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観測者のいない僕

作者:宵町文
最新エピソード掲載日:2025/10/13
デビューを目前に挫折し、外界の「観測」から逃れるため四年間を密室で過ごした「僕」は、自らの人生を元にした小説『誰も知らない部屋』を書き上げる。

しかしある日、僕と瓜二つの容姿を持つ天才作家・遠野梓が、同名の小説で芥川賞候補になったことを知る。梓の小説の内容は、僕の最も個人的な記憶や行動と完全に一致していた。梓は、僕が密室で行うすべての行動を「観測」し、創作のインスピレーションとして利用していたのだ。

僕はPCの日付が外界から一週間遅れていること、そして外の世界が異常に進化していることに気づき、時間と現実のズレを認識する。自分の存在が梓に「剽窃」され、虚像と化す危機に直面した僕は、観測される側から観測する側へと転じ、梓のサイン会へ向かう。

梓との対峙は、僕の叫びを「狂人の妄想」として処理し、僕の存在証明であるノートに触れることで、それを自身の創作の証拠へとねじ曲げる。社会から完全に排除された僕は、自分の狂気と存在を国家権力に「観測」させることを選び、警察へ通報する。

これは、自分の人生が虚構と化した男が、存在証明を求めて「観測の檻」へと自ら飛び込む、サイコロジカル・サスペンスである。
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