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Cycle of life ~ 生命を紡ぐ円環の惑星 ~  作者: 彩灯 哲
第2章 旅立ち

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第12話 来たるべき時の為に



 昼寝をして起きた後、俺達はリビングに集まって夕飯まで雑談をして過ごした。テレビもつけてみたけど、何を話してるのかわからなかった。


「ダメだ、なんもわからんねー。字幕もわかんねーからどうにもならん!カコミィさんとか女王様とかはなんで俺達と言葉が通じたんだろうな」


「さぁね〜。あ、でもメイドさん達も通じてたから後で聞いてみよっか」


「なんか女王様が何かを調整したって言ってたよな。もしかしたら翻訳機とかあったのかもね」


 そんな話をしていると気づけば夕飯の時間なり、メイドのマーロさんと執事のトープさんのが夕食を運んできてくれた。


「夕食をお持ちしました。本日のメインはリントドラゴンのテールステーキです。せっかく異世界に来ていただいたので、是非この世界ならではの料理をご堪能いただければと思いまして、最上級のリントドラゴンの尻尾をご用意いたしました。リントドラゴンは牛に似た性質を持っていて、テイルは特に肉質が柔らかく旨味も凝縮されて美味でございます。今回はぶどう酒のソースでお楽しみ下さい」


 2人はテキパキと準備をして数分でダイニングテーブルには豪華な料理がズラリ。リントドレイクのテールステーキは、見た目はほんとに尻尾の輪切りみたいな形で、骨の部分には芋系のペーストが盛り付けられている。ソースからはぶどうの豊かな香りと肉の焼けた香りが見事に混ざって食欲をそそる。こんなの美味いに決まってるじゃないか!


「今回は私共で時間やメニューを決めさせていただきましたが、今後は皆様のご希望に沿って提供したいと考えています。直前だと難しいですが、予め言っていただければ大体のメニューは作れますので、ご要望がごさいましたらご連絡下さい。基本的には毎食後に次回の食事の時間と内容をお伺いできればと思います」


「皆はそれで大丈夫?」


「「「大丈夫でーす!」」」


「承知いたしました。おかわりもございますので遠慮なくお申し付け下さい」


「ありがとうございます!それじゃいただきまーす!」


 俺達は初めての異世界料理を口にした。

 

「美味い…美味い…。ワイバーンと戦って死ぬかと思った…。生きれてホントに良かった…」


 生死を分かつ戦いをしたのは今朝のこと。ムラトモは食事を通してようやく生きてるという安心感を得たんだな。


「ほんとだね…。僕達ちゃんと生きてる。ヒロ兄も生きてる。生きてるよ」


 ユアも目に涙を浮かべてる。コトミも目を擦って涙を拭いている。


「これから色んなことがあると思うけどさ、俺達なら大丈夫。皆で力を合わせて乗り越えていこう」


 そうして俺達は初めての異世界料理に舌鼓をうった。食事を終えてマーロさんとトープさんの片付けも終わったのを見計らって、俺達はこの世界の事や気になることを色々聞いてみようと声をかけた。


「もし他の仕事が大丈夫ならこの世界の事をもう少し聞きたいなって思うんですけど大丈夫ですか?」


「どちらか1人であれば問題ないかと思います。差支えなければ私がお話致しますがいかがでしょうか?」


「ぜひぜひ!可愛い女の子大歓迎!」


 ムラトモは大喜びで手招きしてる。


「ムラトモそれセクハラ〜」


「トープさんにも失礼だよ!」


 コトミとユアからのバッシングにムラトモは口を尖らせている。


「大丈夫です、気にしてませんよ。お気遣いいただきありがとうございます」


 トープさんもなんて礼儀正しいんだ。ムラトモも見習って欲しいものだ。


「では僭越ながら私がお相手させていただきます。食後のデザートとお茶をお持ち致しますので、もうしばらくお待ち下さい」


 そう言って2人は一旦退室して、少ししたらマーロさんがデザートとお茶のセットを持って戻って来た。そこには小さな四角のケーキが沢山並んでいる。


「スイーツはベリームース、モンブラン、スフレチーズケーキ、ガトーショコラ、抹茶テリーヌの5種類をご用意致しました。紅茶は香り・味・色のバランスがよく、クセがないものを選びましたので、お好みでミルクやレモンを入れてお楽しみ下さい」


「「スイーツ〜!!」」


 女子達が目を輝かせてケーキを見ている。早速スイーツをいただくと2人は手を取り合って美味しさを共有していた。


「こんな美味しいスイーツを食べれるなんて、生きてて良かったーーー!!」


「どれもとっても美味しい!僕もこういうの作れるようになりたいなぁ〜」


「ご希望でしたらお教え致しますよ。実はこのスイーツは私が作らせていただきました。メインのシェフはいるのですが、スイーツは全て私が担当しております」


「えぇ〜!!そうなんですか!?メイド業務もあるのにスゴイですね!お忙しいのに大丈夫なんですか?」


「はい、構いませんよ。日程調整すれば問題ありません」


「じゃあよろしくお願いします!」


「ではまた後ほどお教えする日にちなどを調整いたしましょう」


 ユアは嬉しそうにまたケーキを食べ始めた。


「あの、質問したい事があるんですけどいいですか?」


「はい、この世界の事などをもっと知りたいというお話でしたね」


「ちょっと疑問に思う程度の事なども多いんですけど大丈夫ですか?」


「構いませんよ。一応私の勤務時間が21時までですので、それまでなら問題ありません」


「ありがとうございます!まず気になったのが言語についてなんですけど、初めカコミィさんの話す言葉が全く理解できなかったんですけど、女王様がお話になるときにはもう解るようになっていて、マーロさん達の言葉も解るようになってたのはなぜなんでしょう?」


「恐らく女王様が魔導機の翻訳機能を対応させたからだと思います。この世界に生きる人間のほとんどの方が多機能型魔導機を使っていて、それには翻訳機能が備わっているものも多くあり、この世界の言語はもちろん、異世界でも多くの言語を翻訳可能になっています。実際に私達は日本語の翻訳機能を対応させるよう指示を受けていたんです」


 なるほど、どうりで急に解るようになったわけだ。あれ?でも話す方はどうなってるんだ?


「話す言葉はどうやって翻訳するんですか?普通に口も動いているように見えますけど?」


「詳しい知識が私にもないので大まかな仕組みだけお伝えすると、話す際にメインで話す言語を設定可能で、話す際に脳から送られる電気信号を設定した言語に変換する事で変わるみたいです」


 なんだその技術!めちゃくちゃすげぇ!!魔導ってそんな事もできるのか!


「魔導機の仕組みは高度な魔導師でないと全て説明するのは難しいですね。基本的には身につけるタイプの腕時計型やチョーカー型の物が主流で、それに各々が必要な機能を魔導石で追加する形が多いですね。体内に埋め込む事も出来ますが、1度体内に入れると再設定や機能追加が大変なので、限定的な機能で必須になるものだけ埋め込む人が多いようです」


 そう言って首元のチョーカーを見せてくれた。チョーカーの外側に小さめのビー玉位の小さな宝石が幾つも埋め込まれている。


「この宝石1つ1つが魔導機の核で、魔力で術式が刻まれています。イメージとしては、白紙のノートにやれる事を書いて、魔力が流れるとその書いた内容が発動する感じです。書ける場所が多い方が多機能に出来るので基本的には魔導石のスペックは大きさに比例します。ですが、書く術式を小さく書ければ書ける量も増えるので、そこは魔導術式技師の実力に左右されます。内容も大雑把に書くと安定した出力にならなかったり、失敗する原因にもなったりするので、詳細な術式を書けるかが重要になります」


 こんな小さな宝石がそんな凄い機能を持ってるのか〜。


「どの国でも基本的には最低限の機能を有したものが幼小学校卒業時に与えられるので、保有率は90%以上になります。異世界転移した方々にも配布しておりますので、皆様にも近々配布されるのではないでしようか」


「最低限の機能ってどんなのあるんすか?」


 お、珍しくムラトモがまともな質問をした。


「基本的には、音声・映像通信機能とそれらの録画・録音機能、国営のデータベースへのアクセス、動画・静止画の撮影機能、録音機能、電子図書館サービス、翻訳機能などまだまだあります。皆様の世界でいうとパソコンやスマートフォンに近いですね」


 確かに似た機能はスマホでほとんどあるな。それらを国で全部管理してるのか。かなり国の役割が大きいな。


「ほぇ〜この世界にもスマホみたいなのがあるんすね!ってかスマホのこと知ってるんすね!」


 どうしたムラトモ、良い質問の連続じゃないか。


「ある程度は幼小学校で一般教養として異世界転移についても学びます。あと、皆様がこちらにいらっしゃると決まった段階から色々事前情報をいただきまして、その中で勉強させていただきました」


「異世界転移ってそんなに珍しい事じゃないんですか?あと、ケーキおかわりってあります?」


 コトミの皿にあったケーキはもう既に全てなくなっていた。小さいとはいえ数分で全部食べるとは。


「異世界転移は人数としては少ないですが、どの国でも毎年数名は現れるそうなので意外と出会う機会も多いですよ。転生者の方もいるので、皆様のご想像よりもこの世界への影響は大きいと思います。ケーキはまだまだありますのでお取り致しますよ」


 へぇ〜そんなにいるもんなんだ。


「とりあえず全部3つずつお願いします!じゃあ、あたし達意外の転移者とも会えるかもね!」


「実はヘリオは転生者なんですよ。詳しい話は聞いていませんが、本人も別に隠してはいないみたいです。機会があればお話されてみてはいかがでしょうか。きっと喜ぶと思いますよ」


「ヘリオさん転生者なの!?え〜明日聞いてみよ〜!どんな生活してたのかなぁ〜?」


 急に名前で呼び出したし、なんか獲物を狙う女豹みたいになっている。


 その後も色々話を聞いたり、逆に質問もされたりでとても楽しい時間を過ごした。気がつけばもう20時50分になっていた。


「もうこんな時間!ごめんね、マーシュちゃん!」


 皆とすっかり打ち解けて、マーシュさんから名前で呼んでも構わないと言われたのでコトミは早速名前で呼んでいる。俺達も他のメイドさんや執事さんも含めてあまり敬語を使わないようにお願いした。正直、ずっとしっかりした敬語だとなんかムズムズしちゃう。


「いえ、住み込みなんで住んでるのもこの建物の下層階ですぐ帰れますし、帰ってもシャワー浴びて寝るだけなんで大丈夫です」


「そのうち女子会とかできたら楽しそうだね!まさか僕と同い年なんて驚いたよ〜」


「私も同い年の人は学生時代以外で会ったことないからなんか嬉しい」


 マーシュちゃんはユアと同い年の20歳だったこともあり特にユアとは打ち解けたみたいだ。


「それではまた明日。おやすみなさい」


 マーシュちゃんが帰った後、俺達はまた自由時間にして各々過ごした。


 そして次の日、俺達は朝食後から昼食まで自由時間。昼食を終えていよいよ女王様に謁見だ。カコミィさんが迎えに来てこの建物の会議室みたいな部屋に案内された。玉座での謁見を想定してたからちょっと驚いている。


 そこには昨日映像で見た猫耳のある美しい女性が座っていた。


「どうぞお座り下さい」


 俺達が用意された席に座ると女王様が話し始めた。


「昨晩はよく眠れましたか?」


「はい、とても快適なお部屋をご用意いただきありがとうございます。それと、ヒロ兄を助けていただきありがとうございました」


「昨日はあのような逃げ場のない選択肢で行動を縛ってしまって申し訳ございません。ご友人は私の名において必ず完治させます。ただ、私達には貴方がたの力が必要なのです。勇者ユーシ」


「その…勇者って言われても全然ピンと来ないのですが、僕は何をすることになるんですか?」


 勇者だって言われても実感もないし、イメージ的には魔王を倒すとかだけど、昨日マーシュちゃんに聞いた話だと魔人界っていう国があって、その大統領的なのが魔王で、外交もしてて関係は悪くなくて大きなトラブルとかでニュースにもなってはいないって言ってた。とすると、もしかしたら魔獣退治とかかな?


「予言の通りだった事は昨日もお話しましたね。その予言にはその前と続きがあり、『魔の王現れ世界に暗雲立ち込めし時、白き炎纏いし者、その拳で飛竜を滅ぼし、新たなる伝説が産声を上げる。勇気ある者の再臨。この星の運命を動かす大いなる者。彼の者は漆黒の魔王と対峙する。天はいななき、地は悲鳴をあげ、世界は破滅へと向かう。赫き光と蒼き光が道を切り開き、失われし生命は循環し流転する。そして白き勇者は漆黒の魔王を討ち破り、世界は安寧を取り戻す』となっています」


 ということは、俺は現れるであろう魔王と戦って倒すのが目的ってことか。


「私は予言の事が気になり特別任務で魔人界への諜報活動にカコミィを派遣しました。そこである人物によって不穏な動きがあるのを発見したので、対策の為カコミィを一時帰国させました。その際にこの街、アゴイス近郊に飛竜が巣を作っている事を発見したので、もしかしたら勇者が現れるかもしれないと監視を命じた次第です」


 カコミィさんはワイバーンも一撃で仕留めるくらいだからかなりの強さなのはわかってたけど、そんな任務に就いてたのか。


「それで現れたのが僕達だったんですね。そして僕が白い炎を出していた。流れは解りましたが具体的に僕は何をすればいいんですか?」


「現れるであろう魔王の討伐が最終目的となります。現在の魔王、コランバイン・A・トイフェルとは友好関係が築けていますので、恐らく今後新たに魔王を名乗る者が現れると考えています。この予言の話はコランバイン魔王には伝えてあり警戒をするようお伝えしていますが、あまり真剣には考えていただけませんてました。カコミィが発見した怪しい人物、魔人界統合魔術研究大臣のガムオン・Z・クアノウが反乱を計画しているという情報を得たのでそれも報告しましたが、全幅の信頼を寄せているので信じていただけませんでした」


「そこまで分かってるのに何も出来ないなんて」


「所詮はただの予言でしかありませんからね。しかも他国からの言葉なので鵜呑みには出来ないでしょう。ですので我が国としては、対抗手段である勇者のユーシ様には来たるべき戦いの為に力を養っていただき、魔王討伐に備えたいと考えています」


「つまりは勇者としてレベルを上げて立ち向かえって事ですね」


「その通りです。この予言を遺した魔導師は我が国の至宝と呼ばれる程の人物であり、その予言の信頼性も高いと考えています。最悪の事態では戦争にもなり得ると考えているので、来たるべき時に備えて武力や人材の確保等の準備をしております。また、転移者や転生者は高位の魔導適性がある場合が多いので、勇者様のご友人方にもご助力頂ければと考えています」


 皆がいてくれたら心強いけど、俺のせいで戦いに巻き込むのは避けたい。俺は皆が安全でいられるようお願いをしようと話そうとしたら、


「もちろんやります!」


「ユーシ1人に全部押し付けて安全な所でのうのうとなんかしてられません!」


「俺だってユーシと一緒に戦える!ミスリルは戦いにだって役に立つ!」


 全く俺の気も知らないで。

 でも皆と一緒ならきっとどんな困難だって越えられる。


「ありがとうございます。そうであれば、皆様には明日から短期間で強くなれるよう特別な講師とプログラムをご用意致します。もちろん衣食住の保障や必要な資金等も準備致します。詳細は決まり次第お伝えしますので、今日はゆっくりして明日からの訓練に備えて下さい」


「わかりました」


 こうして俺達は勇者パーティーとして、この世界の為に強くなることになった。





 この時は信じていた


 皆とならどんな困難も越えられるって


 未来がこんな事になるなんて


 考えてなかった

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