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Cycle of life ~ 生命を紡ぐ円環の惑星 ~  作者: 彩灯 哲
第3章 魔人大戦

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第23話 厄災の足音

前回の登場人物


アユーユ・アフート

 天災級の魔物である厄災魔獣を討伐した英雄の1人で実は転生者。半竜人ハーフドラゴニュートであり高い戦闘力を持つ。

 様々な功績と人当たりの良さから、ハンター協会直属対戦闘専門組織『アユートアーラ』の代表に任命される。


ルビアス・コンティ

 5人の子どもを育てるママさんハンター。魔導を(トライフォース)極めし者(マスター)と呼ばれる連続魔導の達人。魔導スクールを自宅で開き、カレンと共に優秀な魔導師を数多く育成する。

 今までの功績と西部拠点防衛戦の活躍によりアユートアーラの副代表に任命される。


カレン・R・シャクヤク(カレン・デュラ)

 白鳥型獣人スワイツ竜人ドラゴニュートとのハーフで、アユーユの魔導学校時代の幼馴染。ルビアスがハンターを休業したので自身も第一線からは退く。その後、魔導講師としてルビアスと共に魔導スクールを開校。結婚、妊娠、出産を経て子育てしながら魔導スクールの講師として働く。

 今までの功績と、アユーユ、ルビアスが連携を取り易い人物としてアユートアーラの副代表に抜擢される。


フィーゴ・アゴイステン

 戦艦の共同開発で技術者として派遣されたアゴイステン一族のひとり。フィアゴの弟。一族の中でも珍しい気弱な性格だが、アゴイステンでは魔導機開発の第一人者。知識が豊富で話し出すと止まらないピアと同じタイプ。フィファの兄的存在。戦艦では操舵を担当。


フィノーグ・アゴイステン

 戦艦の共同開発で技術者として派遣されたアゴイステン一族のひとり。フィアゴの妹。フィーゴと同じく魔導機開発の第一人者。気の強いしっかり者だがフィファには優しい。フィファの姉的存在。戦艦では通信系を担当。


アイリス・J・エンサタ

 無垢人界最強の虹彩の騎士がひとり。明るい茶色の髪に目鼻がスラッとして整った顔立ちで、身長も高く体型は筋肉質ではあるがスラッとしていて胸も大きい。鍔が銃になっている剣を2つ使い、炎系の魔導が得意で炎が紫色をしていることから紫炎の凛騎士と呼ばれている。


アシュラム・ロサ

 無垢人界最強の虹彩の騎士がひとりで橙煌とうこうの雷騎士。珍しい麒麟型獣人キリンシャと無垢人のハーフで、その種族特性により強靭な脚力を持つ。その若さでモンストルハンターのAランクに上り詰めた天才。白銀の髪に青のラインが入ったマッシュカットの髪に、鮮やかな青い眼が印象的で額に角がある幼さ残る青年。

 鮮やかな橙色をした電撃と磁力を操り、突撃槍で迅雷の如く敵を穿つ超速の騎士。相手を下に見る傾向が強いが、自身より強く面倒見の良いアユーユには懐いている。


カラァ・ヴァイオレット

 一昨年まで日丸島ひがんとう海上警備軍の大隊長だったが、若手の人材育成をする為に退役し、ハンターとしてフェアルドーレ港の海洋治安維持警備部隊の特別訓練講師として勤務している。ブロンドの髪に綺麗な紫色の眼、メリハリのある鼻筋と細身だが鍛えられた四肢。何よりも豊満な胸で巷でも噂になっている。若い時には数多の海洋魔獣を葬っており、『洋艶ようえんの魔女』と呼ばれている。カレンにスカウトされバハードゥルの艦長に抜擢される。





 フェアルドーレを出発してしばらくすると速度が最大戦速まで上がり安定飛行に入った。この艦の速度なら1時間弱くらいで到着出来るだろう。


「俺は招集したパーティーに作戦を伝えて来る。面通しするから姐さんも一緒に頼む」


「オッケー!」


 俺と姐さんはブリッジの上にあるブリーフィングルームへ向かった。


 ブリーフィングルームには常設戦力として招集していたメンバーも合わせると総勢40名以上のハンターが集まっている。


「緊急招集に応じて頂き感謝します。私がアユートアーラ代表のアユーユ・アフートです。こちらは副代表のルビアス・コンティです。今回の任務については依頼時にカレンから説明を受けていると思いますが、改めて作戦内容を伝えます」


 俺は部屋にある大型モニターに戦力図を出した。


終結テロスの大穴より数万のモンスターが京央沿岸に襲来。飛行モンスターが多く、京央の空中戦力と海洋戦力では対応し切れない為、我々は敵モンスター群に対して右側面から艦砲射撃を行い、モンスター数を減らしつつ前後にモンスター群を分断します。東道の部隊と京央の部隊で前方の敵を相手し、アユートアーラの部隊は後方の部隊を殲滅します。白兵戦力は敵分断時の両側面からの攻撃を防ぎ、その後、艦の後方へ反転して攻撃して来るモンスターの迎撃と、艦の射線から外れていて接近して来るモンスターへの攻撃が任務となります。何か質問がある人は挙手を」


 何人か手が上がっている。品のある顔立ちと口元の髭に英国紳士の様な服装の初老位の男性がネムレイドの族長であるルーゾ・ネムさん、かなり筋肉質な体に白髪まじりのオールバックがクンペル・エッソールというハンターチームのアジュガ・キランソー、緑の髪にハイポニーテールで露出の多い装備をしているのがメーアというパーティーのマリン・イソムラさんだ。


「ではまずルーゾさんからどうぞ」


「ネムレイドのリーダーをやっておりますルーゾ・ネムと申します。以後お見知りおきを。僭越ながら、数万のモンスターに対しての救援がたったの40名程度では戦況は変わらないのではないでしょうか?」


「そうそう!いくらここにいるメンツが高ランクハンターでも、流石に万の敵を相手にこの人数は流石にキツくない?」


 そう同調したのはイソムラさんだ。


「そんな事がわからないアユーユじゃないよな。何か策があるんだろ?」


 フォローしてくれたのはアジュガだった。こいつは俺がモンストルライダーの訓練を受けている時に一緒に訓練していた奴で、気の合う連中で今でも合同クエストなんかで会うと帰りには一緒に飯を食う仲だ。


「もちろん。まずこの艦の性能をちゃんと話していないからな。この艦は試作型の戦艦で最新鋭の装備を幾つも積んでいる。主砲は荷電粒子魔導砲という長距離射撃武器でその威力はこの前の西部拠点防衛戦でルビアスが放ったものと同等以上のものになっている。向きを変えながら撃てば範囲攻撃としても使える代物だ。他にも可動式超電磁魔導砲、可動式ガトリング砲、属性変更型魔導砲など対多数の兵装が装備されている。実際の戦闘ではこの艦砲射撃で倒しそびれたモンスターを倒していく事になる」


 この艦の性能を聞いて皆ざわついている。そりゃそうだ。この艦があれば西部拠点防衛戦クラスの相手でも一網打尽にできる位の戦力だ。俺も今までこんな凄い戦艦は見たこと来ない。


「確かにそれだけの装備があれば対多数の戦闘において絶大な力になるな」


「ちゃんと運用できればだけどね。私達も含めてだけどこんな凄いのを用いた大規模戦闘なんてやった事ないし、この艦だってまだ試作型なんでしょ?それに組織としてもできたばかりで練度も低いんじゃない?」


「仰る通り。練度はまだ低いし戦艦も試作型で予測出来ない事象もあるかもしれない。でもね、それでもやるしかないんだよ。実際問題、今から増援を派遣しても到着する頃には京央は相当の被害が出るだろう。西部拠点防衛戦で大きな被害を出した事で迅速に動ける援軍戦力が早急に必要だと認識して、次はそうさせない為に俺達が結成されて、この艦を任されているんだ」


 皆が静まり返る。自分達が招集された意味と、自分達の肩に多くの命がかかっている責任を理解したのだろう。


「戦えないなら京央で艦を降りるといい。ただ、俺はこの戦力でも十分に戦えると思ってるよ。だってそうだろ?俺達はハンターとして上位ランクまで至った歴戦の猛者ばかりだ。そいつらが集まってるのに数だけのモンスターごときに何を恐れる必要がある?」


 みんな頷いて自信に満ち溢れた良い顔をしている。


「ここにいるのは厄災魔獣を倒した英雄の俺と、数多の戦いを生き抜いた歴戦の猛者だ!何があっても生き抜いて京央の人命を守るぞ!」


「「「「「「「「「「オォォォォォ!!!!」」」」」」」」」」


「部隊配置については京央のハンターと合流してから連絡する。これでブリーフィングを終了する。作戦開始時間まではまだ少しあるから、開始時間まで各自準備をして待機」


「「「「「「「「「「了」」」」」」」」」」


 ブリーフィングが終わるとアイリスとアシュが話しかけてきた。


「流石アユーユ様、皆の士気が高まりましたね」


「先生まじカッコいい!」


「改めて言われると恥ずかしいからやめてくれ」


 士気を上げるためとはいえ柄にもなくエラそうな事を言ってしまった。ちょっと恥ずかしい。


「俺はブリッジに戻って部隊配置を仕上げてくる。2人もすぐに出撃できるよう準備していてくれ」


 そう言って俺と姐さんはブリッジへ戻った。


「大分士気は高まったみたいね。流石英雄」


「カレンまでやめてくれ。あまりこういうのは得意じゃないんだ。本当は2番手3番手位のポジションで補佐する方が性に合ってる」


 厄災魔獣と戦ってたあの頃…あいつらのフォローで大変だったけど、1番自分らしくいられたな…。もっと俺が強ければ…頑張れたら…あいつは死ななくて済んだのかな…。


 いかんいかん。しっかり切り替えていかないと。


 フェアルドーレから京央まで約600km。最大戦速なら30 分かからずに到着出来る。この間に白兵戦力の配置を決めておかないとだな。


「姐さん、カレン、カラァ、白兵戦力の配置について相談したいから少しいい?」


 俺達はそれぞれのパーティー戦力を踏まえて配置を検討した。空中戦力と海洋戦力をそれぞれ均等に、分断後は後方は挟み撃ちになるから戦力は抑える等、意見を出し合いつつ決めた。


 そうこうしているうちにもう日丸島は見えてきて京央の港に到着した。


 京央の港ではイノセンシア軍が出撃の準備をしていた。俺達は通信で京央イノセンシア軍の総大将に戦況を聞いた。


「久しぶりだなアユーユ」


「ご無沙汰してます、師匠」


「うむ、元気そうでなによりだ。そちらの方々は?」


「副代表のルビアスとカレン、艦長のカラァです。作戦立案の為、同席させていただきたいのですがよろしいでしょうか?」


「もちろん構わんよ。私は日丸京央軍総大将を務めている一太刀いのたちじんだ。よろしく頼む」


 この人は厄災魔獣に俺達が一度敗れた時、武術を習わず我流だった俺に十文字槍を用いた槍術と刀を使った剣術を叩きこんだ師匠だ。居合の達人でモンスター100体を抜刀の一撃で真っ二つにしたことから『一刃斎』の名で世界的にも有名だ。


「「「よろしくお願い致します」」」


「戦況はどうなっていますか?」


「芳しくないな。1体ずつは大した事ないが数が違い過ぎる。それに相手は空中戦が主で、こちらは空中戦の練度が高くない上に飛行魔導や飛行魔導機も使える者が少ない。だが妙なことにそれほど損害は多くないのだ」


「どういう事ですか?」


「現場からの情報ではモンスターは攻撃を仕掛けると反撃をしてくるが、攻撃しなければ無視して通過をしていくらしい。モンスター全体が一直線に京央の方角を目指して進んでいるように見えると話していた。攻撃しなければ反撃されないので、被害は思ったほど出ていないが、反面倒さなければどんどん進んでいき、既に日丸島中央にある富大山ふだいさんの近くまで飛来している」


「大分変わった動き方をしてるわね…。どこか目的地があるのかしら」


「何とも言えないな。でも相手から先手を打たれないなら戦いようはある」


「何か策があるのか?」


「はい。前線の部隊に共有していただきたいのですが、攻撃のタイミングは揃えて一斉に遠距離射撃。確実に初撃で落とすようにします。配置は3段撃ち。10〜100人程度を横並び1組として3列組んで一斉に攻撃。もし1組目が外して狙われるとしても、2列目3列目が追撃で落とす。そうすれば反撃を受けずに倒せ、対象にならなかったモンスターは攻撃してこないので次の列が狙う。これなら戦力を減らさずに迎撃できると思うのですがいかがでしょう?」


「良さそうな案だが流石に数が多過ぎないか?終わりが見えないと士気も徐々に下がりいつか突破される」


「そこで私達の出番です。私達は右側面から攻撃を仕掛けて前進せずに停止、艦砲射撃で直線上に攻撃をします。前線からすると横一列の敵を大幅に削る事になるので、一度に来る数がガクッと減る事になります。そうすれば後衛部隊の負担も軽くなります。その間に別働隊がモンスターの最後尾、または出現地を特定をします。そして可能な限りそこで敵を減らし、戦闘継続が難しくなれば一度帰還し別の部隊で再度攻撃という流れです」


「確かにそれならば全体の損耗率を抑えつつ迎撃を続けられますね。しかし、最後尾までの距離や敵の総数は把握しきれていませんがそこはどうなさるのですか?」


「こればかりは行ってみないとわからない。だから最後尾の確認と殲滅は最高戦力で行いたい。俺とアシュ、アイリス、それと万破戦刃まんばせんじんで行く。姐さんは艦に残って万が一に備えて欲しい」


「残りのパーティーは艦の護衛って感じ?」


「基本はそうだけど、最後尾を仕留め切れない場合や不測の事態に備えてもう1部隊空中戦力の高い部隊には艦に残ってもらいたい。もしかしたら俺達と入れ替わりで最後尾の殲滅に向かってもらうかもしれないからな」


「それなら天狗風てんぐかぜ雪月風花せつげつふうかがいいと思うわ。天狗風は空中戦が得意でかなり素早く攻撃力も高くて、雪月風花は4人で大魔法を撃てるから広範囲の殲滅に向いているわ」


「京央で合流した2組ね!大魔法撃てるならはあたしとの相性も良さそうね」


「こちらにはもう余力がなく戦力を送り出すのは難しい。申し訳ないがアユーユに任せる」


「承知致しました。よし、作戦を各員に通達。魔力タンクの補充が終わり次第前線へ向かう。俺は敵最後尾へ向かうから前線到着後の指揮はカレンとカラァに任せる」


「「「了!」」」


 俺はブリッジを出て出撃の準備をしにウェイティングルームへ向かった。

 ウェイティングルームには既に招集されたハンター達が出撃準備をして待機していた。特に自己紹介の場は設けなかったけど、このクラスのハンターはある程度名の知れてる奴らも多いから知っていたり、必要な交流は自分達で行なっていた。


「アユーユ様!」


「なんだいアイリス」


「この戦いではご一緒させていただけるんですね!またアユーユ様と一緒にパーティーを組めて嬉しいです!」


「前は他の虹彩の騎士と共同作戦の時だったね。今回もよろしくね。アイリスには俺の広範囲攻撃の間に邪魔が入らないよう守って欲しい。頼めるかな?」


「もちろんです!命に代えてもお守りします!」


「いや、命に代えなくてもいいからね。無理はしないでくれ」


 アイリスと話していたら万破戦刃の面々がやってきた。


「この度は戦場にご一緒させていただき光栄です。我ら万破戦刃、身命を賭して戦わせていただきます!」


 そう言って4人とも片膝をついて頭を下げている。彼等はかつて戦国時代の日本から転移して来た戦国武将の末裔で結成されたパーティーの分家。高い魔導適性と洗練された武術が持ち味で、本家の万破戦刃は数百年前より代替わりをして受け継がれているAランクパーティーだ。いずれは彼等が代を受け継いで行くことになる。


「やれやれ。そう簡単に命をかけないでくれ。いいかい、大事なのはまず生き残る事だ。生きてさえいれば挽回のチャンスはある。命を賭けるにしても時と場合を選びなさい。君達はいずれ本家の万破戦刃を継ぐんだろ?今回の戦いは戦艦の力と俺達の戦いで大きく流れが変わるのは間違いないが、後が全く無いわけじゃない。交代できる人員もある。だから無理し過ぎず、いかに継戦しつつ状況を打破するかがポイントだ」


「我々の未来の事まで案じて頂けるとは…。このしま礼恩れおん、アユーユ様のお役に立てるよう全力を尽くし、必ず生き抜いてみせます!」


「うん、よろしく頼む」


 そう言って万破戦刃の面々は再び準備に戻っていった。


 さて、俺も手持ちアイテムの確認して補充しとかなきゃ。魔力回復用魔石や水中戦用の酸素供給魔導石は必ず持たないとな。それともうすぐ戦艦の補給も終わるからもうノークァーを呼んどくか。


「ノークァー!」


 俺が名を呼ぶと、俺の前に光が集まり一瞬で紅をベースに黒の稲妻模様の金属竜、相棒のノークァーが現れた。


《呼ばれて飛び出てなんとやら〜!》


「いつの時代のギャグだよ」


《出撃前のピリピリした空気を和ませようと思ったんだけどダメだったか》


「いらんことはせんでえぇ!」


《キレのあるツッコミありがとう》


「今回は魔力も十分、竜気も満タン!久々にフル装備の全力で行くぞ」


《そこまでしなきゃいけない程かなぁ?》


「皆に安心感を与えるためと、今後また頼ってもらえるようにアユートアーラが機能しているってことをアピールしとかないとな」


《代表様は大変だね〜。オレは戦うだけで考えなくていいから良かった〜》


「お前にも仕事ふってあげようか?」


《遠慮しときます〜》


「さて、コントしてる場合じゃない、さっさと準備してブリッジに戻ろう」


 俺は魔力回復用の魔導石や傷の応急処置に使う治療系の術式が刻んである魔導石、水中戦用のマスク型魔導機を準備し、ノークァーを装備するとき用の全身インナーに着替えた。このインナーには繊維に魔導石の粉末が混ぜ込んであって、ノークァーとの魔力伝達速度を向上させる役割がある。


 準備が終わってブリッジに戻るとちょうど補給が終わったところだった。


「アユーユ様、補給が終了しました!いつでも出れます!」


「よし、それじゃあ出撃だ。アユートアーラの初陣を勝利で飾ろう!」


 俺が目線を送るとカラァは頷き号令をかけた。


「目標、終結テロスの大穴、バハードゥル、発進!」


 号令と共に艦は動き出し、少しして空中へ浮き始めた。港から離れて終結テロスの大穴の方に艦首を向けると、


「機関最大、属性変動型防御魔導ヴァリアブルエレメントシールドウィンド展開、総員加速に備えよ」


 一気に出力を上げ加速していく。最前線までは約40分だ。途中、富大山ふだいさんを越えた辺りからモンスターが少しずつ飛来しているのが見えた。進むにつれてどんどん数が増えていき、最前線の海岸沿いまで来ると凄まじい数のモンスターが見えた。


「物凄い数ね…。モンスターの種類は…ワイバーン、ロックバード、グリフォン、コカトリスまでいるわね。海の方は…鮫型とテンタクルス型、オクトパス型の魔物がほとんどだわ」


「所定ポイントまで後5分です!」


「本艦は間もなく射撃ポイントに到着する。総員第1戦闘配置。到着次第白兵部隊は出撃。出撃確認後に艦砲射撃を開始する。荷電粒子魔導砲ルビアスカノンチャージ開始、可動式超電磁魔導砲アルゲーススタンバイ、可動式ガトリング砲(アンフル)自動オート属性変更型魔導砲カトゥリクスフレアを選択、対空防御ミサイル(ベラス)は飛行モンスターに限定」


 カラァはもう完璧に艦のことを把握している。流石だな。これなら艦も安心だ。


「俺も出撃準備に入る。皆、後は頼む」


「アユーユ様、ご武運を」


「久々に全力出して暴れといで」


「気をつけてね」


 俺はブリッジを後にしてウェイティングルームへ。

 ウェイティングルームでは、既に出撃準備を終えたハンター達が出撃の合図を待っていた。


「もうすぐ出撃だ。生き抜く覚悟は出来ているか?」


「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」


 ハンター達の猛々しい声が響く。


「誰ひとり欠くことは許さない。必ず全員生還しろ。活路は必ず開ける…いや、俺達で開く!!」


「ポイントに到着しました。白兵部隊、出撃お願いします!」


 通信が終わると甲板へ続く扉が開いた。


「アルマーレ!」


 俺の掛け声に反応してノークァーが防具として装着される。


《さぁ、久々の全力を楽しもうじゃないか!》


「アユートアーラ、出撃!」


 俺を先頭に各隊が次々と甲板に出て戦場に飛び立って行く。


「白兵部隊、出撃完了しました!」


「よし!艦砲射撃を開始する!目標、モンスター群、ぇぇぇぇ!!」


 カラァの号令で艦砲射撃が始まった。荷電粒子魔導砲ルビアスカノンの一撃は射線上のモンスターの群れを綺麗に一掃していた。その他の射撃で次々と現れるモンスターをどんどん撃墜していく。


「凄まじい威力だな…これが新造戦艦の力か…。我々も負けてはおれん。全兵士に告ぐ、アユートアーラの戦艦が到着した!ここから巻き返すぞ!全軍隊列切り替え!」


 俺達の動きを見て師匠が率いる京央軍が作戦通り隊列を変える。そして、更に日丸の東側にある街の東道からも援軍が到着し一気に戦況が変わった。


荷電粒子魔導砲ルビアスカノン再充填リチャージ!白兵部隊は決して射線に入るな!艦に近い敵だけを処理せよ!」


 俺とアイリス、アシュ、万破戦刃は群れの最後尾を目指して飛行しているが、群れのすぐ横を通過しても全く攻撃を受けない。


「こいつらは一体何が目的なんだろう。こんなに近くを通ってるのに全く見向きもしない」


 明らかに異質な様子にアシュは驚きを隠せずにいた。


「今わかる情報では何とも言えないな。それも最後尾まで行けば何かわかるかもしれないな」


 この凶星獣ジャミナの群れはどうやって生まれたのか。明らかに数が多過ぎる。凶星獣は自然発生するものではあるが、本来その数は決して多くはない。しかし、西部拠点防衛戦の時とも違い、魔人界の人間もおらず、現れた方角も魔人界から遠くわざわざそこから攻める利点も無い。


「何にせよ、今は最後尾の状況確認だ」


 俺達は群れの最後尾を目指して5分程飛び続けた。遠くに見えた終結テロスの大穴もかなり近くになり、その大きさに皆は驚いていた。数十キロにも及ぶ大穴。地面が崩れ落ち、穴が深過ぎて底が見えず、光も届かないのでまさに漆黒。


「これが終結テロスの大穴…実際に見ると想像以上に圧倒されるな…」


 そして、俺達が遡ってきたモンスターの群れはこの大穴から出て来ていた。


「こちらアユーユ、出現ポイントが確認出来た。終結テロスの大穴から次々と出て来ている。つまりこれは魔人界からの侵略ではなく、星の働きによる災害だ」


「災害…もしかすると…」


 カレンが何かを調べているようだ。


「とりあえず俺が何度か大技を使ってある程度のモンスターを一掃してみる。もしかしたら何か変化が起きるかもしれないからな」


 俺が移動しようとするとカレンが制止した。


「アユーユ、少し待って!もしかしたら原因わかるかも」


 そう言ってもう少し調べると、


「国が運営する歴史や考古学のデータベースを検索して、前に友達の考古学者から聞いた厄災魔獣の出自に関わる資料に辿り着いたわ。その資料には終結テロスの大穴から次々とモンスターが現れる現象が以前にもあった事が記録されていて、その文献の記録は3500年。厄災双人オプペティ・プククが現れる前年よ。それには今回と同様に終結テロスの大穴から次々とモンスターが現れユグドラシル目掛けて進んだそうよ。半日ほど出続けた後は一旦静まり、数日後に準厄災魔獣級のモンスターが数体出現。そして最後には厄災魔獣が出現したと記録されているわ」


「厄災魔獣だと…」


「前回はこちらとは反対側にモンスターが進軍したから、イノセンシアの歴史には残らなかったのかもしれないわね。この文献は元々竜人界ドラガニアにあった物を複製して日丸で保管したみたい。当時は既に竜人界は厄災冥竜ルヴェーザの支配化だったから、ルヴェーザが撃退していたのかも」


「つまり、今のこの現象は厄災魔獣出現の兆候で、このモンスター群はもうしばらくすれば治まって、その後に準厄災魔獣級が数体と、いずれ新たな厄災魔獣が出現するって事なんだな」


「この資料の通りならその可能性は極めて高いと思う」


「モンスターの発生が静まるもう少し正確な時間の割り出しと、そこから準厄災魔獣級が出現する迄の時間、さらにそこから厄災魔獣出現までの時間を予測出来ないか?」


「この文献の言葉通りなら、モンスターの出現はあと数時間で終わると思うわ。その後はもう少し文献を調べてみないと何とも…。でも、現存する歴史書の中では厄災魔獣は例外なく500年に1度の出現だから、どんなに早くても来年の1月1日のはずよ」


 今はもう10月の第4週。あと約2ヶ月で厄災魔獣の出現か…。魔人界との戦争が始まったせいで厄災魔獣の出現時期が近い事をほとんどの人が忘れているんだな。昨年は厄災魔獣襲来に向けて対策を練ってたんたがな。


「カレンはモンスターの群れがあと数時間で終わる見込みだと各員に連絡。それと、準厄災魔獣級の出現タイミングについて引き続き情報を集めてくれ」


「了」


「皆、聞いての通りだけど、あと数時間でモンスターの発生は一旦止まるらしい。その数時間の間、最後尾を倒し続ければこれ以上モンスターは増えていかないから、全力で掃討していくぞ。俺は中央で大技で広範囲を削るから、皆は極力俺への攻撃を防ぎつつ、残ったモンスターを討伐してくれ」


「「「「「「了!」」」」」」


 俺は集中して竜気と魔力を高めていくと、身体がどんどん竜に近い姿に変わっていきドラゴニュートへ変身した。


「俺に続け!!!」


 高めた竜気のバリアでモンスターを弾き飛ばしながら群れの中央まで進み、他のメンバーは少し離れて俺を守るよう扇状に配置。それぞれ高位の防御魔導の展開準備をし、俺はそこで大技を放つ。


「篝火を高らかに燃やし、白く輝く凍えた想いも痛みも、残酷な夜空に輝け!双龍爆輝ユガドラゴ・ルクスファトナー!!」


 俺の右手からは竜気が変化した灼熱の龍が、左手からは氷結の龍を放ち数百メートルを囲む様に円を描いて回り始めた。皆はすかさず準備していた防御魔導を展開して俺を含めて何重もの防御魔導を重ね掛けした。

 龍達が通った場所はモンスターが凍ったり燃えたりし、次第に中央に渦巻いていく。そして中央で2頭の龍がぶつかると閃光と共に物凄い大爆発が起き、数キロ範囲のモンスターが一瞬で消し飛んだ。


 俺達も爆風の圏内にいたが幾重にもかけた防御魔導で無事やり過ごせた。


「凄まじい威力ですね…。これが厄災魔獣を倒した英雄…アユーユ殿の本気の一撃…。本家の万破戦刃でもこんな事は到底無理ですよ…」


「こんなデタラメな威力の攻撃が出来る人なんてそうそういませんよね」


「あんなに皆で防御魔導出したのに耳がキーンってするよ〜」


 相当数のモンスターを吹き飛ばしたが、大穴からはまだモンスターが出続けている。


「ここからは個々に分かれて新たに出て来たモンスターを殲滅していく。あと数時間は出続けるからあまり無理せず、交代も視野に入れながら効率良く倒していくぞ!」


「「「「「「「了!」」」」」」」


 皆は勢い良く散っていき、それぞれモンスターを倒し始める。


「アユーユ様に頼りきりでは虹彩の騎士の名が泣きます。私達も行くわよ!アシュ!」


 アイリスは銃剣から弾丸を撃ちながら詠唱を始める。


「冷たい炎が今花開く。焼きほどけ紫炎の劫華!奥義!炎鎖麗華葬えんされいかそう!」


 魔導で作られ編み込んだ炎の鎖が花開く様に勢いよく解け、その反動で周囲の敵を焼き斬り裂く。本来は複数人での連携技かつ本物の鎖を使う鎖霧流炎鎖術さぎりりゅうえんさじゅつの奥義の1つだが、アイリスは捕縛魔導で応用して1人でも放てるようにした技だ。


「オイラだって先生にいいとこ見せなきゃだぜ!」


 アシュは盾を突撃槍と合体させて突き出し詠唱を始める。


「我が願いを乗せ離れゆけ!更にその先へ!超電磁突撃槍(エマル)!」


 自身に磁力を纏い、それを別の磁力で挟んで射出するアシュの必殺技は、轟雷の如き超速でモンスターを次々と貫いていく。レールガンの弾丸に自分自身を使う発想は普通しない。だがアシュの稀有な特異体質がそれを可能にしている。


「俺達も遅れを取るなよ!陣形技で行くぞ!」


 4人は礼恩を先頭に矢のような隊列を組み詠唱を始めた。


「我ら纏うは怒りの業火、猛々しく、荒々しく、全てを滅却し天を舞う!」


 すると、4人は鳳凰の様な魔導の炎で覆われていく。


「行くぞ!鳳凰天舞陣・紅蓮!」


 4人はそのままモンスター群の中を突き進んでいき、鳳凰に当たったモンスターは一瞬で黒焦げになり次々と弾き飛ばされていった。


 初撃は必ずこちらが取れる事もあり、苦戦することも無く皆もどんどんモンスターを落としていく。俺も中央付近で出てくるモンスターを片っ端から十文字槍で斬り落としていった。


 大穴からは大体毎分数百匹程度のモンスターが出現していたが、俺の大技以降は少しペースが落ちた様に見える。そして20分程戦っていると通信が入った。


「艦付近の敵がかなり減少してきました。京央の軍隊も善戦しており、かなり戦線が上がってきています!」


「よし!もうひと踏ん張りだ!このまま押し返して戦線を終結テロスの大穴付近まで押し上げるぞ!」


 その後もアユートアーラの各部隊、京央軍、東道軍共に善戦し、1時間後には俺達より後ろの敵は全て掃討し、京央と東道の戦力が終結テロスの大穴付近まで来た。


「ここまでくればもう戦艦の砲撃と軍の白兵だけで大丈夫だろう。白兵部隊は全員一度戦艦へ帰還せよ」


 そう告げて俺達も戦艦へ帰還した。


 俺達が帰還して10分ほど経つと、モンスターの出現も無くなり、辺りはモンスター出現前の静けさを取り戻していた。


「カレンの予測通りだったな」


「予測が当たって良かったけど、この後準厄災魔獣クラスが出現するのも可能性が高まったわけだから何とも言えないわね」


「そうよね〜。まぁ今出てもまだあたしを含め予備戦力もあるから対処は可能だけどね」


 姐さんは今回は予備戦力だから出撃出来ず力があり余ってるようだ。


「とは言え準厄災魔獣クラスになると流石に簡単には勝てないでしょうから、次の出現までに戦力を整える必要があると思うわ」


「カラァの言う通りだ。カレン、次に準厄災魔獣が現れるタイミングは予測出来ないのか?」


「中々難しいわね…。なにせ500年単位での出現だし、毎回無垢人界に来るわけではないから資料が少ないのよね…」


 災害と同じで現れると被害が大きく、資料も紛失してしまうこともあるだろうしな。


「でも、今回招集した中には研究職の人もいるから、話を聞いてみましょう。なにか気付く事があるかもしれない」


「よし、とりあえず今回の作戦はここまでだ。一旦引き上げて補給をしよう。補給後はいつでも出られるよう準備をしておいてくれ。カレンは何か分かり次第連絡を頼む。フィノ、師匠と東道軍にも作戦終了の連絡を頼む」


 こうして俺達の初任務は無事終了した。でもまだ完全に終わったわけじゃない。次の準厄災魔獣クラス出現がいつになるかわからない以上、しばらくは京央に滞在して有事に備えなければ。


 新たな厄災魔獣が出現するまで早くて約2ヶ月。それまでに魔人界との戦争も決着をつけたい所だ。ユート達は大丈夫だろうか。


 そんな事を考えつつ、俺達は京央へ戻った。





今回の登場人物


ルーゾ・ネム

 ネム一族の次期族長。品のある顔立ちと口元の髭に英国紳士の様な服装の初老位の男性。ディアラ魔導スクールに子ども達を通わせていた事で、ルビアスからアユートアーラにスカウトされる。


アジュガ・キランソー

 かなり筋肉質な体に白髪まじりのオールバック。アシュラムと顔見知りで、アユーユとはモンストルライダーの訓練を一緒に受けた仲間。


マリン・イソムラ

 緑の髪にハイポニーテールで露出の多い装備をしている。転移者3世で日丸出身。海が関係する分野の知識は超一流で世界的にも有名な学者。魔導の知識も豊富で自らフィールドワークをする事を欠かさない。


一太刀いのたち じん

 日丸の軍隊を統べる総大将。居合の達人でモンスター100体を抜刀の一撃で真っ二つにした豪将。『一刃斎』の名で有名。アユーユの武術の師匠で、厄災魔獣に一度敗れたアユーユに十文字槍を用いた槍術と刀を使った剣術を叩きこんだ。


島 礼恩れおん

 関ヶ原の戦いから逃げ延びた先で池に落ち、ミナトーマに転移された島左近の末裔。転移者の一族なので高い魔導適性があり、文武両道で非常に優秀。義に厚く、英雄であるアユーユに憧れを抱く。万破戦刃まんばせんじんー烈ーという戦国武将の末裔で結成されたパーティーのリーダー。高い魔導適性と洗練された武術が持ち味で、本家の万破戦刃は数百年前より代替わりをして受け継がれているAランクパーティー。


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