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ドンピシャ


「ガルルッ!」


 人狼の全身は、その全てが凶器だ。


 人狼が唸り声をあげると、長かった爪が更に伸びる。

 あれは……魔力を使って爪を伸ばしてるのか?


 強力な魔物の中には魔力を使って、人間では不可能な現象を起こせる個体がいる。

 どうやら人狼も、そういった力を持っているようだ。

 鋭く伸びた爪が、ウィチタへと襲いかかる。


「ふっ!」


 狙いを首筋と看破したウィチタが、シルバーファングの姿勢を変え、自分の首をわずかに横に傾ける。

 二つの動きの相乗効果で、爪の軌道から逃れてみせた。


 続いて放たれるのは、人狼の蹴り。

 相手の機動力を削ぐ狙いがあるのか、攻撃の対象はウィチタが乗っているシルバーファングだ。


「――させない」


 だが人狼の蹴りに対して、横から飛んできたカーリャがマチェーテの動きを合わせる。

 人狼は即座に蹴りを中断し、そのまま後ろに下がった。


 後方に下がろうとする人狼が大きくジャンプした瞬間に合わせて、マリーが魔法を氷の槍を放つ。

 水槍以上の威力を持つ一撃は、見事なまでに人狼に命中する軌道を取った。


「――シッ!」


 ……だが人狼は飛んできた氷槍が自分に当たるとわかった瞬間、何もない空中で腰をかがめた。

 そしてそのままグッと下半身に力を入れると……何もない場所を蹴り、移動してみせた!


 空中ジャンプ……なるほど、そんなことまでできてるのか。

 ただ人狼にはわずかに疲労の色が見えた。


 どうやらそう連発できる技ではないようだ。

 たしかにそれなら、さっきから使っててもおかしくないもんね。


 ウィチタとカーリャは距離が取れたのをいいことに、そのまま反転して駆け始める。

 マリーは安全のため高度を取り、それを見た人狼がウィチタ達の後を追う。


 速度は人狼の方が速いが、マリーが高空から魔法を放っているおかげで気が散って本来の速度は出せていない。


「ほら、こっちだワンコロ!」


 ウィチタ達はつかず離れずの距離を保ちながら駆け続けている。

 その動きは事前に想定していた通り。


 よし、これならこのままいけそうだ。

 僕は目を開き、マリーと視界を共有しながら自分でも動き出すことにした。


「行くよ、マックス!」


「……(にゅるん)」


 僕はマックスと一緒に、目的のポイントまでやってくる。


 すると遠くから、戦いの音が聞こえ始める。

 最初は小さかった影がどんどん大きくなっていき、そこにウィチタ達と人狼の姿が目に見えてきた。


 僕とマックスは藪の中に隠れジッと息を潜め……ここだというタイミングでマックスが魔法を発動させる。


「……(にゅるんっ)」


 くねくねとマックスが動くと同時、地面がめくれ上がる。

 土はみるみる鋭い五本の槍へと成形されていく。

 タイミングを見逃さないよう、戦況をしっかりと観察する。


「そこっ!」


「はああっっ!!」


 ウィチタとカーリャが放った一撃が、人狼に命中した。

 慌てて下がった人狼へマリーの追撃が襲いかかり、それを避けるためにこちらへ飛んできた。


 その瞬間、マックスが土槍を人狼へ飛ばす。

 人狼は槍に気付き、強引に制動。

 空中ジャンプを使い、右側に飛んだ。


 よし……ドンピシャ!


「グアウッ!!」


 僕達と同様隠れていたジルが、空中で身動きの取れなくなった人狼の喉元へ牙を突き立てる。

 そしてジルと人狼が飛び込んだ地面が……べこりと凹む。


 地面に偽装した蔦の縄の下には、僕とマックスで事前に用意しておいた落とし穴が広がっている。


 ジルと人狼はそのままもつれ込むように穴の中に入っていった。

 そしてマリーは空を飛び、マックスは地面の中を潜って穴の中へと入っていく――。


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