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明晰夢1

 夢を見ている時、人はそれが夢であると気づくことができるか否か。

 ちょっと前にそんなことにも触れてるSF映画を観たけど、僕は気づける。

 こういうのを『明晰夢』というらしく、明晰夢を見れる人は結構いるらしい。


 本当だ。

 僕の場合は夢を見ている時、「あ、こりゃ夢だな」といつのまにか自覚できている感じだ。

 明晰夢は自分の意志で改変することも可能だ。

 その明晰夢の内容がエロかったり、なんぞ化け物に追いかけられていたり、今まで読んだり観たりした、漫画や映画の主人公になりきったりしてる場合とか、とにかくどんなものでもだ。


 中学生の時の同級生で、友人のMも明晰夢が見れる。

 Mの場合は僕よりもはるかに明晰夢のコントロールが上手い。

 僕らはよく、昨日どんな夢を見たかで盛り上がっていた。

 ホラー映画にでてくる化け物に追いかけられる夢だの、妖怪魔物を狩りする夢だの、ホグワーツの魔法学校に入学する夢だの、宇宙で戦闘機に乗って戦う夢だの……。

 休憩時間に明晰夢の話をしてる時、それを他の同級生に聞かれると、変な目で見られることも多かった。

 たしかに、端から見たらあまりにも幼稚な話をしているように思えただろう。

 でも、僕らにとって明晰夢はただの“妄想”ではなく、“半現実”といってもいい、ゾクゾクするような体験だ。

 さすがに周囲の目を気にしだしてからは、Mと夢の話をするのは、放課後の帰り道の時とかが多かった。


 明晰夢の話が盛り上がるとたいていは、Mの自慢話がメインになってくる。

「昨日は久々に鮮明で長い夢だったよ。ゾンビの大軍に襲われる夢でさ(笑)学校が舞台で親とかみんなゾンビになってた。お前もゾンビになってたよ。で、追いかけられて屋上まで追いつめられたけど、そこで、俺の意志介入っ」

「どういう風に変えたの?」

「大剣持った戦士になってゾンビ共相手に無双する夢にしたっ。なぜか舞台が山の中になってたけど」

「お前、相変わらず無茶苦茶に内容変えられるよな。僕はそこまでは無理」

「そうか? 何度も練習すれば結構簡単だぜ」


 僕の場合は、夢の中で目覚めた自分(というのも変な話だが)ってのはひどくボンヤリしている。

 だから、Mほど自由自在に夢をコントロールできるわけじゃない。

 しかも自分が夢の内容を変えると、急激にその夢は色褪せていってしまう。

 そして、最後には夢は真っ白になり、目が覚める。


 だがそんな僕と違って、Mは夢をコントロールするのがどんどん上手くなっていった。

 中学を卒業する頃には、寝る前に「今日はこんな夢を見るぞ」とイメージトレーニングをして、その通りの夢を見たりすることも出来るようになっていた。

 さらにすごい思ったのは、教科書や問題集などをパラパラとみて「今日は勉強する夢見るぞ」と暗示をかけて寝ると、夢の中で勉強をする夢を見ることが出来る……というものだ。

 実際に教材の内容を全部記憶しているわけでもないのに、寝る前にパラパラと見ただけの教材が夢の中にちゃんと現れて、それを使って、勉強が出来るとのことだった。

 実際に効果があるらしく、これのおかげで、二年生の頃までは下の中ぐらいだったMの成績は学年トップまで上り詰めていった。

 正直、これは羨ましいと思った。


 そんなわけでMは都内有数の進学校に入学。

 僕は地元の西陽高校に入った。

 卒業式の別れ際に、「たまには会ってまた夢の話でもしようぜ」とMに言われたことはよく覚えている。


(つづく)

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