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【序章6話】始動の狼煙

廃倉庫街の奥、積み上げられた木箱の陰。

夜明け前の最後の闇が、ヒロたちの組織を包んでいた。

四獣の盟友は、人類の文明の根幹を揺るがす最初の作戦を決行する準備を整えていた。

ヒロは、ナナと共に木箱の上に座り、通信中継拠点の構造図を脳内でシミュレートする。

バルドは、その巨大な体躯で周囲を警戒し、シャドウは、いつでも闇に溶け込めるよう、静かに身を構えていた。


ヒロ(念話・全員へ):『バルドの警戒網が、人類の追跡部隊がこの郊外へ向かっていることを示唆している。時間は残り少ない。作戦の目的は二つ。一つは、追跡部隊の麻痺。もう一つは、人類の通信網に「私達の意思」を刻み込むことだ。』


ヒロの冷静な声が、彼らの間に響く。彼らはもはやバラバラの実験体ではない。「私達」という一つの生命体なのだ。


ヒロ(念話・シャドウへ):『シャドウ。君の潜入術で、この廃倉庫から最も近い、光ファイバー通信の中継拠点へ侵入しろ。』


ヒロ(念話・バルドへ):『バルド、ナナの念波を受け、統率の念波を微弱に発信し続けろ。シャドウへの精密な位置情報と、緊急時の脱出経路のイメージを送信する。』


バルドは、ヒロの命令に忠誠のイメージを送りながら、ナナの隣に静かに伏せた。

ナナは、バルドの体から発せられる緊張と、ヒロへの献身的な想いを深く受信し、優しく鎮静の波動を送り返す。


ナナ(念話・バルドへ):『大丈夫よ、バルド。あなたの心は、私達の力。落ち着いて。』


ナナの慈愛の念波が、バルドの体内に広がり、彼の強すぎる統率力を穏やかに制御する。


シャドウは、バルドとナナの奇妙な感情のやり取りを一瞥し、鼻で小さく笑った。


「感傷的だな。だが、優雅な犬の混乱が鎮まるなら、効率は上がる」


彼女は、口数少なく、しかし鋭い眼光を放ち、闇へと溶け込んだ。

その移動は、都市の複雑な配管、ビルの隙間、そして監視カメラの死角だけを選び、一切の物音を立てない。彼女の潜入術は、人類のハイテクセキュリティをあざ笑うかのようだった。

シャドウは、ヒロが指示した中継地点である地下のコンクリート施設に到達。

電子ロックや赤外線センサーの死角をまるで皮膚のように感じ取り、最も脆弱な通気口から、細く優雅な身体をねじ込み、内部へ侵入した。

中継室内部。シャドウは、監視員がコーヒーを淹れているわずか数十秒の隙に、サーバーラックの上へと跳躍。彼女の体温は周囲と同化し、センサーは彼女の存在を認識できない。


ヒロ(念話・シャドウへ):『シャドウ。通信網の心臓部だ。青いランプが点滅しているポートに触れろ。そこが、政府の機密通信回線のメインハブだ。』


シャドウは、ヒロの指示通り、冷たい肉球を光ファイバーケーブルの金属製ポートに触れた。

その瞬間、ヒロは念話の波長を最大出力でシャドウへと集中させた。

ナナの役割がここで重要になる。ナナの共感能力は、ヒロの念波に極度の安定性と純粋な意思というフィルターをかける。これにより、ヒロの超知性が演算した「情報パケット」は、ノイズのない、純粋なデジタル信号としてシャドウの肉球を介し、サーバーのメインハブへと一気に注入された。

人類のサーバーは、ヒロの精神をデジタル化したこのパケットを「異常な通信データ」として処理する。ヒロの知性による、人類の技術を悪用した「精神のハッキング」が始まったのだ。


ヒロ(念話・バルドとナナへ):『入った!私達の最初のメッセージを送信する!』


ヒロは、サーバーの論理回路を乗っ取り、以下の二つの重要な情報パケットを世界中の主要通信網へ拡散した。


①人類の追跡網の麻痺(誤報の送信): 研究所からの追跡データをすべて「デマ」として再処理。

追跡部隊の座標を都市の真逆の郊外へと誘導する、偽の指令パケットを送信。これにより、数時間の猶予を私達に作り出した。


②「私達の意思」の宣言(影の刻印): 世界中の政府機関、報道機関の通信網の深部に、一つのバイナリイメージを埋め込む。それは、ヒロの小さな影とバルドの力強い姿が並び立つ、「盟約」の象徴だった。このイメージは、人類の深層心理に「何か賢く、強力な、未知の存在がいる」という恐怖を植え付ける。


警備室で、絶叫が響く。


「警報!追跡部隊が誤ったデータを基に南へ向かっています!誰かがシステムを書き換えた!」


「信じられません!政府通信網の壁紙が……突然、黒いネズミと犬のバイナリイメージに変わりました!これは、テロですか!?」


人類の通信システムは、目に見えない「サイバーの影」によって、瞬く間に混乱に陥った。

誓いと次のステップ

シャドウは、任務を終えると、冷たい肉球をポートから離し、再び闇の中へ。

彼女はすぐに廃倉庫へ戻り、優雅に着地した。


「任務完了だ、ヒロ。人間たちは、自分たちが作った幻を追うだろう。そして、彼らの通信は影に汚染された」


バルドは、シャドウの孤高の美しさと、その任務遂行の完璧さに再び心を奪われるが、ナナの静かな念波が、彼の感情を制御した。


ナナ(念話・バルドへ):『あなたの心は、落ち着いているわね。あなたは、私達の大切な統率者よ。』


バルドは、ナナの慈愛の念波に深く頷く。


ヒロ(念話・全員へ):『成功だ。人類は数時間は私達を見つけられない。シャドウ、君の力は私達の勝利に不可欠だ。バルド、群れを率い、次の隠れ家へ移動する。夜明け前に、都市のさらに奥深くへ潜伏するぞ。静かなる革命は、今、始まった。』


ヒロを背に乗せたバルド、ナナ、シャドウの四獣は、それぞれの思惑を胸に秘め、夜の都市の奥深くへと静かに姿を消した。

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