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Cycle of life ~ 生命を紡ぐ円環の惑星 ~  作者: 彩灯 哲
第3章 魔人大戦

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第24話 厄災魔獣と対存在

前回の登場人物


アユーユ・アフート

 天災級の魔物である厄災魔獣を討伐した英雄の1人で実は転生者。半竜人ハーフドラゴニュートであり高い戦闘力を持つ。

 様々な功績と人当たりの良さから、ハンター協会直属対戦闘専門組織『アユートアーラ』の代表に任命される。


ルビアス・コンティ

 5人の子どもを育てるママさんハンター。魔導を(トライフォース)極めし者(マスター)と呼ばれる連続魔導の達人。魔導スクールを自宅で開き、カレンと共に優秀な魔導師を数多く育成する。

 今までの功績と西部拠点防衛戦の活躍によりアユートアーラの副代表に任命される。


カレン・R・シャクヤク(カレン・デュラ)

 白鳥型獣人スワイツ竜人ドラゴニュートとのハーフで、アユーユの魔導学校時代の幼馴染。相棒のルビアスがハンターを休業したので自身も第一線からは退く。その後、魔導講師としてルビアスと共に魔導スクールを開校。結婚、妊娠、出産を経て子育てしながら魔導スクールの講師として働く。

 今までの功績と、アユーユ、ルビアスが連携を取り易い人物としてアユートアーラの副代表に抜擢される。


フィノーグ・アゴイステン

 戦艦の共同開発で技術者として派遣されたアゴイステン一族のひとり。フィアゴの妹。フィーゴと同じく魔導機開発の第一人者。気の強いしっかり者だがフィファには優しい。フィファの姉的存在。戦艦では通信系を担当。


カラァ・ヴァイオレット

 一昨年まで日丸島ひがんとう海上警備軍の大隊長だったが、若手の人材育成をする為に退役し、ハンターとしてフェアルドーレ港の海洋治安維持警備部隊の特別訓練講師として勤務している。ブロンドの髪に綺麗な紫色の眼、メリハリのある鼻筋と細身だが鍛えられた四肢。何よりも豊満な胸で巷でも噂になっている。若い時には数多の海洋魔獣を葬っており、『洋艶ようえんの魔女』と呼ばれている。カレンにスカウトされバハードゥルの艦長に抜擢される。


一太刀いのたち じん

 日丸の軍隊を統べる総大将。居合の達人でモンスター100体を抜刀の一撃で真っ二つにした豪将。『一刃斎』の名で有名。アユーユの武術の師匠で、厄災魔獣に一度敗れたアユーユに十文字槍を用いた槍術と刀を使った剣術を叩きこんだ。






 


 見事初陣を勝利で飾ったアユートアーラだったが、まだ完全に安心できる状況ではない。数日から数週間以内には準厄災魔獣クラスが出現する可能性が極めて高い。なので俺達は日丸の京央、東道、西阪軍それぞれの総大将と、防衛大臣兼イノセンシア軍元帥のアスターと通信で作戦会議をする事になった。


「こうして話すのも久しぶりだな。先程は見事な戦いであった。月日が経とうとも衰えてはおらぬようだな、アユーユよ」


「ありがとうございます、師匠。ですがこれでもお腹に落とせない肉がつき始めた年頃ですよ。全盛期より確実に衰えが始まっています」


「儂の前で年齢の事を言うか馬鹿者。儂はもう60だぞ」


「よく言うぜおやっさん。まだまだ現役だろうよ」


 そう言ったのは東道軍の総大将で、竜人界の軍隊であるドラゴンナイツピャーチの元隊長、ヴォーツ・バェーインさんだ。


「お久しぶりですヴォーツさん、お元気そうでなによりです。日丸軍に入った話は聞いてましたが、まさか東道の総大将をやってるとは思いませんでした」


「よう。オプペティ・プクク討伐の祝勝会以来だな。俺も色々あってな。気付けばこんな責任のある立場になっちまったよ。お前も大層な役回りを任されて大変みたいだな」


「僕もこんな大役を任されるとは思いませんでした」


「なんや皆さん顔見知りなん?」


 そう話したのは、着物をあしらった艶やかな防具を着け、ボブヘアーに糸目で京都弁を話す妖しさのある女性だった。


「そう言えば君は初対面だったな」


「アユートアーラ代表のアユーユ・アフートと申します。よろしくお願い致します」


「うちは日丸西阪軍総大将、ユリ・B・グランドチェリーどす。よろしゅうおたの申します」


 京都弁…転生してからは初めて聞いたな。


「さて、自己紹介も済んだところで早速だが今後の動きについて話していきたい」


 そう言ってアスターはモニターを切り替えた。モニターにはカレンが提出した厄災魔獣の出現周期と、その前後に起きる現象をまとめた資料が映し出された。


「これはアユートアーラから提出してもらった資料になるが、この資料は魔導協会の研究資料データベースと精霊界、亜人界の歴史資料等から得た情報をまとめたものだ。これらの資料にはそれぞれ断片的に厄災魔獣出現前後の世界情勢や状態を確認することができた」


 この情報はカレンを中心に、戦艦運用のデータを取るために乗船していた様々な方面の研究者チームも協力して情報を集めてくれた。そのお陰もあり戦闘時にカレンが伝えた情報から、さらにその情報の裏付けとなるデータも見つかった。


「厄災魔獣の出現周期については500年に1度というのは歴史的にも周知の事実ではあるが、その前後の情報は記録に残っているものも少なく、各国でそれぞれ状況が異なる上に、それが厄災魔獣出現の予兆となるかどうかは今まで検証するのが難しかった」


「最後に姿見せはったんがもう500年も昔の事でっしゃろ?そないな昔の事やから資料探すんはほんま大変やったんとちゃいますか?」


「だろうな。厄災魔獣が出現すると大きな被害が出る。対策や対応も膨大だ。当時の状況では国同士で連携して出現の原因や予兆を考える時間も持てなかっただろう。落ち着いた後に考えようにも、世界に散らばる情報を拾い上げるには規模が大きく各国とのパイプラインのある組織でないと難しいだろう」


 かつて長年行方をくらましていたオプペティ・プククと数百年ぶりに竜人界で直接対峙したヴォーツさんは、その戦いで右腕を失い、その強さと恐怖を身を持って知っている。そして、被災した地域の過酷さと悲惨さも、そこから立ち上がる大変さも。


「アユートアーラは私がミーレス陛下とのパイプがある事や、各国に存在するハンター協会のデータベースが使える事、亜人界と無垢人界の研究者が共同で戦艦を建造したりと、奇跡的に各国へのパイプラインがあったのが幸いでした」


「話を戻そう。これらの資料から、厄災魔獣出現の予兆として、まず初めに終結テロスの大穴から大量のモンスターが出現し、次に準厄災魔獣クラスの魔物が複数体出現する。そして最後にユグドラシルから厄災魔獣が出現するというのが一連の流れになっていると推測される。今回モンスター群を討伐したので、次は準厄災魔獣クラスの魔物が単体から複数体出現する事になる。過去に出現したときはそれぞれ関連性があるとは考えていなかったので、出現までの具体的な日数は不明だ。出現する個体数も恐らく毎回異なっている」


「なんや、結局具体的な事はなんもわからへんやないですか」


「これでも何もわからない状況からは大分進展している。個体数も複数体と伝えたが、分かる限りの過去の記録の中で短い期間で出現した準厄災魔獣の最大数は3体だ。約500年前、前回出現した厄災魔獣であるオプペティ・プククの出現前には、出現の半年前にモンスターの大量発生があり竜人界と亜人界では大きな被害があった。その3カ月後には1ヶ月に1体ずつ計3体のネームドモンスターが出現して各地で暴れていた。さらにその前、約1000年前に出現した厄災冥竜ルヴェーザの時にも、約3カ月前にモンスターの大量発生があり、精霊界や竜人界に大きな被害があり、ルヴェーザ出現の1か月前には皆もよく知る星獣ミナトの深緑竜ヴァルトドラゴーネ殿が出現している」


 星獣ミナトの深緑竜ヴァルトドラゴーネとは、アシュが討伐した準厄災魔獣クラスの竜、三獄竜トレスナラカを協力して討伐したネームドモンスターだ。

 深緑竜ヴァルトドラゴーネは非常に高い知性を持っていて、出現当時は見境なく山岳地帯の森林を伐採していた組織や、星獣・凶獣問わずモンスターを大量虐殺して毛皮等の素材を商品としていた組織を壊滅させていた。

 しかし、一般市民には攻撃せず、逆にヴァルトドラゴーネの魔導による思念波で意思疎通をして、友人となった市民が多く現れ、意思疎通が可能だと判ると、当時の領主が謝罪をして山岳地帯に自治領を認めて友好的な関係を築くことが出来た。

 それが今でも続いていて、実際に俺もモンストルライダーの訓練を一緒に行ったり、人間態になったヴァルトドラゴーネと食事をした事もある。


「このことから、出現する準厄災魔獣には次に現れる厄災魔獣の要素が反映された個体が出現する可能性が高く、その個体数は一定ではない事が推測される」


「何故ヴァルトドラゴーネ殿は意思疎通が出来たのか…。もしかしたら次に現れる準厄災魔獣も必ずしも敵対するとは限らないのかもしれないな」


「うち、気づきましてんけど、ヴァルトドラゴーネはんと直接話せばええのと違います?」


「…確かにそうだな。記録だけでなく本人に直接聞く方が遥かに確実な情報が手に入る」


 アスターも同意したのですぐに部下に連絡をさせた。


「もし差し支えへんかったら、うちからお話させてもろてもええどすか?ヴァルトドラゴーネはんはよう知ってる仲やさかい話やすいと思うんどす」


「そうか、ならよろしく頼む」


 少しして通信が繋がったようでモニターに映し出された。そこにはエメラルドの様に美しい髪色と眼、白緑の中でもかなり淡い色をした肌に合う白と緑を基調とした服が神秘的な雰囲気を出している。


「ヴァルネちゃん久しぶりやね〜元気やった?」


「ユリちゃん久しぶり〜!元気も元気!そっちこそ元気やった?」


「当たり前やないの〜また一緒にランチ食べ行こね〜」


「あら、よく見たらアーくんじゃない!久しぶりだね〜!最近全然顔見せに来てくれないから〜!」


「お久しぶりです、ヴァルトドラゴーネさん。でもここで、その呼び方はちょっと…」


「え〜、前みたいにヴァル姉でいーのよ〜。それにあたしからしたらみんな子どもみたいなものよ」


 ヴァル姉さんはもう約1000年生きているので、今生存している人類のほとんどは玄孫よりもっと離れている事になる。そりゃヴァル姉さんからしたら俺達はみんな赤ちゃんみたいなもんだ。


「さて挨拶はこの辺にして、あたしに聞きたいことがあるんだったわね。厄災魔獣出現の予兆についてでしょ?」


「はい、先日大量発生したモンスター群が厄災魔獣出現の予兆だという資料を見つけ、今後起きる現象への対策を考えている所です。ヴァル姉さんには厄災魔獣出現について、色々教えていただけたらと思っています」


「そろそろ話を聞きに来るとは思ってたわ。来年は厄災年でその予兆も始まったしね。私も厄災魔獣の先災として現れた存在だから、先日の予兆も感知したわ。当時、私が現界するに至った経緯や流れをお答えしましょう。私中心に話し出すと話がすぐ脱線しちゃうから、皆からの質問に答える形で話しましょう」


「わかりました。では早速ですが、我々が最優先で知りたい事は大きく2つです。1つ目は出現する厄災魔獣の能力等の情報と出現時期、2つ目は先災の準厄災魔獣の数と能力、出現時期についてです」


「強さについてね〜。出自が同じだからもちろん感知してはいるんだけど…表現が難しいわね。私達は星の自浄作用として500年に1度の周期で集められる負の魔力の集合体なんだけど、この世界に現界した時に初めて受肉して魔力が魂に固定化されるの。だから、現時点で感知している強さよりも強くなるのよね〜」


 厄災魔獣の出自については色々研究されていたけど、概ねその研究結果と内容は同じだ。直接厄災魔獣に連なる者に話を聞くなんて発想は今までになかった中で、正解に辿り着いていた研究者達は凄いな。


「基本的には500年の間で集約された負の感情により魔力が変質していくから、直近500年で負の感情が生まれる出来事が多いと厄災魔獣は強くなるわ。そして特性や種族もその間の出来事に由来するわ。私とルヴェーザの場合はドラゴニュートの差別が発端となった竜精戦争の影響が大きいわね。戦争や差別で多くのドラゴニュートや竜種が亡くなった事で負の感情が多く集まり、竜種の肉体と竜種を強化する特性が出来上がったわ」


「なるほど…この500年の出来事といえば、亜人界を統一した際にあった亜人統一戦争と、今の魔人界による魔人大戦辺りか」


「厄災魔獣による被害もオプペティ・プククが暴れたから幾つもの都市で大きな被害に遭ったな」


「そうね、だからこの500年は私の時よりも負の感情が多いと思うわ。特性についてはわからないけど、現時点で私が感知している魔力量でもルヴェーザに匹敵する魔力量よ」


 ルヴェーザに匹敵…それだけで現れる厄災魔獣が恐ろしく強い事が理解できる。なにせルヴェーザ1人で大陸を分断出来るほどの力を持っているとされている。そんな厄災魔獣がもう1体出現するとなれば、下手をすれば人類が滅んでもおかしくない事態になる。


「準厄災魔獣は厄災魔獣から漏れ出た魔力によって形成されるから、基本的に個体数が増えれば1体の強さは弱くなるわ。現時点で感知してる個体数は3体ね。今の所、魔力量は私の3分の1から半分位かしら。アーくんの全盛期なら1人で1体相手出来るわよ」


「残念ながらもう全盛期はとっくに過ぎてるので、今の僕では一対一サシで戦うのはキツイですね。それを踏まえて、現状の無垢人界の戦力では2体までなら同時に処理できると思いますが、3体目も同時に出現するとかなり厳しいですね」


「これは由々しき事態だ。ルヴェーザ級ともなればまさに天災と同等だ。直ちに各国と共同戦線を敷かないと!それには緊急首脳会談が必要になる。至急各国へ通達を!」


 アスターの一声で魔人界以外の各国へ連絡が始まった。


「ヴァルネちゃん、準厄災魔獣が生まれるんはいつ頃なん?」


「ん〜具体的な日にちはわからないけど、出現直前になればそろそろって感知は出来ると思う。出現場所は準厄災魔獣の場合は負の感情が集まった場所になるから、1体は恐らく亜人界のチェルモンテね。あそこはオプペティ・プククの被害が大きかったし、決戦の場所でもあるし。統一戦争も亜人界の戦争だからもう1体も亜人界が濃厚ね。でも最後の1体はちょっと予測が難しいわね」


「事前にある程度分かるだけありがたいですな。ヴァルネ殿、失礼を承知で伺いたい。我々にとって厄災魔獣は人々に厄災をもたらす存在という認識なのですが、何故ヴァルネ殿やルヴェーザは人々を襲わないのですか?もし他の厄災魔獣も意思疎通が可能なら、戦わずに済む方法もあるのではと思ったのですが…」


「あ〜それね、私とルヴェーザは他の厄災魔獣や準厄災魔獣と違って、星の自浄作用だけでなく、星の守護者としての側面も付与されてるの。竜種や亜人系種族が戦争により多くの種族が絶滅の危機だと星が感じて、それらの生命を守るべく力を付与されたのが私とルヴェーザなの。だからルヴェーザはドラゴニュートに竜気珠ドラゴムートソウルを植え付け強化して差別に抗う為の力を与えたわ。私の方は一方的に虐殺されいた種族の保護や、人類とその他種族の共生を目的としてアプローチをしていたわ」


「星にも人のような意志があるのですか?」


 俺も星に意思があるなんて話は初耳だ。もし意思があるなら、俺がこの世界転生したのにも星の意思が介入しているのだろうか。


「ん〜意志…とまで呼べるかは微妙だけど、私達は星から明確な目的を与えられて現界してるのは確かよ。それを拒む事も出来ないわ。もし拒めば私達も他の厄災魔獣と同様に、悪意に満ちた厄災魔獣と化すでしょう」


「ヴァルネ殿とルヴェーザの成り立ちにそのような力が働いていたとは…」


「まぁ他の厄災魔獣もほとんどは高い知能を有していて会話自体は可能だけれど、負の感情から生まれているから根本的には悪意の強い存在よ。私達以外に現存する厄災魔獣や準厄災魔獣で、比較的まだ話が通じるのはエルードくらいかしら。まぁ彼も封印されてからは魔力を探知出来ないから今どうなってるかはわからないけど。あとは知能は低いけどアルバプチュは生活エリア内に入らなければ害はないわね」


「となるとやはり戦いは避けられぬか…」


「まぁ俺は元々そのつもりだったがな。オプペティ・プククの戦いではその悪意で多くの命が失われたからな」


 確かに。奴等は間違いなく悪意の塊だった。ふざけながら、躊躇いもなく、楽しそうに生命を刈り取っていた。


「でもそうなると少し矛盾してる気がします…。負の感情が星の中に溜まるのを避けるために厄災魔獣を生み出すなら、その厄災魔獣が負の感情を更に生み出していては悪循環でしかないですよね?」


「流石アーくん、良い所に気が付いたわね!そう、そのままだと悪循環してしまうから、その厄災魔獣への対抗手段として、星は必ず対となる存在や武具を生み出しているわ。それが星獣であり、星剣せいけん星鎧せいがいといった伝説として語られる武具よ」


「では、かの伝説の聖龍シュユールやその亡骸から現れたとされる聖剣シュユールは星獣と星剣となるのですね」


「その通りよ。他にも人類の文献には残ってないかもしれないけど、厄災魔獣出現時には必ず対となる何かが現れているわ。異世界からの転移者や転生者も対存在として現れる場合もあるわ。ちなみにアユーユ、あなたとユーノはオプペティ・プククに対抗すべく呼び出された存在よ」


 そんな気はしてた。竜人界で初めてオプペティ・プククと対峙したあの時から、俺の力は一気に強くなっていった。ユーノに出会ってからは俺の力も安定して使えるようになった。そして激闘の末、俺達は勝った。でも…そこにユーノの姿は……。

 戦いの後、俺の力は徐々に、少しずつだけど確実に弱くなっていった。今では全盛期の7割程度しか魔力も竜気もない。歳のせいかなって思ってたけど、今考えればドラゴニュートは長生きだからそんなに早く老化する筈はなかったんだ。本来の役目を終えたんだ。俺の力は。


「そうだったんですね…。色々…納得する所は多いです。僕が転生したのにちゃんと意味があって良かった。でも…そんな力があっても守れないもの…失ったものはあまりに多いです」


「お前は良くやったよ。やれるだけの事は間違いなくやった。それはあの最後の戦場にいた全員が理解している。誰ひとりとしてお前を責める奴はいないよ」


「ありがとう、アスター…」


「でもアユーユが対存在なら何故オプペティ・プククが出現したときにすぐ転生しなかったんですか?かなり時間空いてると思うのですが…」


「当初オプペティ・プククは他の厄災魔獣と比較すると脅威度は高くなかったの。だから初めに対存在として生まれたのはその脅威度に合わせた力を持った星獣で、100年程断続的に戦ってたけど、急にオプペティ・プククが姿を見せなくなったの。その間は星獣としての使命は一旦封印されて、黒紅竜ノークァーとして過ごしていたわ。オプペティ・プククが魔力を溜め込んでいるのに星が気付くまで時間がかかって、いざ再び現れ始めた時には星獣としての使命が再起動できなかったみたいね。理由はわからないけど」


「そうか、それで新たに対存在としてアユーユを転生召喚したのか!それにノークァーとも相性が抜群なのは同じ対存在同士だったからか!」


 そうだったのか…。ノークァーのやつ何も言ってなかったぞ。まぁノークァーの事だからきっと話すの面倒だとか忘れてたとかだろうけど。

 ノークァーの事は解ったけど、なら何故ユーノが必要だったんだ?


「…もしかしてユーノが転移召喚されたのは、僕の力が安定しなかったからですか?」


「ん〜詳しい理由は私にはわからないわ。私に分かるのは、星の意思が状況としてアーくんだけでは対応が難しいと判断したって事だけ。その結果、対応出来る存在として追加で転移召喚したのが『笑顔の勇者』ことユーノ・ユーイよ」


「なぜ星は自ら生み出すのではなく、僕やユーノのように転移や転生させるんですか?」


「厳密な星の意思は私にもわからないけど、私に読み取れる星の記憶から推察すると、生み出すより力を付与する方がより大きな力を発揮できる傾向はあるかも。過去にもそうやって対処した事があるみたい」


「そうですか…。でも僕やユーノが対存在だってことを何故今まで教えてくれなかったんですか?」


「それは対存在として義務で戦うのではなく、自分の意思で戦った方が遥かに強くなるからって理由と、周囲による不要な干渉を避けるためよ。強くなる為の試練や、使命を全うするのに利権絡みのゴタゴタなんかに巻き込まれたりしたら困るもの」


「それは確かにそうですな。それだけの力を持っていると知れば、それに群がる者も出てくるものだ。特にこちらの世界情勢を全く知らない者なら尚更だ」


 師匠の言う通りではある。実際、ユーノは転移してすぐ野盗に捕まり、奴隷として悪徳商人に売られていた。この世界の事を何も知らずに悪い人間に出会ってしまったら、自力で逃げるのはほぼ不可能だろう。もし力の使い方が分かったとしても、その価値が解らなければいいように使われる可能性も高いだろう。だが、そもそも勝手に召喚しといてその後のフォローがないのは酷い仕打ちだと思う。まぁそれを言っても星の意思が何をどうするとも思えないけど。


「少し気になったんだが、もしかしてその対存在って奴は今回も現界してるのか?」


「えぇ、もう召喚を終えているわ。どうやらまだ対存在として覚醒はしていないみたいだけどね。今どこにいるのかも大体わかるわ」


「それなら早いとこそいつを連れてきて戦力に加えた方がいいんじゃないか?」


「さっきも言ったけど、覚醒を迎える時までは不用意に接触はしないの。それに未覚醒のまま加わった所で戦力の大幅アップにはならないわ」


「覚醒ってどないやったらできるん?」


「申し訳ないけどそれに関しては私にもわからないわ。少なくとも厄災魔獣が世界を滅ぼす前には覚醒するでしょうけど…」


「なんだよ、星の意思って奴はなんでこんなガバガバな対応なんだよ!こっちは世界の命運かかってんだぞ!」


 ヴォーツさんの言う通りだ。凄い事してるわりに結構大雑把な対応だよな。


「私にそれを言われても困るんたけどね。なにせ明確な意識もなければ詳細な指示があるわけでもないのよ。私で言えば頭の中でゴールのイメージだけが浮かんできて、『こうなるように動いて』って言われる感じかな」


「それ、ほんまに大雑把な指示すぎひん?」


「ホントよね〜!……!?」


 ヴァル姉さんの雰囲気が急に変わった。


「ヴァル姉さん、どうかしました?」


「終結の大穴で高まってた魔力が固定化したわ。……悲壮…黒竜…ヤン…マート……ラウエル……。悲壮黒竜 ヤンマートラウエル!!1体目の準厄災、来るわよ!」


「悲壮黒竜ヤンマートラウエル…それが準厄災魔獣の名か。それで残り時間は?」


「あと20時間位かしら。でも正確に当てれるわけじゃないから数時間の誤差は出るわよ。もう少しすれば出現場所に移動するはずだから、分かり次第知らせるわ」


「了解、他に新たな情報はありますか?」


「残りの2体も魔力固定化の兆候があるから、数日中に現界するかも!」


「期間空かずに3体来そうですな。早急に部隊を編成せねば。アスター殿、準厄災魔獣…悲壮黒竜ヤンマートラウエルはミーレス連邦での出現の可能性が高いので、ミーレス陛下に直ちにご連絡をお願い致します。それと、大統領にミーレス連邦へ応援部隊の出撃申請を。同時に応援部隊の編成もお願い致します」


「承知しました」


「1体目の魔力量は想定通り私の3分の1程度よ!今のアーくんでもソロで討伐可能なレベルだと思うわ。ハンターで言うならAランク相当のパーティーが複数あれば大丈夫だと思う!」


「新たな情報、感謝致します。アユートアーラの部隊はすぐに出発出来るよう準備を!アユーユ、初戦は任せる!」


「承知しました!では一旦失礼致します」


 俺は通信を切るとすぐに指示を出した。


「総員、第2戦闘配置!準備でき次第ミーレス連邦へ向かう!カラァ、カレン、姐さん、部隊編成するからブリーフィングルームへ」


 悲壮黒竜ヤンマートラウエル…一体どんな相手なんだろうか…。


 俺達は部隊編成を考える為ブリーフィングルームへ移動した。





今回の登場人物



アスター・ミクロケファルス・V・オーヴァタス

 無垢人界の防衛大臣兼イノセンシア軍元帥、更に現役のハンターでもあり、主に要人警護や悪徳組織の撲滅を請け負っている。アユーユとはユーノを救出した時に共闘し、その後も時々共闘してきた戦友。厄災魔獣討伐時にはハンター部隊を率いて戦場から厄災魔獣を逃さないよう尽力した。正義のヒーローに憧れ、人助けを人生の生き甲斐にしている。


ヴォーツ・バェーイン

 ドラゴンナイツピャーチの元隊長。金色の髪とたてがみと髭が一体化している筋骨隆々の戦士。獅子型獣人レオニートとのハーフで、ドラゴニュートの高ステータスに獅子型獣人レオニート の高攻撃力が加わった稀有な存在。竜化すると髪の色が赤く変わり翼が生える。ハーフドラゴニュートは能力の劣る劣等種と見られがちだが、獅子型獣人レオニート とのハーフは他種族のハーフより圧倒的に身体能力値が高い。ハーフドラゴニュートの希望の星。オプペティ・プククと戦い右腕を失う重傷を負い、戦力になれないものは不要と軍を退役。その後は亜人界へ渡り、ミーレスに見出され軍の指揮を任される。第2次オプペティ・プクク討伐戦後はイノセンシアの日丸軍から人材育成を依頼され、日丸東道軍総大将として部隊の運用と人材育成を行なう。強面の顔に似合わず面倒見がよく人望も厚い。


ユリ・B・グランドチェリー

 日丸西阪軍の総大将。親が転移者で転移者2世にあたる。ボブヘアーに糸目で京都弁を話す怪しい女性。和服をベースにした艶やかな防具を着けている。戦略知略に長け、参謀として一太刀の元で実力を磨き、30歳の若さで総大将まで登り詰めたシゴデキ女子。戦闘スタイルは魔導師タイプで、水や氷を主としつつ毒や化学物質精製魔導等を用いて戦う。


深緑竜ヴァルトドラゴーネ

 準厄災魔獣級の星獣ミナト。コンクルサスの山岳地帯にあるモンスター群を治めるマザードラゴン。知的だが実はお茶目な一面もある。皆からはヴァルネやヴァル姉さんと呼ばれ親しまれている。その正体は竜種や亜人系種族が戦争により多くの種族が絶滅の危機だと星が感じて、それらの生命を守るべく力を付与された準厄災魔獣と星の守護者のハイブリット。竜種の肉体と竜種や亜人種を強化する特性を持つ。


ユーノ・ユウイ(勇伊 優希:ゆうい ゆうの)

 厄災魔獣を倒した5人の英雄がひとりで、日本から転移して来た大学生の女の子。人々を笑顔にし、自身も笑顔で人助けをする姿から『笑顔の勇者』と呼ばれていたが、命と引き換えに倒した事から後に『惜別の勇者』と呼ばれるようになった。



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