表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cycle of life ~ 生命を紡ぐ円環の惑星 ~  作者: 彩灯 哲
第2章 旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/24

第14話 個別訓練と連携訓練



 2日目からの4日間の訓練は座学中心で、この世界の地理や歴史、文化等の一般常識と、魔導の精度を高める為の知識として、物理学や化学、生物学などの科学を勉強した。基本的には全員頭は良い方なんだけど、コトミは勉強が嫌いだから毎日眉間にシワを寄せながら聞いていた。

 座学の合間には、基礎体力向上の為にランニングやダッシュ、筋トレ、柔軟体操なんかもやった。訓練は基本的には週に5日で土日はお休み。週休二日は前の世界とも一緒だった。最初の土曜は皆も泥のように寝てたな。


 そうして初めの1週間が過ぎ、今日から2週目に突入だ。


「はーい、みんな初めての土日はゆっくり出来たかな?今週からカリキュラムが皆で行う座学と、個別で行う実習に分かれます。今日は最初なので午前中は個別講師の皆さんと色々お話をして、今後の訓練をどう進めるのか相談して下さい。午後はそのまま個別の訓練に入ってもらいます」


 それぞれの適性に合わせて訓練を行うって面談で言ってたけど、まさかそれぞれに個別の講師がつくとは思ってなかった。


「それじゃあ皆さん入って下さーい!」


 ルビアス先生の合図で講師の先生達が部屋に入ってきた。

 

「講師の先生方は私側から順番に自己紹介をお願いします!」


「では私からですね。ビスクム・アルブムです。皆さんとは既に病院でお会いしてますね。私が担当するのはユアさんになります。よろしくお願いします」


 最初の講師はなんと病院でヒロ兄の手術を担当してくれた先生だった。穏和そうだけど信念を持って治療している感じで安心してヒロ兄を任せられるって思った人だから、講師をしてくれてなんか嬉しい。


「あら、もう会ってたのね。ビスクムはアゴイスの国立病院で勤務する医療魔導師で、国内でも5本の指に入る名医よ。私の教え子の1人なのよ〜鼻が高いわ〜。それと元ハンターで若い頃は隣のカコミィとパーティーを組んだこともある実力者よ。だから治癒魔導師の戦闘時における役割や動き方なんかも参考にできるといいわね」


「前の世界では先生みたいに信頼される医者を目指していました。よろしくお願いします!」


 真面目で優しいユアにピッタリの講師だな。思ってた通りユアの適性は治癒魔導師か。


「じゃあ次は隣のカコミィよろしく!」


「私も既に皆さんとはお会いして自己紹介も済ませていますね。今回は講師として来たので少し私の経歴をお話しておきましょう」


 この人は女王様直々の命令で動いてたし、ワイバーンを一撃で倒す程の実力だから凄い人なのは間違いない。


「私の今の肩書はミーレス女王陛下直属ハンターです。ミーレス女王陛下と専属契約を結び、陛下から直接依頼を受けています。ハンターランクはSランクで、ハンターの世界ランキングでは一応6位です。戦闘スタイルは魔導と徒手空拳を組み合わせた魔闘士なので、私が担当するのはユーシさんになります。よろしくお願いします」


 世界ランキング6位!?凄い人だとは思ったけどそこまでの達人だったのか!服装や装備から武闘家なのかなって思ってたけど、魔導を組み合わせるってどんな感じでやるんだろう。


「よろしくお願いします!」


「このカコミィも私の教え子なのよ〜。ミーレス様も含めた初めて教えた1期生4人のひとりで、講義でも少し触れたけど、この世界に500年周期で現れる厄災魔獣と呼ばれる災害級の魔物の1体を討伐したパーティーの一員がミーレス様とカコミィなの!世界的な英雄なのよこの子!」


「止めて下さい先生!そんな英雄とか言われる程できた人間じゃないですから!」


「それもそうね、若い時に親に反抗して家出して海賊紛いの事してたもんね〜」


「先生それは言っちゃダメなやつですよ!それに海賊じゃなくて義賊ですから!」


「カコミィさんこんなに若くて綺麗なのにもっと若い時っていつなんすか?」


 ムラトモよ、それは聞いてはならん質問だ…女性に年齢を聞いてしまうと取り返しのつかない事が起こりかねないぞ。


「あら綺麗だなんて♪そんな事ないわよ〜」


「カコミィはそこまで若くはないわよ。だってもう36だし、アタシと大して変わんないわよ」


「せ〜ん〜せ〜い〜!!乙女の年齢を勝手にバラさないで下さい!」


「もう乙女って歳じゃないでしょ、あんたもアタシも」


「エルフは長生きだから36なんて無垢人からしたらまだ10代と変わらないんですー!」


「精神年齢は違うでしょ〜」


「俺、歳上全然大丈夫です!」


 お前は何をしにきたんだムラトモ。


「次…話してもいいのかな?」


「あ、すみません!次はこの街の名前の由来にもなっているアゴイステン工房の次期棟梁、フィアゴ・アゴイステンさんです」


「どうも、アゴイステン工房のフィアゴ・アゴイステンです。アゴイステン工房は包丁から聖剣まで幅広く商品を取り扱うアイテム工房です。工房の規模としては中小規模ですが、歴史は古く3000年近い歴史があります。『人々の身近にあり続けよ』という信念に基づき、使う人の事を1番に考えてアイテムを作っています。まぁ、なので儲けは少なく歴史があっても規模は小さいままなんですけどね〜」


「中小とはいっても、この街はアゴイステン工房があってこそ栄えた街だから凄いよね〜。アゴイステン工房はハンターに特に人気でね、生活用品に最先端の魔導機、一流の武器まで扱ってるから必要な道具がほとんど揃うのよ〜。全国展開はしてないけど、亜人界、無垢人界には結構支店あるからメンテナンスも頼めて便利よ」


 街の名前になるくらいだし、3000年近い歴史って相当凄いよな。俺等にもなんか武器とか防具とかくれるのかな?


「私の担当はトモヒラくんになります。ミスリルマスターということで、金属加工の技術や戦闘における錬金術師の役割などを伝えられればと思います。私の工房にはSランクハンターもいますので戦闘スキルの面でもお力になれると思います」


 ミスリルを色々な武器とかに加工できるようになれば、その時必要な武器が作れるから戦闘でも活躍できそう。


「先生!あたしの講師はいないんですか〜?」


 そういえば入ってきたのは3人だけだな。1人足りない。


「目の前に居るじゃない。コトミさんは私が担当ですよ〜♪」


「えー!皆には別の講師つくのにー!」


「コトミさんの目標とする戦闘スタイルは私と近いからね〜。素早い動きで撹乱しつつ魔導で攻撃をしてダメージを与えたり、高威力の大魔法で決めの一手を担ったりと、状況に応じて色々な役割になれるからコトミさんにピッタリだと思うけど」


「大魔法…なんかカッコいい響き!」


「コトミさんは水系統の魔導が得意だから水系統の大魔法は早い段階で使えるようになると思うわ」


「なるほど!私は将来大魔導師ってわけね!」


 コトミの自信は一体どこから来るのだろうか。やる気なのは良いことだけど。


「それじゃあそれぞれ別の部屋で親交を深めたり、今後の事を話したりして下さい。部屋はコトミさんはこのまま、ユーシくんは右隣の部屋、ユアさんは左隣、トモヒラくんはフィアゴさんが工房に戻らないといけないので一緒に工房へ行ってください。帰りは迎えを出します」


「ムラトモ外出れていーなー」


 俺達は公にはまだ非公開で、安全の為に自由に外出もできない軟禁状態だからな。確かにちょっと羨ましい。


「でも自由に見て回れるわけじゃないからなー。それに見ず知らずの土地で初めて会う人と外に出るのも結構緊張だぜ」


「確かに!」


「それじゃあまた後でな」


 ムラトモ達が外に出た後、俺達も隣の部屋に移動した。部屋はさっきの部屋と同じ教室みたいな感じ。俺とカコミィさんは手前の机を向かい合わせにして座った。


「こうやって2人で話すのは初めてですね。前は女王陛下の手前、少し威圧的になってしまいましたが、本当はもっと色々お話できたらと思っていました」


「こちらこそ、ワイバーンを一撃で仕留める位だからカコミィさんが凄い人なのはわかってましたけど、ここまで凄い人だったとは思っていませんでした」


「なんか改めて自分のこと説明されると恥ずかしいですね。ただがむしゃらに走ってきただけで、そんな凄いことをやった気はしてないんですけどね。さて、それじゃあ今後について話そうと思うのですが、1ついいですか?」


「なんでしょう?」


「敬語で話すの止めていいですか?実はあまり慣れてなくて。これから数ヶ月はほぼ毎日顔を合わせますし、気軽に話せる感じの方がやりやすいので」


「全然大丈夫ですよ!むしろ僕の方こそ歳下でこれから色々教わるので、敬語なんて使わなくて大丈夫です」


「そう言ってもらえると助かります。じゃあここからはいつもの話し方でいくね。ユーシ君は強くなりたい?」


「どういう意味ですか?」


「私達は君が勇者だから強くなって私達を助けて欲しいと思ってるけど、君自身は強くなりたいって思う?」


「強くならないと生き残れないと思います。僕達は異世界から来たばかりで何も知らないし、何もできません。このままでは仲間も助けられない。勇者の力があっても無くても、仲間を守れる位には強くならないと」


「うん、そうだね。今はそれで大丈夫。君は仲間を守る為に強くなる。それだけを考えていればいい。勇者としての役割はあくまで私達がお願いする事。君自身が強くなりたいと思わないと本当の意味で強くはなれないから」


 俺は何があってもユアを…仲間を守る。


「その仲間を守る気持ち、忘れないで」


 この後は場所を訓練場に移して、現状の俺の能力を把握する時間になった。最初に魔導あり、武器ありの実戦形式の模擬戦をした。


「武器は倉庫の好きなの使っていいよ」


 倉庫には剣やら斧やら沢山あったけど、空手をやってた事もあってやっぱり格闘系の武器がいいかな。探すと手甲と足甲と胸当てがあったからそれを装備した。


「やっぱり格闘で来たわね。ユーシ君なにか武術習ってるでしょ?」


「この世界にもあるかは知りませんけど、空手でそこそこ強い方でした」


「やっぱりね!ワイバーン戦でも隙のない良い構えしてたし、身のこなしが完全に玄人だもの」


「ワイバーンと戦ったのは初めてでしたけどね」


 あの時は無我夢中だったけど体が動いたのは空手のお陰かな。


「さて、準備はいい?」


「大丈夫です」


「それじゃあ始めましょう。私は攻撃魔導を使わないけどユーシ君はありで大丈夫よ。どこからでもかかってらっしゃい」


 立っているだけなのに気圧される。間違いなく達人だ、この人。ただ突っ込んでも勝てる気がしない。


「それじゃあ、行きます!」


 俺は無詠唱からいきなり火球魔導フラメスフェーラを放った。この1週間でも魔導の理解度が進み、無詠唱でもそこそこの威力の魔導が使えるようになった。


「いきなり無詠唱!やるわね!」


 そう言いつつも動じる様子もない。

 カコミィさんは俺の火球を無駄のない最小限の動きで躱す。


 俺は後ろに回り込みながら連続で火球魔導フラメスフェーラを放った。


「でも同じ魔導ばかり見飽きたわ」


 カコミィさんは全ての攻撃を軽く躱していく。


「ブレイク!」


 最後の火球のみ手前で爆発して視界を塞ぐ。


「燃え盛る紅蓮の火球よ、我が敵を焼き尽くせ!紅蓮死球魔導バーニングデッドボール


 爆発の後ろから死角になる形で速度の違う魔導を放った。さっきの速度に見慣れてるし、死角からだから防御も難しいはず。


「どうだ?いけたか?」


 爆煙が薄まるとカコミィさんの立っている陰が分かった。


「直撃したら致命傷の魔導を迷いなくよく撃ってきたわね!」


「それくらいしても勝てるかどうかの相手だってこと位はわかりますよ」


 爆煙が完全に消えると構えるカコミィさんが見えた。構えると更に圧が凄い。


「さすが武術を習っているだけあるわね。それじゃあ今度はこっちから行くわよ!」


 勢いよく走り出したと思ったら、数歩走った所から急加速して弧を描く様に俺の左側に回り込んでいた。そのまま回し蹴りを繰り出してきたけど間一髪の所でガードできた。

 が、そのまま体を回転させ左脚で後頭部を蹴り飛ばされた。一瞬意識が飛びかけたけど、なんとか保って前転して受け身を取った。

 

「まさか初撃を止められるとは思わなかったから、つい勢いで連撃しちゃったけど、ちゃんと受け身も取ってて凄いね」


 たった一撃だけどめちゃくちゃ重い。後頭部だったからなのもあるけど、次食らったら終わりだな。


「じゃあ次は組手を見てみようか」


 そう言うとまた数歩で加速して俺の懐に入って来た。

 今度はガードせず膝蹴りで迎撃した。カコミィさんがガードして、そこからは近距離打撃の応酬で互いに打撃を繰り出してはガードや捌いてとかなりの手数を繰り出した。

 早いけどさっきの急加速はなく、攻撃も見えている。逆に距離を取られると対応出来なそうだからなんとかこのまま押し切りたい。


「我が拳に猛る紅蓮の炎を纏わせよ。紅蓮纏カマラゲーラ!」


 俺は腕に炎を纏わせる魔導を使って、ガードの上からダメージを狙った。

 目論見通り数発はガードさせて少しは熱ダメージ入ったかなと思った矢先に、


高速飛行魔導フライトゲイル


 後方に向かって後ろ向きのまま飛び距離を取られてしまった。


「オッケー、とりあえずここまでにしましょう」


 俺の前まで飛んでくるとゆっくり着地した。


「総評としては、現時点でもハンターで中の上くらいの戦闘スキルはあるわね。これがまだ魔導を使い始めて1週間だなんて末恐ろしいわ」


「ありがとうございます。でも並のハンターレベルじゃカコミィさんの相手にならない事がよくわかりました」


 まともな一撃は入らず、こっちは重い一撃もらって、得意の組手に持っていっても攻めきれないっていうね。一応高校で全国4位なんだけどな。


「まぁ自分で言うのもなんだけど、私と初見でここまでやれる人は多くないわよ。それこそ初撃はよくガード出来たね!」


「攻撃の直前に一瞬先に風が来たので咄嗟にガードしただけで、見切ってたわけじゃないです」


「その戦闘センスは天性のものね。タネ明かしをすると、私の移動術は風よ。予め風のコースを作ってその風に乗って高速で移動したり、タイミングを合わせて足下や背中に風を起こして急加速する事で攻撃に緩急をつける技で、舞闘風雅ぶとうふうがって言うの」


 あの急加速はそういう事だったのか。あれは攻撃のタイミングが全然つかめなかったな。我ながらよくガードしたと思う。


「君ならこの技を使えるんじゃないかなって思うよ。ユーシ君は適性魔導が幅広いから、別に同じ風魔導じゃなくてもいいかなって思う。大事なのは『攻撃に緩急をつけること』だから、火でも出来るわよ」


 確かに仕組みも理解できるし、さっきの攻撃を見たら動きのイメージは出来てる。


「はい!カコミィさんの技凄かったんで、あれを俺も使えるようになるかもって、なんかワクワクしてきました!」


「なら良かった。あ、それと、さっき腕に炎を纏わせる魔導を使ったのはナイスだね!実は私も同じように魔導を身体に纏わせて戦うスタイルで、元々教えようと思ってたの。属性のバリエーションが多いユーシ君なら状況に合わせて色々出来てピッタリだと思うんだ」


 自分で考えた方向性が間違いじゃなくて良かった。魔導自体は既に魔導登録されてる中から使えそうなの選んで、参考動画でイメージを掴んで練習してたから上手くできた。この1週間でも大分強くなれた気がする。これからカコミィさんに自分に合ったスタイルで技術を学べるから、今よりももっともっと強くなれる。早く皆を守れる位に強くならないと。


 こうしてそれぞれ個人訓練も行い、戦う為の力と技術と頭脳を鍛えていった。




 訓練開始から1ヶ月が経ち、ヒロ兄の体調もすっかり良くなり、俺達と一緒に暮らしても大丈夫になった。腕はもう半分位まで再生治療が進んでいるけどまだ完治は遠いみたい。でも毎日通院してリハビリも頑張ってる。


 ヒロ兄は治療優先で、俺達とは完全に別枠で訓練になった。

 俺達は個人訓練も大分進んできて、少しずつ連携の練習もし始める事になった。今日は午前中から訓練場スタートだ。


「さて、先週末に言った通り、今日からは連携訓練も行います。まずはそれぞれの現段階で使える技や魔導を共有しましょう。制限時間は5分ね」


 ある程度は家に帰ってから皆と話して知ってるけど、実戦レベルでの話はしてないから皆がどんな技をどう使うかは分からないな。ってか制限時間つきなの?


「ルビアス先生ー!なんで制限時間あるんですか?」


「まぁそう思うよね〜。実戦では少ない時間で情報共有して戦いに臨む事も少なくありません。日頃から情報を整理してすぐに引き出せるようにしておくことは、実は実戦において非常に大切な事なの。なのでまずは自分の事を短時間で的確に伝えられるようになりましょう」


 なるほど。確かにそうだよなぁ〜。俺達だけで戦うんじゃなくて、色んな人達と連携して戦う事だってあるよなきっと。


「それじゃあ行くわよ〜。よーいスタート」


「はい!俺からいい?」


「オッケー、じゃあムラトモから時計周りな」


「俺の戦闘スタイルはミスリルを自在に操って攻撃、防御、サポートと色々こなしていくスタイルで、使えるのはミスリルの自由生成。そこにある無機物をミスリルに変えることができるし、なにもない所からでも生成できて、最大10立方メートルの塊まで生成できるぜ。攻撃面では敵の上に塊を生成して落としたり、刃物を作って斬ったり、落とし穴に針山とか即席の罠を仕掛けたりもできる。防御面では壁とか坂道作って攻撃を防いだりかな。サポート面では移動の補助として階段や橋を作ったり、簡単な武器や防具も作れるぜ。とりあえず以上で。次コトミか」


 目の前で刃物をスッと生成しながら説明をしていて、生成までの時間が前にコップ作った時の比にならないくらい一瞬で生成していた。


「あたしは動き回って敵を撹乱しつつ、攻撃魔導をぶち込むスタイル。名付けるなら高機動型黒魔導師かな!魔導師って詠唱中はあまり動けないイメージだけど、あたしは水泳と陸上で鍛えた体力と肺活量があるから、結構走りながらでも詠唱できるんだ。基本的な攻撃魔導なら無詠唱で出来るのも多いから、手数も多くしてガンガン攻めていく事も出来るよ!属性も土と電気以外は使えるから攻め手のバリエーションも多いと思う。防御魔導は水は使えるけど他はまだ練習中。他には感覚拡張魔導で足音とか壁越しの物音とか聞けたり、遠視とかも使えるよ。あと最近飛行魔導も出来るようになったの!あ、これくらいにしとかないとか!以上でーす」


 話しながらでも少し浮きながら両手に違う属性の魔導を出せてた。2属性を同時に出せるのも凄いし、魔導の同時使用は結構難しいのに凄いな。


「次は僕だね。僕は攻撃魔導は全く出来なくて、攻撃力に関しては貢献出来ないんだけど、傷の治療は少し出来るようになったよ。小さな切り傷とか、すり傷は無詠唱でも治せるし、深い刺し傷や骨折とかは少し時間かかるけど治すことはできるよ。麻酔みたいな魔導とか、痛みを和らげる魔導とか医療魔導で使えるのは結構あるよ。あとは防御魔導は水と氷と風が使えて、補助魔導って言うのかな?目眩ましとか、遠くを見れたりとか、便利な魔導も幾つか使えるよ。以上です。最後はユーシくんだね」


「はいあと1分ちょいだよ〜間に合うかな〜」


 ルビアス先生が残り時間を教えてくれてありがたいけど、それはそれで焦っちゃうな。


「俺は空手をベースにした近接戦闘と全属性の攻撃魔導を使って戦うスタイルで、拳や蹴りに属性を乗せる事で弱点を突いたり威力を底上げしたりできる。中距離までなら攻撃魔導と高速移動の魔導で対応出来るよ。防御魔導も範囲は1人分しか出来ないけど全属性使える。飛行魔導も使えるから空中戦も対応できるよ。回復も少しの傷なら治せる。補助魔導はあんまり使えないけど、錬成魔導で使えそうなのを模索中。以上」


 俺は話しながら実際に拳に色々な属性を乗せて見せた。


「はいそこまで〜。あら、ほぼ時間ぴったり。皆よく出来ました!それじゃあこれから実戦形式でやってみようか!カモーン!」


 ルビアス先生の声に反応して来たのはワイバーンより少し小さい熊みたいなロボットだった。


「これは訓練用の魔導機獣で、かなり頑丈にできてるから思いっきり攻撃しても大丈夫よ。野生で棲息している熊型魔獣の動きや能力を参考に開発されているから、ある程度は実戦の感覚も得られるわ。もちろん攻撃もしてくるから油断してると大ケガするわよ」


 野生の熊くらいなら今の俺達ならそんな苦戦するとは思えないけどな〜。

 そう思いながら戦闘の準備をしていく。


「それじゃあ皆準備はいい?よーいスタート!」


 ルビアス先生の合図と共に魔導機獣は俺達に突進してきた。


「ここは俺に任せろ!」


 ムラトモはミスリルの壁を魔導機獣の前に出現させた。すると魔導機獣は壁に当たる前に突進を止めた。


「ムラトモナイス!」


 その間にコトミは空中に飛んでいて、魔導を放っていた。


連続氷矢魔導スティリアヴェロスラガーター!」


 氷の矢が魔導機獣に降り注ぎ何発か直撃するが、ダメージは少ないようだ。


「ならもういっちょ!連続炎矢魔導フラメヴェロスラガーター!」


 今度は炎の矢が連続して降り注ぐ。何発か直撃し温度差で熱疲労が起き少しひびが入る。


「アタックチャ〜ンス!」


 俺は攻撃する為に走りながらジャンプして距離を詰める。


点火アリュメ!」


 俺の背中と足の裏からロケット噴射のような激しい炎が噴き出して急加速する。カコミィ師匠から教わった舞闘風雅ぶとうふうがの火属性版で、俺は舞闘烈火ぶとうれっかと名付けた。


 即座に懐に入り込み一撃を加える。


「我が拳に宿れ!獄寒の凍気!凍結剛拳ジュルグロスィヤ!」


 魔導による冷気と打撃による衝撃により熱疲労が加速して魔導機獣の腹は砕け散り本体も吹き飛んだ。

 その後はもう動き出すこともなく、俺達はあっという間に倒してしまった。


「あらま〜。ここまであっという間に倒されるとは思ってなかったわ。最初の連携訓練としては十分過ぎるわね」


「もしかして、うちら結構強くなってる的な?」

「的なみたいな?」

「みたいなみたいな?」


「ユーシくんまで乗っかったら誰がツッコむの?それに僕だけなにもしてないんだけど」


「はいはい、上出来だけど調子に乗らない!ユアちゃんは出る幕なかったわね。まぁ追々役割が必要になってくるから大丈夫よ」


 正直調子に乗るくらいい良い連携だったんじゃないかなと思う。始めて一緒に戦ってこれなら、練度が上がったらかなり強くなれそうだ。


「今週から来週は魔導機獣や私を相手に練習して、その後は実戦訓練として、国が受けてる依頼を幾つかやってみましょう。万が一の時の補佐として、カコミィにも同席してもらうから安心してね。それじゃあ次の訓練行きましょう」


 この後、俺達の自信は秒で崩された。ルビアス先生を相手に魔導使用有りの鬼ごっこの訓練をすると、4対1なのに全然捕まらないし、鬼を逆にするとあっという間に全員捕まってしまった。


「さっきの自信はどこ行ったの〜?」


「レベルが違い過ぎます〜」


「ミスリルの壁で足止めも出来ないわ、囲んでも閉じ込められないわでお手上げっすよ〜」


「高速飛行の魔導がレベチ過ぎる〜空中から来られたらあたしの飛行じゃ逃げれませーん」


「僕…何の役にも立てませんでした…」


「ま!これが実力よね!でもこれから練度を上げて私ぐらいは捕まえられないと、この先現れるであろう強敵には太刀打ちできないわよ。今日はこの後しばらく鬼ごっこよ〜!」


「「「「うげ〜」」」」




 俺達は強くなって来てるのは間違いないけど、今日の訓練でまだまだ一流の人達には遠く及ばない事を思い知らされた。


 ヒロ兄とも一緒に住み始めて、ちょっとこの世界での暮らしにも慣れてきたし、訓練は大変だけど毎日充実感はあった。この世界での暮らしも結構楽しいかも。


 まだ…この頃は楽しかったな…。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ