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新たな聖獣


 普通の魔物と聖獣を見比べる方法は簡単だ。

 それは、色の違いである。


 ジルがシルバーファングなのに金色であるように、ファイアスパロウのマリーが青色をしているように、よく見ると彼らの体色は通常の個体とは異なっている。


 ただ僕は目の前のこの子の元の個体を知らない。

 けれど僕の『テイマー』としての嗅覚が告げていた。

 僕はこの子をテイムすることができる……と。


 怪我の様子を確認するために、くるりとひっくり返す。

 毛の内側にはいくつも傷があって、肉付きもあまり良くない。

 このまま放っておくと、かなり危なそうだ。


 そのボロボロの姿は、僕にあるものを想起させる。


 それは――以前の従魔の皆の姿だ。

 今は元気に暮らしているマックスやビリー達も、最初からあんな風に明るかったわけではない。


 獣人達からは聖獣として扱われている彼らは、魔物という共同体の中では異分子だ。

 故に遠ざけられることや嫌われることも少なくなかった。

 実際ジルなんかは、僕と出会ったばかりの頃はかなりすねた子だったしね。


 そんな子達を見ると、僕の心は痛む。

 そしてだからこそ……


「助けてあげなくっちゃ、いけないよね」


 僕の『テイマー』というジョブは、あまり好まれるものではない。

 なかなかパーティーに入れてもらえなかったり、理不尽な目を受けたりしてきた僕には、彼らの気持ちがほんのわずかにわかる。

 だからこそ寄り添ってあげたいと、そう強く思うのだ。


 そっと優しく撫でるように、毛玉の子のお腹に触れる。

 身体はどくどくと脈打っていて。体温が人肌より高いからか、しっかりとした熱を感じた


「……きゅっ?」


 薄く目を開いた毛玉が、こちらをジッと見つめる。

 僕はそれを見つめ返しながら、手を使って身体をまさぐる。


「きゅっきゅっ」


 くすぐったそうな顔をされたかと思うと、ぺろりと手を舐められた。

 どうやらあまり人見知りはしないタイプらしく、楽しそうだ。


 ただ不安を感じているからか、そのつぶらな瞳を揺らしながらこちらを見上げている。

 大丈夫だよ、大丈夫。


 僕はそっと『テイマー』のスキルを発動させた。


「――テイム」


 僕と毛玉の子を、緑色の光が包み込んでいく。


 僕のテイムは、強引に魔物を従えるスキルではない。

 これはあくまでもお互いの同意がなければ、スキルは発動しない。


 結果は――無事成功。


 僕の魂の回廊にまた一つ、新たな従魔が加わったのがわかった。

 テイムが成功したのなら、次にすることは決まっている。


「君の名前は――ウールだ」


「――きゅっ!」


 どうやら気に入ったらしく、しきりに首を縦に振っている。

 次に従魔強化を発動させると、ぱああっと身体が光り始める。


 光が収まるとそこには――さっきよりもふもふ度を増して丸っこくなったウールの姿があった。


 身体が大きくなったので体力はついたと思うけど、毛の下に見えている傷が消えたわけじゃない。


「もきゅっ!」


 ウールがぽよんと跳ねると、その身体が光り出す。

 そしてみるみるうちに――身体の傷がなくなっていった!


「これは……回復魔法?」


 回復魔法は僕のパーティーだと『セントプリースト』のヒメが使っていた、人の怪我や病気を治すことのできる魔法だ。

 使い手のかなり数が限られているレアな魔法だ。


 少なくとも魔物で回復魔法を使うことができる個体は、極めて少なかったはずだ。

 多分だけどこれが……ウールの持っている特別な力なんだろうな。


「きゅっ」


 元気を取り戻したらしいウールが、大きく跳ねる。

 そのまま僕の頭の上に乗ると、楽しいからか陽気なリズムで鳴き始めた。



 ふぅ……とりあえず手遅れになる前に間に合って、良かったぁ。

 安心しながらくるりと後ろを振り返ると、そこには……


「私は……私は奇跡を目撃致しました!」


「す……すごいすごい! アレスさん最高!」


 興奮しているマーナルムの年長組の姿があった。

 ウィチタなんかなぜか感激しながら滂沱の涙を流しているし、エイラちゃんはテンション高く飛び跳ねている。

 エイラちゃんのジャンプに合わせて、ウールも僕の頭の上でもぞもぞ動き出す。


 ちなみに少し視線を外してみると、ジルやマリー達従魔組は新顔のウールに、優しい顔を向けていた。


「きゅきゅんっ!」


 自分が歓迎されていることがわかり、ウールが楽しそうに鳴いた。


 こうして僕らに、また新たな仲間が加わったのだった――。


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