い?
ここで私が諦めたら、あなたの想いは『彼女』のものになってしまう。
でも諦めなきゃ。『彼女』のためにあきらめなきゃ。
良心と願望がユウコの中でせめぎあう。
諦め切れない。この気持ちが消せない。でも絶対後悔するから……
「あのね、リュウスケ君……」
ちゃんと伝えないといけない、『彼女』の想いを。
「『彼女』はリュウスケ君が好きなんだよ?」
諦め切れない『私』の、小さな決心。