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歓迎


 積載量に一番余裕がありそうなのは明らかに体格の大きなジルだ。

 なのでとりあえず僕が抱え込むような形で運ぶことになった、のはいいものの……


「きゅっ!」


「ちょ、ちょっとウール、危ないって!」


 どうやらウールはかなり好奇心旺盛な子らしく、運ぶのに一苦労だ。

 僕はそこまで脚の力が強いわけじゃないので両手で抱えるわけにもいかないので、姿勢を維持するのだけで精一杯だ。


「わふっ」


「きゅっ!」


 僕の従魔は魔物の種類は違うけれど、ある程度意思疎通をすることができる。

 ジルが軽く鳴くと、ウールはそれに元気に返した。

 勢いよく動いた毛玉が飛び上がり、僕はなんとかそれを両手でキャッチする。


「だ、だからウール、あんまり動かれると……うわわっっ!?」


「アレスさんっ!!」


 けれど急に両手を放したせいで完全に重心がズレてしまい、前のめりになってしまう。

 た……倒れるっ!


「大丈夫ですか!?」


 けれど僕がそのまま地面に落っこちるよりも、ウィチタが飛び上がる方が早かった。


 彼女はシルバーファングの上から飛び上がると、そのまま倒れそうになっている僕の身体を引き戻し、そのままシルバーファングの上に着地したのだ。


 す、すごい……王都で前に見たサーカス団のパフォーマーみたいな身のこなしだ。


「あ、ありがとうウィチタ」


「いえいえ、これくらいなんてことはありませんよ」


 見ればウィチタはキュッと脚の力だけでシルバーファングの上に乗り、見事に姿勢を制御している。

 その姿は、惚れ惚れするほど美しかった。


「綺麗……」


「な、なあぁっ!?」


 ぽつりと呟くとウィチタの姿勢がなぜか急に乱れ、前傾姿勢が崩れてぐちゃぐちゃになっていた。


 ……?

 急にどうしたんだろう?


「ウィチタ、後で乗り方の指導してもらえる?」


「は――はいっ! 私で良ければ、喜んで!」


 一瞬でキリッとしたいつもの状態に戻った彼女と併走しながら集落へ戻る。

 こうして外から眺めてみるのは久しぶりだけど、なんだかずいぶんとしっかりしている。




「わあっ、新しいもこもこさんがいる!」


 帰ってくると、どうやら心配で僕達を待っていたらしいマレーナちゃんが、めざとくウールのことを見つけた。


「ウールっていうんだよ。仲良くしてあげてね」


 抱えていたウールを下ろしてやる。

 着地してから不安そうな顔をしてこちらを見上げるウールに頷いてあげると、


「……きゅっ!」


 意を決した様子で、ウールはマレーナちゃんのいる方へ跳ねていく。

 マレーナちゃんはとててっと近付いていくと、そのままウールを抱え上げた。


「もこもこ!」


「きゅきゅっ!?」


 いきなりわしゃわしゃとされて、ウールが目を白黒させている。


「よろしくね、ウールちゃん!」


「きゅきゅっ!」


 ただ好奇心旺盛な者同士気が合うのか、二人が打ち解けるのは一瞬だった。


「よし、とりあえずこれで……」


 ウィチタ達に解散を告げようとすると、後方からパアアッと光が溢れてきた。

 どうやらウールが回復魔法を使ったようだ。


 急ぎ戻って確認してみると、どうやらマレーナちゃんがあちこち駆け回っているうちにできた擦り傷が治っているらしい。


「ウールちゃん、すごーい!」


「きゅきゅっ!」


「ねぇみんな、すごいんだよ! ウールちゃんがね……」


 マレーナちゃんは子供達が集まっているところへ、ウールを抱えたまま突撃し始めた。


 ウールは色んな子達からもしゃもしゃと戸惑っているようだった。

 けどどうやら楽しいらしく、目を細めて気持ちよさそうに鳴いている。


「本当なら回復魔法がどのくらい使えるのかを試してもらうつもりだったんだけど……どうにもそんな雰囲気じゃなさそうだね」


 屋敷の中から一際大きな声が上がるのを聞いて、苦笑しながら告げる。


「……私も」


「私も行くっ! 一緒に行こ、カーリャ!」


 どうやらカーリャとエイラちゃんももふもふしたいと思っていたらしく、屋敷の中へと入っていった。


 それを見て僕とウィチタ、イリアの三人が顔を合わせて微笑み合う。


「僕らも混ざりに行こっか」


「ですねぇ」


「わ、私もちょっと触ってみたいです!」


 そして足並みを揃えて屋敷の方へ向かうことにした。


 ひとしきり騒いだ後はささやかながらも、ウールの歓迎パーティーを開かせてもらった。

 こうしてウールは皆に無事受け入れてもらうことができたのだった。


 大丈夫だよ。

 君はもう、一人じゃないんだ。


 だから……これからよろしくね、ウール。


【しんこからのお願い】


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「よろしくね、ウール!」


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