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マックスの力


 種を植えたら、次の日には発芽した。

 これだけも十分おかしなことなのだが、異変はそれだけでは終わらなかった。


 なんと次の日になると……茎がにょきにょきと伸び始めていたのだ!

 更に一日待ってみると、茎が太くなり、一気に成長していた。


 明らかにおかしい……一応ここに来るにあたって何冊か農業の書物を読んできたけど、少なくとも発芽までにも数日、しっかりと茎を伸ばすようになるまでには作物によるけど半月前後の時間がかかると書かれていたはずだ。


 通常の何倍の速さで成長し続けている作物の変化の原因を突き止めるべく、僕とオリヴィアは対照実験をしてみることにした。


 鋤と鍬を使い耕した土にも、いくつか種を植えてみたのだ。

 するとそちらの方は、僕が事前に聞いていた速度で成長を始めた。


 となると、畑に植えている作物がものすごいスピードで成長している原因は一つしか考えられない。


「もしかしなくても……これがマックスの力ってことだよね」


「間違いないでしょうね」


 アースワーム自体にも、土壌を改良させる力はある。

 けれどそれはあくまでも土の地味を良くする程度のものであって、これほど急激な変化をもたらすようなものではない。


 つまりこれこそがマックスが持つ聖獣としての能力。

 彼の聖獣としての能力は――作物の成長速度を促進させる力。


 ジルの配下のシルバーファング達の手綱を取り、その力の一部を自分に還元できる力に、シェフの吸収したものを自在に吸収し、分解・成形して吐き出すことのできるクラフト能力。


 この二つも十分に強力なものだと思っていたけれど、彼らに次いでわかったマックスの能力も、決してそれらに劣るものではない。


 というか純粋に、めちゃくちゃに有用な力だと思う。

 何せ彼が土地を耕せば、それだけでその地の豊穣が約束されるわけだからね。

 そういう意味ではジルとシェフの力と比べても、一番聖獣っぽい力だ。


 僕はマーナルムの皆と合流する前に、安全に暮らせるように魔物達を結構間引いた。

 それに皆が満足できるだけの食肉や毛皮を確保するとなると、森の生き物達を刈り尽くしてしまうかもしれない。


 この森で定住生活を送るのなら、森との共生は必要不可欠だ。

 そういう意味ではこのマックスの力は、正しく今の僕らに一番必要な能力と言えそうだった。


(こうなるとビリーとマリーの力も気になってくるな……)


 なんていう風に好奇心がむくむくと顔を出してくるけれど、それは一旦置いておくとして。


「すごいじゃないか、マックス!」


 興奮しながらマックスを抱きしめてやると、嬉しそうな感情が伝わってきた。


 ――マックスは誰かの役に立つのが好きな子だ。

 そのため近頃は色々と頼られることが多くてやりがいを感じているらしく、いきいきとし毎日を過ごしているように見える。


「なんにせよこうなると、既存の農業の知識はあんまり役に立たないかもね……ごめんね、農作業自体、かなり手探りになっちゃうかもしれない」


「いえ、収穫までの速度が上がるんですからそんなことささいなことですよ!」


 ここ最近ですっかり農作業が板についてきたオリヴィアがそう言って笑う。


「よし、それじゃあちゃっちゃと雑草を抜くわよ」


「「「はーいっ!」」」



 オリヴィアに言われて元気よく返事をするのは、自発的に手伝いを申し出てきてくれているイリアや子供達だ。


 マックスの耕した栄養抜群の土は、その分雑草もものすごいスピードで成長してしまう。

 そのため定期的に、しっかりと雑草を根っこから抜き取っておく必要があるのだ。


 僕も彼女達に混ざって、一緒に雑草を抜いていく。

 ふと顔を上げると、そこには和気藹々と話をしながらも手を止めずにしっかりと作業をする皆の姿があった。


 狩猟民族である獣人達には助け合いの精神がしっかりと根付いており、手の空いている人間は当然のように他の人達に手を貸す。


 こんなに急成長をする作物なのだから、色々と試行錯誤をしながらの作業になるだろう。

 初めてづくしのことになるだろうから、その分失敗だってたくさんするはずだ。


 けれど皆で力を合わせて作業をしているその光景を見ると、心配は要らなそうだなと、僕はそのまま草むしりの作業に戻るのだった――。


【しんこからのお願い】


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