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常々


 僕は常々思っていたことがある。


 ――後々のことを考えれば、マーナルムの皆は僕と別れ、獣人達と共に暮らした方がいいんじゃないか。

 獣人は僕達人間とは考え方や風習が大きく違うし、今後のことを考えれば彼女達には元いた場所に戻ってもらった方がいいのではないか……と。


 もし動き出すなら、一番いいタイミングは間違いなく今だろう。


「え、ええと……」


 僕の問いを聞いたウィチタが、こちらを見上げてくる。

 離れたところから聞こえてくる喧噪が、右から左に流れていく。

 今はまったくといっていいほど、耳に入ってこなかった。


「それはつまり……出て行け、ということでしょうか?」


「な、なんでそうなるのさ!? ただ意思を聞いてるだけだよ!」


「元いたところに戻れという、遠回しな意思表現なのかと……」


「そんな陰険なことはしないよ!?」


 良かったです……とホッと安堵のため息をこぼしながら、ウィチタが空を見上げる。

 釣られて僕も顔を上げれば、そこには満天の星空が広がっていた。


「他の皆がどうかはわかりませんが……私は戻るつもりはありません。私は、その……アレスさんと一緒にいたいです」


「そっか……そっかぁ……」


「もちろん、私も」


 僕は強張っていた身体を脱力させながら、ゆっくりと地面に手をついた。

 安堵したおかげで、へなへなと力が抜けてしまう。

 そんな僕の身体を、足音もなく近付いてきていたカーリャが支えてくれた。


 僕は自分に自信がない。

 だから正直なところ、結構不安だった。


 全てが解決したことでマーナルムの皆はあちらに戻ってしまうんじゃないか。

 そしてパーティーを追放された時のように、僕はまた一人になってしまうんじゃないか……と。

 けれどウィチタ達は、僕と一緒にいてくれるとしていた。


 気になっていた答えが聞けて、その答えが自分が望んでいたものとまったくと言っていいほどに同じで。

 それで、嬉しく思わないわけがない。


「私はまだ、恩返しもできていませんから」


 視線を感じて顔を下ろせば、そこには空に輝く星に負けないほどその瞳を輝いているウィチタの姿があった。

 その横顔に、僕は思わずみとれてしまう。


 くいくいっと袖を引かれたので首を曲げると、そこにはなぜかしなを作っているカーリャの姿があった。

 彼女はそのまま服の裾に手をかけながら、


「……身体で、返す?」


「大丈夫です!」


「ちょっとカーリャ、はしたないことはやめなさい!」


 危険なことを言い出しながら服に手をかけようとするカーリャを、僕は必死になって押しとどめることができた。


 彼女も僕のことが好きと聞いてはいたけど……ちょっと訴えかける方法が直接的すぎないかな!?


 ウィチタの話では、ここにいないイリアやエイラちゃん達まで好いてくれてるってことだけど……果たして彼女達の思いを受け止めることができるだろうか。

 今から不安になってきたよ……。


(そういえば皆……元気にしてるかな)


 集落を後にしてから、結構な時間が経ってしまっている。


 人間というものはなかなか現金なもので、ホッとして心に余裕ができたからか、なんだか無性にここにいない彼女達のことが気になってきてしまった。


「明日になったら、一度僕らの集落に戻らなくちゃね」


「ですね、もしかしたらオリヴィアが見ている畑で、そろそろ収穫ができるようになってるかもしれませんよ」


「そうだね、せっかくだしこっちの人達にも農業をしてもらうっていうのもありかも」


 僕は一人じゃない。

 二人にそう言ってもらえているようでなんだか嬉しくなった僕は、そのまま大して強くもないお酒をがぶがぶと飲むことにした。


 当然ながら翌日に、僕はものすごい二日酔いになってしまい……結果として出発の時間が大分遅れてしまい、ウィチタ達にぽかりと頭を叩かれてしまうのだった……。

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