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Cycle of life ~ 生命を紡ぐ円環の惑星 ~  作者: 彩灯 哲
第1章 異世界生活開始
5/21

第4話 ハンター試験開始




 月日はあっという間に流れていき、もう研修が始まって半年が経った。

 そして俺達は昨日から卒業試験かつ就職試験でもあるハンター試験会場に来ていて、ここで2日かけて試験を行っている。


 初日は1日かけて職業別に筆記試験。主に法律に関する知識やクエストの契約に関する知識だった。元々法学部だったから法律独特の言い回しとかは慣れてて結構すぐ覚えれたので、解くのもそこまで難しくはなかった。


 この半年の間に、この世界の基本的な法律や歴史、数学、語学、魔導を含めた科学なんかを教わった。今はもう基礎は終えて徐々に専門的なレベルに上がってきた。

 語学に関しては魔導機の力を借りて、ルルさんに元々入ってた翻訳機能にプラスして目で見た言語を知ってる言語に翻訳する機能を追加してもらった。聴覚翻訳よりもレベルの高い機能だったみたいで、ルルさんからアユーユさんに、そこからクローム先生に繋がってなんとか追加してもらえた。

 クローム先生から、


「タダじゃないよ!これ普通に買ったら高いんだから!出世払いだからね!おまけして10万N(ネイ)にしてあけるからよろしくね〜!」


 と、電話越しに言われてしまった。1Nは日本円で1円換算らしい。おまけして10万って元々どんだけ高いんだろう。まぁ0から勉強したら少なくとも数年はかかるものを、勉強しなくても読めるようになる機能ならそれでも安いのか。


 数学は元の世界と基本的には変わらず、科学の原理や法則も俺が知っているものは同じだった。元々理数系は得意だったから特に問題なくできた。

 でも驚いたのは魔導と科学は密接に関係してるってこと。物理法則なんかを理解した上で扱うことで性能も精度も格段に上がるし幅も広がるんだって。


 具体的には、魔法は魔力を使って無から有を生み出す技術で魔力の消費が大きい。魔術は魔力を使って物質をコントロールする技術で魔力消費は魔法と比べると少なくて済むけど、そこにあるものしか変化を起こせない。


 例を挙げると、魔法でいきなり氷を作るのと、魔術で空気中の水蒸気を集めて水→氷と変換すると消費MPは3分の1ほどで済む。

 変換できる範囲や精度は使用者の技術によるけど、魔法と魔術を組み合わせて使うことで効率よく魔力を使えて、2つを組み合わせて使う技術を『魔導』って呼ぶらしい。

 だから出来る限り物理法則や原理を理解してそれに沿って魔術を使って、解明されていなかったり、自分では理解出来なかったりする部分を魔法で補う事で、かなりの範囲で活用出来るみたい。


 でも高度な魔導には危険なものもあるから、使用するのに許可や資格が必要らしい。国によってその差はかなりあるけど、基本的には幼少学校で基礎を学んで卒業時には初歩ランクの資格が取れるみたい。その後は各自で必要なら試験を受けて資格を取得するらしいけど、場合によっては特例で試験を免除される事もあるみたい。

 自動車の魔導機の時も思ったけど、思ってたよりも法律でしっかり管理されてる。ゲームとかだと結構街の中でバンバン魔法撃ったり、危険な魔法を誰でも使えてしまったりする場面も多かった気がする。


 そういえば、職業適性検査では『モンストルハンター』の素質が1番高い結果だった。元々野球部で体力とチームプレーには自信あったし、スポーツチャンバラもそれなりに実力あったからかなと思う。

 あと某ハンティングゲームの最上位プレイヤーだったし!よく友達とオンラインで集まってハントしに出かけたな〜。


 適性も高いみたいだし、せっかく異世界に来たならここでしかなれない職業に就いてみたいと思って、進路希望調査では迷わずモンストルハンターを第一志望にした。

 ちなみにハンターには、『モンストルハンター』、『トレジャーハンター』『ブラックリストハンター』、『ライフハンター』があって、アユーユさんはメインの仕事はモンストルハンターで、依頼がない時に副業として他の3つをこなすらしい。

 ハンターは全世界共通の資格で各国にハンター協会が設置されていて、一定期間内に一定数のクエストを達成した登録者には基礎賃金が支払われる。基礎賃金の金額と条件の期間はハンターの種別によって異なるらしい。


 モンストルハンターは害獣の討伐、モンスターの生態調査、絶滅危惧種モンスターの保護などを行う。中にはモンスターを手懐けて一緒に闘うモンストルライダーもいるみたい。

 基礎賃金が最も高いけどクエストには常に命の危険が伴う危ない職業。

 竜騎士とかカッコいいよね!


 トレジャーハンターは遺跡やダンジョンの中の宝物を探すハンター。貴重な鉱石やモンスターから取れる素材なども集める。鍛冶師や研究者、お金持ちからの依頼が多くて報酬も良いらしい。基礎賃金は高いけど、これも危険地帯や危険なモンスターと対峙する可能性が高く危ない職業。

 古代遺跡とか映画でよくあるよね!


 ブラックリストハンターは指名手配中の悪人を捕獲、処理するハンター。元の世界でいう警察や軍と連携して治安維持に務める仕事で、イメージは警察の捜査一課とニ課のみが独立した感じ。殺人犯や武装組織なんかを相手にすることもありこれも危険が付きまとう職業だから基礎賃金は高め。

 ブラックリストハンターってなんか名前の響きがカッコいい!


 ライフハンターは国民の生活を守るハンターの総称で、掃除専門のクリーンハンターや貴重な食材と至高の料理を追い求めるデリシャスハンター、医療機関と連携して現地にすぐ駆けつけるレスキューハンターなど1番やる事が多彩。大半のハンターはここになるらしい。命の危険がある職業もあるけど、多くは安全に仕事ができるので基礎賃金は低めに設定されているものが多い。


 ハンターにはランクがあって、S〜Gに分かれている。突出した実力や成果がある場合に特別にSランクに認定される事があるらしい。

 ハンターの依頼を受けるには参加条件を満たさないと受注できなくて、その条件には参加人数やランク、特定のスキルを所持している事なんかもある。その他にもHRPハンターランクポイントっていうのが定められていて、参加ハンターのHRP合計が不足していると受注が出来ないらしい。

 HRPはGランクを1ポイントとしてランクが上がる毎に1ポイント上昇し、Aランクになると7ポイントとなる。

 ちなみにアユーユさんはモンストルハンターのSランクで、規定ポイントからは除外されていて65ポイントもあるらしい。凄すぎぃ!


 そんなモンストルハンターになるために、週末はアユーユさんと魔導の練習や、アユーユさんの紹介でハンターの仕事を見学したりすることが多かった。

 ちなみにイケメンエルフのウォークタも一緒に見学している。ウォークタとはほとんどの講義が一緒で同じ集合住宅に住んでるから自然と仲良くなって、今では呼び捨てで呼び合う仲だ。


 ウォークタはイケメンで優等生っぽいキャラだったんだけど、俺のスマホにあるアプリの漫画にどハマりして気がつけば一人前のオタクになっていた。

 特に反逆のロボット漫画にハマって、時折口調や仕草がその漫画の主人公のようになっている。中二病が重症の域に来てしまったようだ。

 それでも能力的には優等生なのでウォークタも半年でカリキュラムを終えている。そして、元々ハンターを目指してたみたいだったから訓練も一緒にする事が多かった。

 


 さて、2日目の今日は実技試験。

 クエスト内容はそれぞれの志望職によって異なり、俺とウォークタはモンストル、トレジャー、ブラックリストハンターの3つを同時に受けるので、1日がかりの長丁場だ。

 実技試験の順番はブラックリストハンター、トレジャーハンター、モンストルハンターの順で、参加者の中でランダムにパーティーを組み、出されたクエストを制限時間内に達成すると合格となる。試験毎に参加者が違うのでパーティーは毎回変わる。

 

「定刻になりましたのでこれからブラックリストハンター資格試験を開始致します」


 さて、いよいよこれから実技試験が始まる。近年の傾向では施設内の試験管を見つけ出して制圧することだったけど今年はどうだろう。


「今回の試験内容は、くじ引きで3人1組のパーティーを組み、制限時間内に演習施設内に潜伏しているターゲットの捕縛です。評価は任務の成功だけでなく、貢献度や連携の良し悪しも評価に含まれるので、任務を達成出来ても不合格になる場合があります」


 やっぱり今年も同じか。それなら対策してきてるから大丈夫かな。


「ブラックリストハンターは依頼者と協力する任務や捕縛の任務が多く、慣れない人とも協力をして殺さずに捕まえる技術が求められるので、それを確認する試験になります」


 とはいえメンバーの良し悪しはあるよね〜。良い人とパーティーになれると良いなぁ〜。


「制限時間は3時間、ターゲットは難度の違う者が5人、詳細はそれぞれのスマートリングに送っています。1組1人だけ拘束してください。ターゲット2人以上の捕縛、他パーティーへの意図的な攻撃、エキストラの民間人への攻撃は失格となります。攻撃はペイント弾、ペイントナイフ、打撃による攻撃のみです。魔導での直接攻撃はクラス3まででこれも致命傷になる部位へは禁止です」


 くじ引きの結果、俺とウォークタは別々になった。別々なのは残念だけどまぁあいつならきっと大丈夫だろうし、俺もがんばらなくちゃ。

 それぞれパーティーに分れて合計10組ができあがった。その後、ターゲットの説明があり、30分の準備時間の後に試験が開始された。

 

 俺のパーティーメンバーは無垢人の女性とオーガの男性だった。準備時間の30分でまずはそれぞれ自己紹介をすることになった。


「まずは私から自己紹介をしましょう。私は無垢人界西部セキュリティナイツ治安維持局第3部隊所属のルドベキア・ファルフーギウムです。愛称のルディで呼んで下さい。スキルクラスは捕縛魔導6、攻撃魔導3で炎、水、雷系が得意、魔導機械技師5もあります。手持ちの装備は偵察用小型魔導機(シャドウディスク)電撃棒(ショックバトン)電撃鎖(ショックチェーン)手錠型魔導機(フィックスカフス)耐衝電撃(ショック)スーツです。よろしくお願いします」


 ショートボブで整った顔立ちにきりっとした目元。身長は160ないくらいかな。細身だけどしっかり鍛えられてて仕事のできるクールビューティーな感じ。部隊名は長くて覚えられないけど、セキュリティナイツってこの国の警察の事だし、スキルや装備を短くまとめて伝えるあたり実戦経験も多そうだな。


「次は俺がしよう。俺はモンクシュード・アコニット。呼ぶときはシュードでいい。亜人界のガーディアンナイツ、ファーストアロー部隊に所属していたが先月退職してこの試験に臨んでいる。スキルは捕縛魔導3、攻撃魔導5で炎、土、風系が使える。武装は複合兵装の小型盾斧ライトウォールアックス、シャドウディスク、フィックスカフス、ガーディアンメイルだ」


 ガーディアンナイツって軍隊のことだよな。ってことは元軍人じゃん。この人は赤みがかった肌に筋肉質で大柄なオーガのイメージそのまま。身長190はありそう。短髪で凛々しい顔立ちと装備も相まってまさに国民を守る騎士って感じ。

 そして二人とも持ち込み装備のレベルが高い。どれも実戦で使われているレベルのもので市販の中でも高水準なものばかり。二人とも実戦経験豊富そうだからめっちゃ頼もしい。


「僕は研修生の越智優仁おちゆうとです。呼ぶときはユートで大丈夫です。スキルは捕縛魔導3、攻撃魔導5で炎熱、雷電、重力系が得意です。あと探索系の魔導も使えます。装備はセンター支給の双剣とライトメイルしかないです」


 俺はお二人よりも持ち込み装備が貧相で申し訳ない。でも半年前に転移したばかりだし、学生だからそんな武装なんて揃えられないのよ。


「え?君、研修生で攻撃魔導5もあるの?しかも重力魔導も使えるの?凄いね、セキュリティナイツでも数人しか使えないわよ」


「ガーディアンナイツでも似たようなもんだぞ。凄いなユート君は」


 そう、俺はどうやら魔導適性が高かったみたいで、この半年で結構色んな魔導が扱える様になってきた。炎熱・雷電系と重力魔導、日常生活で役に立つ魔導(生活魔導)をある程度覚える事ができた。研修内で資格試験も受けれて、魔導使用資格も10段階のうちクラス1~5の魔導まで使えるようになった。クラス5は一般的な攻撃魔導より少し上位の魔導が使えるくらいで、街の中でクラス5の攻撃魔導を許可なく使ったら、正当防衛とかの特別な事情がない限りは逮捕される。まぁまともに喰らえば大怪我するレベルの魔導だから当然だね。

 それと、重力魔導は国内でも50人程度しかいないみたいで、それも実戦レベルで使えるのはかなり少ないらしいからこれは俺の強い武器だと思ってる。


「研修生でそれだけの魔導って、もしかして君は異世界人か?」


 やっぱり異世界人は魔導適性が高い事は皆知ってるんだな。


「はい、半年くらい前にこの世界に来ました」


「半年でこの魔導…羨ましいわね。私達はここまで鍛え上げるのにどれだけ必死だったか…。でも仲間となれば心強いわ。ちなみに実戦経験はあるの?」


「対モンスターなら10回くらい。対人は訓練でしかありません」


 ブラックリストハンターは相手がモンスターをテイムしていない限り対人戦闘がほとんど。俺はモンストルハンターが第1志望だし、対人の実戦となると無資格では出来ないから実戦を経験できていなかった。


「まぁ半年前に来たばかりだし実戦はないでしょ。ユート君は後衛でサポート、俺がメインで注意を引きつけるからルディさんは捕縛魔導で拘束を頼める?」


「魔導スキルと装備的にそれが妥当ね。ターゲットは誰を狙う?」


「えっと、ターゲット難度5が武力組織のボスで、4が猟奇殺人犯、3が強盗団のボス、2が強盗殺人犯、1が行方不明者の男性か。まぁ2が手堅いかな」


 それぞれターゲットは1名ずつだけど武力組織のボスや強盗団のボスは側近の配下がいる可能性が高い。猟奇殺人犯は単独犯で星4つくってことは相当手強いってことだろう。


「私もそう思う。1は人探しで楽に見えるけど、資料の情報だけでは状況がつかめない。何らかの組織に組みしていたり、巻き込まれたりしていた場合は難度4くらいまで上がる可能性のある内容よね」


 2人とも実戦経験豊富なだけあって情報の整理が的確で早い。


「でもそれは多分他のパーティーもそう考えているだろうから、メインは2を狙いつつ、1と3も同時進行で行きましょう。1は情報が集まってから再度判断で」


「オーケー。ならまずは情報収集だな。施設内に入ったら散開して30分毎にスマリで状況報告。犯人と遭遇、もしくは決定的な情報が手に入ったらすぐに連絡。犯人との接触は出来るだけ単独で行わないように」


「了解です」


「了解」


 打ち合わせを終えてそれぞれ準備運動や装備のチェックを行った。もう開始時間まであと僅かだ。


「皆さん準備はよろしいですか。それではクエストスタート」


 合図と共に施設の扉が開いて次々中に入って街に進んでいく。


「俺らも行くぞ」


「あ、散開前に少しだけ待ってもらってもいいですか?魔導使って地図作るので」


 俺は胸に手を当てて意識を集中させる。


「空間測設定、半径5キロ、電磁波、光波、重力波、複合測定…」


 スマリの魔導石が淡く光り出した。


空間測定魔導スペメジャ


 言葉を言い終えるとスマリの魔導石が一瞬強く光った。その後、光はすぐに消えて元に戻る。

 するとパソコンの画面みたいな映像が空中に映し出されて、そこには建物などを3Dスキャンしたような映像で、その中には人の形をしているものもある。

 これは現代の3Dスキャンを魔導で再現したもので、この施設内に存在するものを全てスキャンした映像だ。

 これが試験対策で俺が準備していた魔導。実はクローム先生の研究に協力するかわりに俺の魔導実験にも付き合ってもらって、そこで新しく空間測定の魔導を開発したんだよね。

 難しい計算は分からないけど、アイディアと大まかな仕組みを説明したらクローム先生が、


「なにそれ!めっちゃ楽しそう!」


と、猛スピードで仕上げてくれた。

 3つの異なる波を放って、それぞれ跳ね返ってきた波を計測して立体的な映像として映し出す仕組み。この世界でもレーダーとかは存在するけど、同じレーダーでもモンスターを探すときは魔導を検知するレーダーの方が開発は進んでるみたい。


 スキャンしたデータを2人に見せると、


「うぉ、なんだこれ、めちゃくちゃ詳細なマップじゃないか。これなら施設内に隠れてる奴ら皆見つけられるじゃないか」


「人のスキャンも一緒に出来るので、このデータとターゲットのデータを照らし合わせれば…」


 そう言って俺はさっきのデータからターゲットのデータを魔力操作で入力して検索をかける。するとターゲットの可能性が高い順で検索結果が出てきたので、さっきのマップデータと一緒に2人に転送する。


「おいおい…マジかよ…。特徴一致率95%以上の結果の奴なんてほぼ特定したようなもんじゃないか。こんな高度な魔導見たことないぞ」


「これならピンポイントで狙えるわね。マップの精度がどれくらい高いかはもう少し見てみる必要はあるけど、本当に精度が高いようならすぐにターゲットに接触できそうね。でもこんな事ができるなら最初に言って欲しかったわ」


「すみません、測定可能距離が限られているのと、常時使用するとすぐに魔力が尽きてしまうので、状況を見極めて使える状況で伝えようと思っていました。中に入ったら反対側の壁がうっすら見えたので目視の範囲ならいけると思って使いました」


 そうなの。この空間測定魔導は高性能だけど、範囲を広くするとまぁ〜たくさんの魔力を消費するんだよね。戦闘するかもだし、この後の試験も控えてるからなるべく魔力は節約しときたかった。試験会場は壁で囲まれた実際の街を再現した施設で、試験前は外で待ってて入り口の外観しか見えていなかった。なのでどれくらいの広さかわからなかったんだよね。


「とりあえずどれだけ精度が高いか検証して、その後ターゲットがいたエリアを重点的に探そう」


 俺達は各々データと実際の差異を検証した。5分程して再度集まると、


「すごいわね…。本当に細かな物は多少違うものもあるけど、建物や人の大きさはほぼ一致していたわ」


 撮影した時点での状況だから人や動物などの生き物は移動して変わっている場合も多い。狭い範囲なら魔力消費を抑えられるから常時使用することもできるけどね。


「こっちもだ。これならターゲットの一致率も正確そうだな。よし、予定通りターゲットに接触して確保に移ろう」


 俺達は当初の目的通り難度2の強盗殺人犯を狙うことにして、そいつが隠れているアパートの部屋を囲んだ。最終確認でもう1度このアパートに範囲を限定して空間測定魔導スペメジャを使うと、ターゲットの一致率が99%だった。

 なので予定通りシュードさんが玄関から突入して注意を引き、ルディさんは入り口と反対側の窓から突入して魔導で動きを止めて捕縛、俺はルディさんの後ろでサポートの為に待機でいく。


「それじゃあ行くぞ。3…2…1…突入!」


 扉ごと吹き飛ばしてシュードさんが突入して、ルディさんは窓の鍵を魔導で操作して瞬時に開けて突入。俺はアパートから逃げられてもすぐ動きを止めれるよう電撃魔導の詠唱に入っていつでも撃てるように準備した。

 しかし、ターゲットは2人の突入に対応出来ず、作戦通りに事が進みあっという間に制圧して手錠型魔導機(フィックスカフス)で拘束。どうやら殺人犯役の試験管はこんなに早く見つかると思ってなくて大分油断していたようだ。ターゲットを入り口の試験官に引き渡して試験終了。試験開始から僅か30分だった。

 緊張して挑んだけどすぐに終わって拍子抜けだったな。


「なんだか呆気なかったですね」


「ユート君の空間測定魔導が大きかったわね。あれで情報収集の時間ほぼなかったし、ターゲットの状況も丸わかりだったし」


「まぁ本当の実戦はここまで上手くは行かないだろうが、適材適所で上手く役割はこなせていたからな。チームワークは悪くなかったと思うよ。あとは試験官にどう映ったかだな」


 試験の合否は翌日に発表との事で、俺達はその場で解散となった。


「さて、結果は明日だからもう俺は帰るぜ。あ、その前に2人とも、さっき共有した連絡先は消さずに残してもいいか?今日のパーティーは凄いやりやすかった。今後も時々一緒に活動できたら有り難いんだが」


「私は構わないわよ。繋がりは大切。何かあった時はお互い協力しましょう」


「僕も大丈夫です。むしろそんな風に言ってもらえて嬉しいです」


 素直に嬉しかった。ちゃんと皆の役に立てたこと、働きを認めてもらえたこと。今までこんな風に人に認めてもらうことはあまりなかったから。スポーツでも勉強でも中の上から上の下くらいの成績が多くて飛び抜けていいわけじゃないし、親から褒められることもなかった。だからこんな風に実力を認めてくれるのは本当に嬉しかった。


「それじゃあ、皆受かったら酒場で祝杯でも挙げような!またな!」


「私も帰るわ。ユート君はこの後も?」


「はい、あとトレジャーとモンストルがあります」


 この後まだ2つ試験あるから早く終われて良かった。体力と魔力も大分温存できた。


「1日に3つ受けるの!?すごいわね…それじゃあこれは餞別。ユートくんのお陰でこれ使わずに済んだから。この後も頑張ってね」


「ありがとうございます、頑張ります!」


 くれたのは魔力回復のドリンクだった。魔力ぼちぼち使ってたからめっちゃ助かる!

 俺は2人を見送ったあと、次のトレジャーハンター試験もあるので休憩所の仮眠室で仮眠を取ることにした。


 次はトレジャーハンターの試験。次も集中して頑張ろう。

 そう思いながら俺は瞼を閉じた。








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