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疾風のたてがみ


「これは……」


「思ったよりは荒れてない……かな?」


 やってきた集落は、表面上はさほど問題が起こっているようには見えなかった。

 家が焦げていたりした様子もなく、集落を守る衛兵らしき人達の目もさほど血走っているわけではない。


 これなら普通に話を聞いてもらえそうだ。


「行ってきます、アレスさん。吉報を待っていてください!」


「うん、お願いね」


 人間は亜人とここ数百年の間、ほとんど没交渉となっている。

 何でも昔に色々といざこざがあったせいらしいけど、とにかく亜人達の人間への態度はあまり良いものではない。


 マーナルムの皆も森の中を進み疲れ果てていなければ、僕の言うことを聞いたりすることはなかったかもしれない。


 いきなり人間である僕を連れて行くと色々と問題になるだろうということで、まずはウィチタ達に話を付けてきてもらうことにしたのだ。


 どうやら衛兵の男達とも面識があるらしく、ウィチタとカーリャはそのまま集落の中へ入っていく。

 そしてさほど時間もかからないうちに戻ってきた。


「きちんと許可を取りましたので!」


「鉄拳……制裁」


 よく見てみると、ウィチタは服が土で汚れているし、カーリャは物騒なことを言っている。

 明らかにもめ事の気配がするんだけど……許可が取れたなら大丈夫、だよね?


 ジル達を引き連れて集落に歩いていくと……。


「「は、ははああああっっ!!」」


 衛兵の人達から、大仰に頭を下げられた。

 どうするか迷ったけれど、侮られていいこともないと思い特に訂正をさせたりすることもなく中に入る。


 ぐるりとあたりを見渡すと、戦争が起きているとは思えないほどに綺麗に整理されていた。

 魔物の肉なんかも干してあり、食料に困っている様子もない。中を歩いている人たちの顔色も悪くない。


 案内されるまま、集落の中で一番大きな家の中へと入っていく。

 するとそこには明らかに顔を殴られた様子の若い獣人と、どこか彼に面影のある少し年の行った中年の男の人の姿があった。


「お、おお……」


 ウィチタの話ではこの村を治めている長であるというおじさんは、僕の頭に乗っているウールや引き連れてきたジル達を見て頭を下げた。


 一目見ただけで彼らが聖獣であることがはっきりとわかったのか、感激して涙まで流していた。

 頭を地面にこすりつけながら泣いているその様子は、こちらが少し引いてしまうほどだ。


「まさか聖獣使い様が本当に現れてくれるとは……これも女神様のお導きに違いない!」


「父さん、何もこんなやつらに頭を下げなくたって……」


「――馬鹿者! すみませんアレス様、こやつはうちの倅なのですが、まだまだ見る目が足りなくてですな……」


 村長のおじさんはギルディアといい、息子の次期村長はグルドというらしい。

 グルド君は僕の後ろに控えているカーリャの方を睨んでいた。

 ……どうやら彼女が鉄拳制裁をしたのは、あのグルド君のようだった。


 ここには平和的な話し合いをしに来たんだけど、大丈夫かなぁ……。

 僕が苦笑しながらそんなことを思っているとはつゆ知らず、平身低頭しながらかしこまっているギルディアさんは一度バッと顔を上げ、そしてまた頭を下げた。


「アレス様、どうか、どうかこの村をお救いくだされ……」


「……えっと?」


 起こっているとばかり思っていた戦争は起こっていない様子で、なぜか村長さんに頭を下げられてお願いをされている。


 次期村長のグルド君とは明らかにこちらにいい態度を抱いていない様子だけど、彼も父に倣ってしっかりと頭を下げている。

 察するにこの村に何かが起こっているのは間違いないみたいだ。


 想像していない事態の連続にめまいがしてきそうだった。

 けどもし彼らが困っているのなら、手を差し伸べることができたらと思う。


 困った時はお互い様だし、それにここはマーナルムの皆がお世話になっていた場所でもある。

 僕にできることなら喜んで手を貸させてもらおう。


 というわけで僕はギルディアさんから、マーナルムの皆がいなくなってから今に至るまでの話を聞かせてもらうことにするのだった――。


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