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素敵

私は、ずっと素敵だと言われ続けた

いい意味の言葉

でも、私にとっては、プレッシャーになる言葉


お母さんは、私を人形のように育てる

洋服もお母さんが決める

自由に食べさせてくれない

外に出る時は、必ず日傘を渡される


海やプールも行ったことない

席は、教室の前の廊下側にさせられる

バレエ教室になんて通いたくない


小さい頃、バレエ教室を辞めたいと言った

その時の、お母さんの顔が怖かった

だから、今も通っている

嫌だけど嫌って言えない


私が、否定したりするとお母さんが怒る

怒ったお母さんは怖い


幼稚園の頃は、これが普通だと思っていた

この時は、まだ優しかった

周りの人からもいいお母さんだねって言われてた

この頃の私にとっては、自慢のお母さんだった


でも、小学4年になってから変わった

それより、前から変わってきていたけど

4年生の頃が1番だった

私が、お母さんに内緒で少し外で遊んでいた


楽しくて夢中になっていたら

5時を過ぎていた

いつも、4時に帰っていたから

心配しているかと思った


家に帰るといきなり叩かれた

今まで見た事のない顔に

私は、恐怖を覚えた


その日は、ご飯を貰えず

話もしてくれない

目も合わせてくれなかった


きっと、いや絶対に

遊んだことが原因だった

お母さんが、変わった


その時から、絶対に学校まで迎えに来て

外で遊ぶことも禁止にされた

勉強をしなさいとかは言われなかった

ただ、自由に出かけることが出来なかった


その時は、小学生だったから

ひとりで出かけることはなかった

お金もないから遊べなかったし

お母さんと一緒なら外に出ることができた


スーパーに買い物に行くぐらいだったけど

それでも、私は楽しかった

外に出ることができるだけで良かった


でも、6年生になった頃から

友達に遊びに誘われることが増えた

みんな、門限が緩くなったり

お小遣いを多く貰えるようになり

遊びに行くことが増えた


私は、断るしか無かった

お小遣い貰ってないし

お母さんが学校まで迎えに来るから

遊びに行くことが出来ない


そのうち、私を誘う人はいなくなった

みんな私をノリの悪い子

厳しい家の子

おかしい子

そう、思うようになっていた

話しかけてくれる子もいない


私は、ずっとひとりぼっちだった


それから、小学校を卒業し中学生になった

最初は、みんなと交流をしましょうってことで

席を4つくっつけて

グルグル回って交流した


話の内容は自分たちで決めていいことになっていた

ただし、みんながわかる内容だった

大体のグループはテレビの話や

アニメの話

好きな食べ物、色の話

趣味の話などだった


ただ、私がいたグループは

家族の話だった

みんなお母さんのご飯の話だったり

お父さんの仕事の話

兄弟の愚痴だったり

楽しそうに話していた

その時、初めて私の家とは違うことを知った

でも、普通は人それぞれだから

そう思っていた


みんな話終わり私の番になった

私は、恐る恐るお母さんの話をすると

みんな、固まっていた

私がどうしたのと聞くと

ひとりがポツリと呟いた


「それ、おかしいよ」


私は訳が分からなかった

でも、みんな頷いていた

どうしてと聞くと


「お小遣いを貰ってない人はいるよ

 門限がある人もいる

 でも、外に遊びに行くのも

 ご飯を制限させるのも分からないよ」


私は、ずっと自分の生活が普通だと思っていた

だから、言われたことがあまり理解できなかった


ゆーちゃん「だって、それが普通じゃないの?

  ご飯だってお母さんが

  食べていいって言わないと」

そう言いかけた時

違うよと聞こえた


「私、あなたが怖いよ

 なんで、なんでそんなに

 痩せているのにおかしいって思わないの」


私、痩せてるの?

そういえば、周りの子は

その時、わかった

私の家はおかしいんだ

普通じゃない


今まで、外に勝手に出ちゃダメなのも

他の家とは違うんだ


家に帰ってから私は、学校であったことを

思い出していた

部屋にある全身鏡を見る

ちゃんと周りの人を見ればわかる


私は、痩せすぎている


真っ白で、痩せていて

一見理想的な体型と言われそうだけど

健康的な体とは思えない


今にも、倒れそうな私の姿に怖くなった

でも、どうにもできない

お母さんに逆らうと何されるか分からない


怖い、お母さんが怖い

その時、下から声がした

ご飯ができたって


私は、何事も無かったように

下に行った

今日の夜ご飯は

お米、茶碗の半分

味噌汁、絶対薄味

豆腐、切られてない

茹で野菜、ちょっと硬い

これだけ、毎日似たようなご飯


これじゃ、あの体型にもなる

これが、お母さんの求めてる私

私にとっては苦痛


逆らえないから何も言わない

お母さんに話しかけられないかぎり

黙って食べる


お母さんは、いつも話しかけてくれる

でも、それは学校のことだけだった

しかも、今日は太陽に当たってないか

給食の量は調節したか

遊びに行ってないか

確認するように聞くだけだった


中学生になってからお母さんに

学校まで迎えに来なくていいと言った

最初は、怒られたけど

部活とかで何時になるか分からない

連絡できないと理由をつけた


それだけは何とか許可してもらった

その代償として、めちゃめちゃ聞かれるけど

あまり変なことを言わなければ大丈夫だった


部活もお母さんが勝手に決めた

もちろん文化部

出来れば、文化部でもいいから

その中から選ばせて欲しかった


私は吹奏楽に入りたかった

昔から音楽が好きだった

でも、お母さんは

茶道部に入りなさいと言った

私は嫌と言ったのに

お母さんは


お母さん「ゆーちゃんあなたは

  品のある綺麗な女性になるの」

ゆーちゃん「でも、私吹奏楽に入りたい」

お母さん「どうして?素敵じゃない茶道部

  お人形さんみたいな人が

  茶道部に入って作法を学ぶ」

ゆーちゃん「でも、それはお母さんの理想でしょ」

お母さん「そんなことないわよ

  あなたの将来をちゃんと考えているのよ」


そう言って聞く耳を持ってくれない

私の将来を考えてくれるなら

吹奏楽にして欲しかった

どんなに言っても無駄なことはわかってるけど


お母さんは、吹奏楽をずっと否定してた

あんなの遊びだと

音楽で食べていけない

将来何の役にも立たないって


私は、あまり気が乗らないまま

茶道部で活動していた

次第に楽しくなって

茶道部でよかったと思えるようになった


部活でこっそり茶菓子食べれるし

お茶も飲める

みんなも優しくて

私を認めてくれた


最初はみんなと少し距離があったけど

話していくうちに仲良くしてくれた


最近は、家に帰ると茶道部の話ばかりしている

お母さんは良かったねと嬉しそうに聞いてくれる

段々とお母さんからも聞いてくるよになり

お茶は美味しかった?とか

今日はどんな話したの?

茶道部にはどんな子がいるのなど

色々楽しそうに聞いてくる

この時は、私も笑っている


久しぶりにお母さんと話していて

楽しいと思えた


中学3年間茶道部で活動し

勉強も自分でして

高校も決めた

高校は、私が行きたいところにしてくれた


そして、高校に入った

高校生になったら

中学生の時みたいに

変とは言われなくなった

でも、最近お母さんの様子がおかしい

部活に口を出さなくなった

ご飯もハンバーグとか唐揚げが

出てくるようになった

私は、不思議に思いつつ過ごしていた

そして、高校2年になった

ある日、私がいつも通り部屋で勉強していると

お母さんがいきなり服を買いに行くと言った

私は、ついて行った

お母さんの服を買うと思っていたら

私の服だと言っていた


私は、訳が分からなくて

何も言わずに歩いていた

そんな私の気持ちを察したのか

お母さんは小さく呟いた


お母さん「あなた、高校卒業したら

  一人暮らしするの?」


私は、意味がわからなかった

それよりも、どうしてそのことを知っているのか

分からなかった


一人暮らしをすることは

前におばあちゃんに少し話しただけ

あ、もしかて

そう思ったと同時にお母さんが口を開いた


お母さん「フードコート行きましょう」


私は、小さく頷いて

お母さんの後ろを歩いた


フードコートで飲み物を買って席に座った

少し沈黙が続いたあと

お母さんがゆっくり話し始めた


お母さん「ねぇ、正直に答えて

  今までの生活どうだった?」

ゆーちゃん「どうだった?」

お母さん「うん、嫌だった?」


私は、少し迷った

答えてお母さんを傷つけてしまう

でも、チャンスだと思った


ゆーちゃん「うん」


私が小さく言うと

お母さんは俯いてそうよねと呟いた

そして、そのまま続けた


お母さん「私、おばあちゃんに言われたの

  過保護すぎるって今やってるのは

  過保護を通り越して、束縛だって

  私は、昔グレてたから

  お父さんによく叱られていたの

  何度も恋人から振られた

  そして、あなたのお父さんからも

  逃げられた」


それを聞いた時私はわかった

そっか、お父さんが逃げたのは

昔のお母さんを知ったから

今のお母さんは品のある綺麗なお母さん

でも、怒ると怖いのは

昔のお母さんが出ているから

どうして、お父さんが離れたのかは分からない

でも、きっとなにかがきっかけで

昔のお母さんを知ったから

多分そういうこと


あの時のお父さんが家を出た時の

お母さんの顔を私はよく覚えていた


お母さん「だから、あなたのためにって

  ずっと私が決めていた

  でも、おばあちゃんに言われたの

  それは、お前の理想だって」


私は、話を聞いている時

よくある話だと

一人暮らしをしないでとか

今までのこと許して欲しいのとか

言ってくるのがお決まり

でも、私は完全には許せない

そう考えていた

自分でも、性格悪いなと思ってしまう


お母さんは、話し終わったのか

顔を上げて私を見た

そして、何かを言おうとしていた

きっと今私が思っていたことだろう

そう考えていたのに、お母さんは違った


お母さん「私のこと、今までの事

  許せないのはわかってる

  だから、許さなくてもいい

  一人暮らしも止めないわ 」

ゆーちゃん「え?」


思っていた言葉と違って

私は戸惑った


お母さん「バイトもしていいわ

  でも、これだけは言わせて」


お母さんがそういうと

息を吸ってから

私の目をしっかりみて

真剣な顔で


お母さん「あなたは、すっごく綺麗で可愛いわ

  だから、自分に自信を持ちなさい

  あなたには、才能もある

  好きなことをたくさんやりなさい

お母さんが出来なかったことを

  やって欲しいの」


初めて知ったお母さんの気持ち

ずっとそんなこと考えてたんだ

ほんとに、私のことを考えてくれてたんだ

今、知ることができた


その日は、服を買って

ご飯を食べて家に帰った


それから、数日後

私は、バイトを始めた

初めてで緊張していたけど

すぐに馴染むことが出来た


お母さんも私に笑顔が増えて

嬉しそうだった

残りの高校生活も全力で楽しんだ


そして、何よりも

お母さんとの時間を大切にした

今まで行かなかったところに行ったり

食べてこなかったものを食べたり

一緒にゲームをしたりした


最近のお母さんは活発になった

でも、少し困っていることがある

たまに、私のバイト先に来ては

私の自慢をしている

近所の人達にも自慢している

その時は、決まって


お母さん「この子、うちの娘なの

  可愛いでしょお人形さんみたい」


こう言っていた

私は、少し恥ずかしかったけど

お母さんの自慢の娘に慣れたならいいのかなと

思っていた


そして、今日は高校の卒業式

1週間後には私は家を出る

アパートも借りた

これから、大学生活をする


お母さんは、卒業式が終わったあと

思い出思い出と言いながら

学校と私の写真を連写していた

多分100枚は超えている


その後は引越し準備で忙しかった

お母さんもおばあちゃんも手伝ってくれて

楽しく準備が出来た


そして、私は家を出た


それから、数ヶ月が経った

今私は、大学で勉強している

大学生になったらみんなオシャレだった


私は、毎回のことだけど

少し、自分の容姿で何か言われないかと

不安に思っていたけど

その気持ちはすぐに消えた


だって、私の容姿大人気だもん

どうして、そんな美白なの?

なんで、そんなにスタイルいいの

どうやったらそんなに身長高くなるのと

質問攻めだった


だから、私はお母さんのせいで

こんな容姿なんだと笑顔で言っている

みんなは良いなと羨ましがっている


昔は、あんなに嫌っていたけど

今となってはこの容姿にしてくれた

自慢のお母さん

そして、おばあちゃんにどんなにお礼を言っても

言いきれないくらい


私に自信をくれて

お母さんとの仲を良くしてくれた


そうだ、今度家に帰ろう

今、私は楽しくやっているよ

そして、この容姿はちゃんと維持しているよ

大学でバンドサークルに入ったことを

お母さんとおばあちゃんに

報告しないと


サークル仲間「早くしないと置いていくよ

  今日は、素敵な練習メニューだよ」

ゆーちゃん「今行く〜」


素敵か

昔の私より

今の、やりたいことをやっている私の方が

輝けて素敵なのかな

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