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答え


 ふらふらとしたおぼつかない足取りで、僕は騒いでいる集落の皆の近くに腰掛けた。

 相変わらず皆からはほとんど絶え間なく声をかけられるが、何を言われているのか全然頭に入ってこない。


 僕の脳内は、さっきグルド君に言われた言葉で完全に埋め尽くされてしまっていた。


(うぅん……カーリャが僕のことを……?)


 僕はそんなことはないと思うんだけど、グルド君はなぜか確信している様子だった。

 たしかに考えてみると、マーナルムはカーリャ達女性陣と子供達しかないので、男っ気がない。


 好きな人がいるとなると今まで滞在していた集落の中の誰かか……僕ということになる。


 とりあえず笑みを浮かべたまま言葉を返すけれど、内心は千々に乱れている。

 何を言っているのか自分でもよくわからない状態だったけれど、一応なんとかやり過ごすことができた。


「ふぅ……」


「お疲れ様です、アレスさん」


 さっきのグルド君と同じように、集落の人達から少し離れたところで一息ついていると、ウィチタがやってきた。


 一緒に居たカーリャはというと、酒の勢いで勢いよくアタックをしかけているグルド君を適当にあしらっていた。

 しつこくつきまとおうとする彼にカーリャが鉄拳を振るうと、なぜか嬉しそうな顔をしていた。


 いいのが入り吹っ飛んでいくグルド君を見て、わあっと歓声が上がった。

 向こう側にはできあがっている不思議な空間に、思わず苦笑がこぼれてしまう。


「どうかしましたか?」


「うーんとね……」


 聡いウィチタには、僕が悩んでいることなんてあっという間に見抜かれてしまった。

 一人で考えていても埒が明かなそうだったので、いっそのことさっきの一件をウィチタに話してしまうことにする。

 お酒の勢いもあってか、一度話し始めると言葉はするすると出てきた。


「――って感じでさ。笑っちゃうよね、カーリャが僕のことを好きだなんて……」


「カーリャはアレスさんのこと、好きですよ?」


「そうだよね、そんなわけ……え?」


 ぴしりと身体が固まる。

 ゆっくりと横を向くと、ウィチタは今まで見たことがないほど優しい笑みをこちらに向けながら、そっと僕の手を握った。


「カーリャだけじゃないです。私も、イリアもエイラもオリヴィアも……皆、アレスさんのことが好きです」


「それって……ライクの方で合ってる?」


「いえ、ラブの方です」


「マジっすか……」


 思わず変な語尾がついてしまうほどに、僕はテンパってしまっていた。

 カーリャだけでもと思ってたのに、まさか年長組の五人全員が、僕のことが好き?


 そりゃあもちろん嫌われていたとは思ってないよ?

 実際ウィチタなんかとは、その……いわゆるいい雰囲気ってやつになったこともあるし。


 彼女達の僕への好意はてっきり助けてくれた恩人へのものだと思っていた。

 でもそっか……ライクじゃなくて、ラブなのかぁ……。


 その気持ちは嬉しい……と思う。

 けどどうやって答えを返せばいいのかが、僕にはわからない。

 こんなことならバリスにでも、男女の話を聞かせてもらうべきだったかもしれない。


「私達、アレスさんを困らせるつもりはないんです。皆今の時間が、すごく楽しくて、幸せだから……。好意に気付かれちゃったからこうしてお教えしましたけど、言われない限りは皆黙ってようって話になってましたし」


 知らぬ間に、淑女協定のようなものまで結ばれていたらしい。

 けどそっか……皆楽しくて幸せなら、僕も嬉しい。


 いつかは答えを出さなくちゃいけない時が来るのかもしれないけど、今すぐに答えを出す必要がないっていうのなら……お言葉に甘えさせてもらおうかな。

 だって僕も……今の暮らしに、幸せを感じてるからさ。


「ちなみに獣人は一夫多妻ありなので、全員お嫁さんにしても大丈夫ですよ?」


「ええええっっ!?」


 今日イチで一番大きな声を出した僕を見て、ウィチタが笑う。


 こうして僕は彼女に手玉に取られながらも、無事祭りを乗り切ることができたのだった。

 また新たな悩みの種が増えたわけだけど……とりあえず思考を切り替える。


 ウィチタ達のことは、後で考えることにしよう。

 まずは『猛る牙』の人達の問題を解決しなくっちゃ。


 冷蔵保存のためにマリーには貯蔵庫に留まってもらい。

 残るメンバーにグルド君を始めとした案内人の『疾風のたてがみ』の人達を引き連れて、『猛る牙』の集落へと向かうのだった――。


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