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Cycle of life ~ 生命を紡ぐ円環の惑星 ~  作者: 彩灯 哲
第1章 異世界生活開始
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第1話 異世界転移と転生者

 


「う…うぅ~ん」


 俺は太陽の眩しさで目が覚めた。

 目を開けると見覚えのない天井。

 体を起こして辺りを見回すとそこは病室の様だった。


 なんだ、今までの冒険は夢だったのか。

 窓から外の景色が見えたので見てみると、そこには現実にはあり得ないはずの犬や猫の様な毛がある人間がいた。ゲームなどでもよくいる獣人というやつだ。他にもドワーフっぽいのとかもいる。


 どうやらゴブリン達と戦ったのは夢ではなさそうだなぁ…


 そんなことを考えていたら病室に入って来る人の声が聞こえた。

 部屋を区切っているカーテンの隙間から様子を伺うと、看護師の様な獣人と白衣を着た獣人がベッドで寝ている患者の獣人と話をしていた。どうやら回診に来たみたいだ。


 聞き耳を立てると、医者の方は日本語を話しているように聞こえた。でも患者の方は何言っているかさっぱりわからない。

 この部屋にはもう一人患者がいて、そっちの回診が終るとこちらに近づいてきたので慌ててベッドに戻る。あたふたしている内にカーテンの前で足音が止まった。


「失礼しまーす」


 挨拶と共にカーテンが開くと、医者の方はボブっぽい感じの髪型で人間の顔だけど、茶色い毛の生えた耳が頭の上から生えている。


「こんにちは、大丈夫?言葉伝わってるかな?」


 さっきもそうだったけど日本語で話しかけている。


「あ、はぁい!言葉分かります!」


 俺は動揺して声が高くなって変な感じの返答をしてしまった。恥ずかしい!


「良かった。やっぱり彼の見立ては正しかったようだね。君は異世界人でしょ?それも日本って国から来た」


「はい…そうです」


 俺の事情を把握している事に更に驚いた。


「寝ている間に色々検査させてもらったけど、身体的にはどこも異常はなかったよ。背中の打撲や全身の擦り傷なんかはあったけど、軽い回復魔導で治るものだったから治しておいたよ」


「回復魔導!?」


 驚いて思わず声に出してしまった。


「あぁ〜君の世界ではないんだっけ!でも、君の世界の漫画やゲームで似たようなの見たことはあるんじゃないかな?多分効果は大体一緒だと思うから、今は説明を省かせてもらうよ」


 確かにRPGで回復魔法がないものなんてほぼ見ないくらい色んな回復魔法を見たしゲームで何度も使ったな。


「もう返してそこの棚に置いてあるけど、持ち物を見させてもらったよ。君の名前は越智優仁(おち ゆうと)くんで間違いないかな?」


「はい…」


 財布に免許証あったしな。日本語も読めてるってことか。


「異世界転移して大変だったでしょ~!あ、私は異世界研究所所長兼この病院の院長をやっている美人女医、ピア・クロームよ☆」


「…………」


 目元にピースの決めポーズ付き自己紹介で呆気に取られていたけど話は続く。


「君が川に流されていたのをたまたま演習で近くを通っていた私の友人が見つけて、この病院に連れて来たんだよねー。そいつから君が恐らく異世界転移者で日本って国から来てるって聞いててさ」


 あーなるほど、だから最初から日本語で…ってそんな都合よく日本語話せるもんか?


「あ、なんで言葉が通じてるか不思議に思ってる感じかな~?簡単に説明すると、この魔導石の力でこの国の言葉を君の国の言葉に変換して話してるのさ!凄いでしょ!これは私が開発した術式で、この世界に転移してきた人達の言語を分析して、それぞれの言葉に翻訳できるよう調整したのさ!まぁ君の腕輪で翻訳できるのは翻訳の魔導石を持つ者同士に限定されるんだけどね~。話せないと困るから君が眠っている間に腕につけさせてもらったよ」


 不思議に思ったの見透かされた!?

 周りの状況に気を向け過ぎて腕輪をしていることに気が付かなかった。左手首を見ると腕時計位のサイズで腕輪がされていて、表面には紫色の宝石が付けられている。


「これはスマートリングって言って、君の世界で言うところのスマートフォンみたいなものかな。ちなみにもっと高性能な物にすれば腕輪を着けていない人の言葉も変換出来るようになるよ。まぁそれなりに高価なものになるからそこそこ稼ぎがないと手に入らない代物だけどね。私のだと他にも色々機能があって、遠距離での通信やデータの収集・蓄積、情報の解析、さらに魔導力測定器もついてる。ちなみに翻訳の術式は私が開発したもので、鼓膜で感じた音の振動を知っている言葉に変換して電気信号として脳に流す優れモノなんだよ!!この技術は君の様な異世界人から得られた情報を分析してできているのさ!!他にもまだ機能があって…」


「そこら辺にしておきなよ。ただでさえ異世界転移で混乱してるのに頭の中パンクしちゃうよ」


 そう言って男性が病室に入ってきた。


「おぉっといけない!ついつい話し過ぎちゃった。随分早いね、もう仕事は終わったのかい?」


「あぁ、ギルドへ報告したら、久々の転移者だし、同郷だろうから丁重におもてなしして来いだってさ」


「そーいえば、アユーユは日本出身なんだっけ!」


「この世界に来たのはもう30年以上も前だけどな。君…ユートくんだったかな?無事そうで何より。戦って出来たような痣とかがあったから心配したよ。あ、自己紹介がまだだったね。俺の名前はアユーユ・アフート、よろしくね!」


 クローム先生に凄い勢いで喋られて呆気に取られてたから助かった。

 赤髪短髪で結構がっちりした体格だな。服は動きやすそうで鎧を着ている。顔立ちは目鼻がはっきりしてて、彫りも深くてヨーロッパ系っぽいかな?でもこの人日本人なの!?見かけが全然日本人に見えないなー。

 不思議に思った俺は質問してみた。


「あの〜、アフートさん日本人なんですか?外見が全然日本人っぽくないように見えるのはどうしてなんですか?」


「あ、気軽に名前の方で呼んでくれて構わないよ。こっちの世界のファミリーネームにはなんか馴染めなくてさ。確かに見た目ではわからないよね。俺は転移者じゃなくて転生者なんだよ」


 転生者?ってことは一度死んでるってこと?

 俺が不思議そうな顔をしているのに気づくと


「俺は異世界転生で定番の交通事故で一度死んでるんだよね。10tトラックと軽自動車の衝突でさ。ぶつかって車が橋の外に飛ばされた所までは覚えてるけど、その後の記憶はないから多分即死に近かったんじゃないかな。ぶつかった位置的に左半身は多分ぺしゃんこだったはず」


 具体的に答えてくれたけど中々ハードな内容だなぁ。


「その後は気がつくと赤ちゃんになってて、母さんのお腹の中だったよ。不思議な感覚だったなぁ〜。産まれてからも記憶が残ってるからか、種族が変わってたからか成長が早くてさ、あっという間に立ったり話したり出来るようになったんだよ」


「そこら辺の話はあたしも興味深く聞いたよね!なにせ転生者を気兼ねなく研究出来るチャンスはそんなに多くないからね!」


「人を実験動物みたいに言うな。少しは気兼ねしろ!俺は誇り高きドラゴニュートだぞっと」


 するとすかさずクローム先生がツッコむ。


「ハーフでしょうが」

「ウルサイ!」


 そんなやり取りにクスッと笑いながら、俺は気になった事をまた聞いてみた。


「転生して種族が変わったって言ってましたけど、ぱっと見では人間にしか見えないですね!」


「はは、君はストレートに言うね〜。まぁ確かに見た目はそうかもしれないけど…ふん!」


 かけ声と共にアユーユさんの左腕が赤い鱗で覆われたっ!


「ほら!凄いでしょ?前世では考えられないけど、今の俺はハーフドラゴニュート。人間とドラゴニュートのハーフなんだよ」


 素直に驚いた。ドラゴニュートってっ人型のドラゴンだよな。なんかカッコいいな!俺も転移でなんか特別な力とか宿らなかったんだろうか。


「まぁそんなこんなで、この世界で生まれ変わって今まで生活してきたわけだ。で、今はハンターズギルドで新人ハンターの教育係と、時々こうやって転移者や転生者のサポートをやってる」


 目の前であんなの見せられた以上やっぱり今までの出来事は現実で、俺は本当に異世界に来ちゃったんだな…

 そんな風に思っていると


「大丈夫?ちょっとインパクトあり過ぎたかな?色々あっただろうし、頭の中が整理出来てないなら君の話を聞くのは一旦終わりにしてまた明日出直すけどどうする?」


 どうやら不安が顔に出てたみたいだ。


「あ、はい、すみません!大丈夫です!」


「そかそか!なら別室に移動しようか。転移・転生管理課の人が来てるから、現状の説明とこれからの事を話そう」


 ん?転移・転生管理課?なんだろう?


「んじゃ、あたしも仕事に戻りますかね〜」

「ユート君と話すのも仕事だろうが」

「てへっ☆」



 かくして、俺の異世界転移物語は幕を上げた。

 この先どんなワクワクが待っているのだろう。






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