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E×I  作者: 鉄箱
第三部 運命を穿つ矢
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九章 第二話 亡霊決闘


 深い森の中を、ひたすら進む。

 月光に照らされた森は、仄かに視界を明るくさせていた。


「普通の森、じゃないよね?」

「そうだね。こんな木は、見たことがない」


 千里の言葉に、ナーリャは深々と頷いた。

 鬱蒼と茂る木々は、青白くぼんやりと光を放っている。

 触れてみると背筋が粟立つほどに冷たく、そしてどこか現実味がない。


 まるで木の亡霊に触れているかのような、そんな不可思議な感触だった。


「あんまり触らない方が良いと思うよ?ナーリャ」

「うん……そうだね」


 木から手を離して、ナーリャは頷く。

 触れているだけで体温を奪われていくような感覚に、ナーリャは確かに危機感を覚えていた。もう片方の手から伝わる、柔らかな体温のおかげで気にならなかった……というのは、秘密である。


 そう、ナーリャの右手は、未だ千里の左手と結ばれていたのだ。


 トゥーユヨークに入り、早一時間。

 二人は未だ、手を握り合ったまま森を進んでいた。














E×I














 亡霊のような木々の間を抜けて、川に沿って進み続ける。

 変わらぬ風景ばかりが続くと不安になるものだが、その前にナーリャが光を見つけた。


「千里、あれ」

「うん?光……って、あれ、まさか」


 ナーリャに指された方向を見て、そして顔を青くする。

 十メートルほど先の空間、木々の向こうで淡く輝く光。

 その青白い灯火は、どう見ても……“人魂”であった。


「行ってみよう、千里」

「ままま、待って!あれお化けだよ、絶対!」


 千里は必死でナーリャを止めようとするが、終わりのない状況に終止符を打ちたいナーリャは止まらない。本気で手を振れば解放されるのだろうが、千里はそれができなかった。


 ナーリャの右手、その体温。

 優しく包まれているだけで、身体から力が抜けてしまうのだ。


「と、確かに危険かも知れないね」

――どん

「あぅっ」


 千里の声に冷静になったナーリャが、咄嗟に足を止めた。

 まさか本当に止まるとは思っていなかった千里は、バランスを崩してナーリャの腕に抱きつく。まるで、腕を組む恋人同士のような形だ。


「ここ、これは、その」

「え?」

「なんでも、ないです」


 だが、それに慌てているのは千里だけだった。

 ナーリャの平坦な反応にそう気がつかされた千里は、一人赤面して俯く。

 ……ナーリャも、抱きつかれて同じように赤面していることには、気がつかずに。


「なんだろう……墓、かな?」


 ナーリャは大きな木の陰に隠れて、人魂が浮かぶ方を覗き見る。

 そこに広がるのは、西洋風の墓と石造りの家が建ち並ぶ奇妙な“集落”であった。


「ほんとだ。お墓に家かぁ」


 ナーリャの後ろから、千里も顔を出す。

 幾つも浮かぶ人魂と、霧のような身体を持つ住人達。

 何とも不気味な光景に、千里はぶるりと肩を震わせた。

 ホラー映画や怪談話は、苦手なのだ。


「見渡す限り“これ”なら、適当なところで言葉が通じそうな人を捕まえないと」

「そ、そうだね……声かけなきゃ、ダメだよね」


 その光景が延々と続くというのなら、どこかで妥協する必要がある。

 ナーリャは千里が小動物のように小さく震えているのを見て、なるべく外見が自分たちに近い存在を探そうと、眼を細めて周囲を見回した。


「うーん……誰も彼も、幽霊みたいな住人ばかりだね」


 ナーリャの呟きに、千里は恐る恐る頷いた。

 死霊や怨霊たちに向かっていった時は、戦闘のためのスイッチでも入っていたのか。

 ノーズファンで不気味な幽霊たちに向かっていたとは思えないほどに、千里は身を縮こまらせていた。


「とにかく、動き出さないと何時まで経っても――」

『――そこで何をしている』

「!?」


 背後から聞こえてきた、低い声。

 それにナーリャと千里は驚き、思わず木の陰から飛び出した。

 そう……墓と人魂が混在する、亡霊達の“集落”へと。


『ニンゲンだ』『また、来たのか』『厄介な』『そうやってアイツらは』『まただ!』


 周囲から囁かれる声は、とてもじゃないが友好的なものには思えなかった。

 集まる視線には威圧感とともに恨み辛みが含まれていて、敵意に満ちている。

 まるで、“人間”という種族に対して、並々ならぬ遺恨を抱いているかのように。


「歓迎はされていない、みたいだね」

「うん……そう、みたい」


 その理不尽ともとれる怨嗟の視線に、千里は意識を切り替える。

 いつものように、あらゆる状況を切り抜けてきた、強い意志を宿す瞳。

 まだ攻撃はされていないため煌億剣を抜きこそしないが、千里の右手は柄頭に添えられていた。


 そして自分たちに声をかけた影にゆっくりと視線を向け――ぴたりと、動きを止める。


 漆黒の毛並みを持つ大きな馬は、馬用であろう鈍色の鎧に包まれている。

 その馬に跨る人物も同様に鈍色のフルプレートアーマーに包まれていて、背には槍を背負い、腰には両刃の西洋剣を提げていた。


 そこまでは、いい。

 だが気になるのは、鎧の人物と馬の――首から、上だ。


『さて、人間。トゥーユヨークに足を踏み入れて、ただで済むと思うな』


 どこから発せられているのか、解らない声。

 それもそのはずだ。なにせ、馬も人も“首が無い”のだから。

 鎧の中は空洞、という訳でもなく、中身が詰まっていることが解る。

 高さ的に人の方は伺えないが、馬の首は“断面図”が見えるのだから。


「く、首無し騎士?!」


 先程まで気概はどこへやら。

 千里は青ざめた顔で後ずさった。

 そんな千里を、一歩前に出たナーリャが背に庇う。


「僕たちは、精霊の王に用があり参りました。

 決して、あなた方に危害を加えるのはもちろん、敵対するつもりは――」

『――やはりそうか!

 貴様達も我らが王に牙を剥き、下賤な欲望から悪徳を成す者達かッ!!』


 ナーリャの言葉を遮り、首無し騎士がそう声を荒げる。

 その怨念の込められた声に、ナーリャは苦々しげな表情を浮かべていた。

 こんなに激昂されては、話しにならない。


「待ってください、僕たちはそんなつもりじゃないんです!」

『ならばいいだろう!

 亡霊集落“ウルートガルズ”の番人として、吾輩が汝に決闘を申し込む!』


 ナーリャの言葉に耳を傾けることなく、首無し騎士はそう宣言した。

 途端に、周囲の亡霊達が円を作り場を整えていく。


「け、決闘ってそんな!もう少し話しを聞いてくれても良いのにっ」

「ダメだ。僕たちが今何を言っても、たぶん彼らは納得しない」


 噛み合わないまま進む状況に、千里は恐怖心も忘れて声を上げる。

 いつの間にか決闘を強いられていたのだから、たまらない。


『勝負は一対一!

 古より伝わりし亡霊族の決闘方――“亡霊決闘”にて勝負を決めようぞッ!』


 首無し騎士の声に、周囲から声が上がる。

 そのどれもが暗い感情と歪な歓喜に包まれていて、ナーリャは小さく額を抑えた。











――†――











 トゥーユヨークの中心を流れる川、ヴィルウィ。

 それを挟んで左側に存在する亡霊達の集落が、ウルートガルズだ。

 ウルートガルズには、古くから諍いごとを解決するための決闘方があった。


 それが、“亡霊決闘”である。


 斬っても突いても中々死なない亡霊達は、怪我や負傷で動けなくなるなど稀だ。

 だからこそ不毛な戦いを延々と続けられる前に、勝敗の線引きをする必要があった。

 それが、亡霊決闘の成り立ちである。


「ナーリャ、いいの?」

「うん、こうでもしないと、こっちに耳を傾けてくれそうにないからね」


 耳、ないけど。

 そう続けるナーリャのげんなりとした表情に、千里は顔を引きつらせる。

 あれよあれよという間に整えられた舞台に、ナーリャは若干の徒労を覚えていた。


『慣わしに従い、先に武器を落とした方の負けとする!

 相対者が例え万全だったとしても、五体が泣き別れていようともッ!』


 そう、例え自分が傷一つ無くとも武器を落とせば敗北であり、例え手足が落ちようと武器さえ握っていれば敗北にはなり得ないのだ。


「武器はどうするの?全部持ってく?」

「そうだね」


 千里に答えて、ナーリャはいつものように複数の武器を持つ。

 槍と弓と、矢筒と短剣。嵩張りはするのだが、それらを背負う様子は熟れている。


「さて、僕の準備は良いよ」


 淡く輝く円。

 水晶のようなチョークで引かれた線は、決闘の場を作っていた。

 半径十五メートルほどで、その線の中にどちらかに部外者が入ることはできない。

 どちらかが武器を落とすまで、出られもしないのだ。


「二つ落とせばいいのかな?」

『そうだ。落とす武器は、両者の最低数に依存する』


 純粋に多くの武器を持つ方が有利では、駄目なのだ。

 だから、より少ない方の数に依存して勝敗を決める。


『吾輩の名は“バルバロイ”!

 トゥーユヨークが亡霊集落“ウルートガルズ”の番人であるッ!!』


 馬から降りた首無し騎士――バルバロイは、名乗り上げて剣と槍を構える。

 槍は後ろに引き、剣はナーリャに突きつける、騎士の構えだ。


「旅の狩人、ナーリャ=ロウアンス」


 バルバロイの仰々しい名乗りに対して、ナーリャの名乗りは実にシンプルだ。

 どこまでいっても、ナーリャは“一狩人”に過ぎない。

 そのことを思い出すことができて、ナーリャはこっそり息を吐いていた。

 ここのところ、“神託を受けし騎士”みたいな扱いばかりだったのだから。


『このコインが落ちた時、戦いの始まりだ』


 弓を構えるナーリャ。

 コインを弾くバルバロイ。

 その姿を、千里は固唾を呑んで見守っていた。


 そして――――コインが、落ちる。


『オオォォッ!!』

「先見三手――」


 バルバロイは、ナーリャに矢を撃たせるつもりはなかった。

 自身の背後には同胞達が壁を作っている。

 そこへ通常の獣を相手にするものではないのだろう、巨大な弓から放たれる矢を放たれたらどうなるか。背後には、大量の人質がいるようなものであった。


『同胞達を、盾にはさせん!』

「要らない心配だと思うよ……一射たりとも、外しはしない」

『なにッ?!』


 ナーリャは弓を構えたまま、斜め前に飛ぶ。

 右手に剣を構えたバルバロイの背に、回り込むように。


『ぬぅ、小癪な!』

「――二拍時雨」


 一息三射の二連続。

 六本の矢が上空に向かって連続で放たれるそれを、バルバロイは背中越しに見ていた。

 彼のような亡霊は、目でものを見ている訳ではない。視界は常に三百六十度に展開されているのだ。もっとも、意識を向けなければはっきりと認識することができないというのは、人間とさほど変わりないのだが。


『上かッ』

「先見二手、一射必中!」


 上空へ意識を向けたバルバロイに、ナーリャは矢を放つ。

 その軌道は、バルバロイの足下……できるだけギャラリーへ配慮した結果であった。


 六本の矢が、風を切って落下する。

 それをバルバロイは、頭上で槍を回すことにより、叩き落としてみせた。


『オォォォッ!!』


 片手ではあるが、槍はプロペラを回すように回転している。

 亡霊である彼は、手首を三百六十度回転させることなど造作ないことだった。

 中身が詰まっているように見えても、やはり彼もまた精神生命体なのだ。


 けれどその落下地点、落ちるタイミングの全てが“三手先”を想定したもの。

 落下してきた最後の矢を叩き落としたタイミングでは、足下の矢を振り払えない。


『吾輩をッ……嘗めるなよ人間ッ!!』


 バルバロイは、右手で持った剣で足下の矢を防ぐ。

 亡霊流の剣術なのか、手首の可動範囲は人間のそれではない。

 より効率よい方向へ動く身体は、バルバロイに常識を越えた動きを可能とさせていた。


――ズドンッ!

『グヌゥッ?!』


 だがナーリャとて、足払いを目的に先見を用いた訳ではない。

 対大型魔獣を想定させた弓を大きく引き絞り、矢を放ったのだ。

 ガランのような大型な体躯の人間を軽く吹き飛ばす矢は、バルバロイの剣を弾いてみせた。


「“闇を穿つ大弩|≪ウルド=ガル=バリスタ≫”」


 ナーリャの声と鋭い視線が、バルバロイを射抜く。

 普段の優しげな表情からは想像もつかない、鋭利な視線。

 その引き締まった横顔に、千里はそっと胸を押さえた。


「い、今更なに照れてるんだろう」


 そんな場合ではない。

 解りきっているのに、ナーリャの横顔から目を逸らすことができない。

 そうしてぼんやりと見ていた千里は、バルバロイの動きに気がついた。


「ナーリャ、危ないっ!」

「ッ?!」


 亡霊は、必ずしも“立って歩いて”いる訳ではない。

 剣を落として膝を着いたバルバロイは、その体勢のまま滑るように移動してきたのだ。

 僅かに浮遊し滑走する、亡霊ならではの移動法だった。


「くっ」

『遅いッ!』


 千里の声で咄嗟に後ろへ飛ぶも、下から掬い上げるように放たれた槍の一撃に、ナーリャは弓を落とす。

 ナーリャの弓もバルバロイの剣も決闘場の外へ弾かれ、二人は槍を構えて対峙することになった。


『得意の弓は無いようだが、続けるのか?』

「得意の二刀流は使えないみたいだけど、続けるのかい?」


 互いに軽口をたたき合い、円を描くように立ち位置を調整していく。

 周囲の亡霊も、千里も、その緊迫した空気に息を呑んだ。


『殺せ』『憎い』『人間たちめ』『また荒らしに来たんだ』『平穏を返せ!』『潰せ!』


 終わりなき怨嗟の声を、千里は睨み付ける。

 自分以外の人間達が、ここの人たちに“なにか”をしたのだろう。

 だからといってここまで憎む気持ちが、千里には解らなかった。


「だって、おかしいよ。誰かが憎いから、種族もひっくるめてみんな憎いなんて」


 宗教的な対立で、人種を一方的に嫌う。

 故郷の中で国境を越えれば、そんなことは少なからずあるだろう。

 けれど千里は、それを“知識”としては解っていても、感情という面では納得できずにいた。彼女の国は、そういった感覚が特別薄いのだ。


『平穏を荒らす略奪者よ!貴様達の悪徳はここで潰えると知れッ!』

「僕たちには、貴方たちの平穏を脅かすような意志はない!」

『戯れ言を!そうやって貴様達はいつも、“王”の心を傷つけるのだ!』


 バルバロイから放たれる声には、抑えきれない憤怒の感情が込められていた。

 心を抉るような叫び、理不尽な感情、胸を締め付ける憤怨の音。

 周囲からそんな声が響いていたら、まともに集中なんかできない。


 千里はそう、耳を塞ぎたくなる気持ちを、唇を噛んで抑え込んだ。

 戦っているのは自分ではない。だから、ここで逃げてはならないのだ。


「――大丈夫だよ、千里。僕がいるから」


 そんな千里の様子に、ナーリャは気がついてみせた。

 千里に背を向けているはずなのに、千里の感情に答えてみせた。

 一番辛いのは、矢面に立たされているナーリャなハズなのに。


「ごめんね、ナーリャ。心配かけちゃったね」


 千里はそう呟くと、敵意の渦の中で胸を張ってみせる。

 今できるのは、ただナーリャに心配をかけないことだけだ。


「頑張って!ナーリャっ!!」


 強い意志の込められた、声援。

 それを受けて、ナーリャは頬を緩ませる。

 何よりも胸に響く後押しを受けて、ナーリャは不敵に笑ってみせた。


『余裕のつもりかッ!』


 槍を構えて、バルバロイは突進する。

 超低空飛行の滑走によって近づくその踏み込みに、隙は無い。


「【聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな】」


 唄うように紡がれる、声。

 その声に応じるように、ナーリャの槍が淡く輝き出す。

 青白い光に満ちたその槍に宿るのは、異界より継承されし“信仰”の力。


「【憎悪に満ちし魂に、主の導きと救いあれ】」


 突き放たれた槍を、ギリギリまで引きつける。

 左目に突き刺さろうとする槍の軌道を、瞬き一つせずにナーリャは見極める。

 そして右側にずれながら前に踏み込み、槍の半ばで、バルバロイの槍の穂先を押して逸らした。


「【Amen】」

――ドンッ!

『ぐおぉッ?!』


 ナーリャは器用に槍を回転させると、柄頭でバルバロイの胸を突く。

 異界より伝わりし聖なる力――浄化に特化された魔力は、バルバロイから力を奪ってみせた。


『く……ぬぅ』


 槍を落し、バルバロイは膝を着く。

 立ち上がる気力もないのか、そのまま身動きがとれないようだ。


『サー・バルバロイが』『ならどうする?』『決まっている。次は俺が』『逃がさない』


 だが、それで亡霊達は止まろうとは、してくれなかった。

 周囲の亡霊達がはやし立てて、更に決闘を持続させようとする。

 それでは何時まで経っても、終わらない。

 それこそ、島の住人全てを打ち倒すまで。


「ま、待ってよ!ナーリャが勝ったんだから終わりじゃないの!?」

『これで終わり?』『許せるものか』『終わらせはせん』『王は我らが』『護るのだ』

「なんで……こんな」


 渦巻く敵意に、ナーリャも焦りを覚える。

 集まりだした亡霊達。その全てを相手にすることは、できない。

 きっとどこかで折れてしまい、そうなったら人間に恨みを持っているのであろうここの住人達に、なにをされるか解ったものでは無いのだ。


『卑怯卑劣と言うたけば言え』

「バルバロイ……」

『それでも吾輩は、我々は、意志を貫かねばならんのだッ』


 膝を着いたまま、バルバロイはそう告げる。

 敵意で満たされた彼らに、人間であるナーリャ達の声は届かない。

 そう――ナーリャ達の声、は。


『――そこまでだ』


 低い声、だがバルバロイの声よりも重い声だ。

 その“聞き覚えのある”声に、ナーリャは目を瞠る。

 亡霊達の作った壁。それを分けて歩み寄る、“漆黒”の鎧。


『その者達に、敵意を抱く必要はない』

「トラ、スト……?」


 ナーリャが闘技大会の準決勝で刃を交じらせた、幽族の騎士。

 黒い霧を身体に宿す戦士が、毅然と佇んでいた。


『久しいな、ナーリャ=ロウアンス』


 亡霊とバルバロイ。

 複数の困惑の視線の中心で、トラストは気軽に声をかける。

 刃を交じらせて戦えば、両者の気持ちは自然と解るもの。


 それを体現できる戦士の一人が、ナーリャの前に再び現れたのだ。


 呆然とする住人達。

 彼らに気を取られる暇もなく、ここに奇妙な再開が成立するのであった。


ご意見ご感想のほど、お待ちしております。


ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

次話もどうぞ、よろしくお願いします。


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