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去就


 『猛る牙』の脅威だった人狼の討伐を無事に終えた僕達は、その毛皮と大きな頭を持って集落へと戻ることにした。

 脅威を取り除いたということを理解してもらうには、やっぱり目で見てわかるインパクトが必要な気がしたからね。


 集落へ戻ると、こちらを出迎えてくれるキンバリーさん達。

 どうやらかなり気になっていたらしく、集落の入り口には彼以外の沢山の獣人の姿があった。


「おお、それはもしや……」


「はい……人狼、しっかりと倒してきましたよ」


 僕の言葉に、わっと周囲にいた獣人達が湧く。


 一歩ずつゆっくりと近付いてきたキンバリーさんは、僕が抱えていた人狼の頭の入った袋を、ジッと見つめる。

 スッと細められたその目で、今の彼は何を見ているんだろうか。


「人狼は強かった……私の父ブライを倒すほどに。父も戦いの中で倒れることができて、本望だったでしょう」


 獣人には狩猟文化が色濃く残っている。

 故に彼らは実力や結果を何よりも尊ぶ。


 僕からすると不思議に思えるけれど、獣人の皆の人狼への恨みは実はそこまで強くはない。 彼らは強者を尊重する。そしてその対象は、魔物にも及んでいるのだ。


 先代の族長であったブライさんがどう思っていたのかはわからない。

 けれど争いをしようとしていたし、戦うのが好きだったのは間違いない。

 となるとキンバリーさんの台詞も、案外的を射ているんじゃないだろうか。


「死んだ者達のためにも、生者である私達は騒ぐ必要がある! 今日は宴です! 人狼を倒してくれたアレスさん達、そして窮状を知り助けに来てくれた『疾風のたてがみ』の皆さんもぜひ楽しんでいってください!」


 周囲からの歓声が、より大きくなる。

 そうして『疾風のたてがみ』で行ってからそこまで時間は空いていないけれど、またしても僕らは宴に参加することになったのだった。



「えー、それでは『猛る牙』と『疾風のたてがみ』、そしてマーナルムの皆の平和を願って……乾杯!」


「「「乾杯ッ」」」


 なぜか音頭を取ることになってしまった僕の号令で、皆がめいめいに騒ぎ出す。

 まったくしんみりするようなこともなく、皆陽気に騒いでいる。


 死んで天に帰っていった達に聞こえるよう、生きている者達が騒ぐ。

 獣人達の文化にも慣れてきた僕は、違和感を感じるようなこともなく会に参加することができた。


 二度目ともなるとある程度慣れたもので、皆から酒を注がれるのも上手いことかわすこともできるようになってきた。


 今回は集落の中にいる時間がさほど長くなかったため、そこまでもみくちゃにされるようなこともなく。

 僕はウィチタ達としっぽりとお酒を飲ませてもらっていた。


「なんだか、思ってたよりずいぶんと大事になっちゃったよねぇ」


「ですね、魔物の異変の原因を確かめようとしたら、あれよあれよという間にこんなことになってしまっていました」


「でも……結果オーライ?」


 流されているうちにどんどんと事態が進展していったのは間違いないけれど、たしかにカーリャが言っている通り、結果的に見ると全てが丸く収まった。


 僕達の集落を襲った異変の元凶である人狼は無事討伐することができたし。

 それに……。


「とりあえずしばらくの間は、集落間で問題が起きたりすることもなさそうだしね」


 僕らの視線の先では、次期村長であるグルド君とキンバリーさんが仲良く杯を干していた。

 『疾風のたてがみ』と『猛る牙』の間に僕達が立って問題を解決したおかげで、両集落は急接近している。

 何かあったら僕らが間に立つことだってできるし、これでマーナルムの皆が集落を離れる原因になった争いの問題はおおむね解決したと言っていいと思う。


 こうして全てを解決して僕自身に余裕がでてきたことで、改めて考えなくちゃいけないことがいくつも出てきた。


 正直言うとちょっと聞くのが怖くはあるんだけど……どうせいつかは聞くことになるんだし、それなら覚悟を聞いて今聞いちゃった方がいいだろう。

 僕が気になっていたことというのは……。


「ねえウィチタ、一つ聞いてもいいかな? 危険がなくなったことでマーナルムの皆は『疾風のたてがみ』に戻ることができるようになったと思うんだけど……君はどうしたいと思ってる?」


 自分達と同じ種族である獣人達のところに戻ることができるようになった、マーナルム皆の去就についてだ――。

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