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神隠し 短編集

神隠し1

作者: 稲葉小僧

私は、ようやく終えた仕事から開放され、家への帰路を歩いている。

普通は、我が家に一番近い駅で電車を降り、バスで30分揺られて停留所で降り、そこから10分ほど歩くと我が家。

しかし、今日は最終電車にギリギリ間に合うくらいの時間で会社を出たため、帰りの電車を降りてもバスは……

二時間前に最終が出た後。


久々に夜道を歩いているのだが、前は、もう少し道路に照明が灯ってたよな?

国道や主要県道などは明るすぎて眩しいほどの照明に照らされているのだが、ちょいと市道や、その脇の路地に入ると、これが真っ暗。

今夜は新月だろうか、月明かりすら無い道を、それでも闇に少しは慣れてきた夜目で歩いている。


あれ?

こんな道、あったっけ?

帰り道を半分ほど歩いてきたので、少し近道しようと路地へ入ったら、知らない家が並ぶ。

いや、道は憶えてる。

子供の頃から、いやってほど歩き、自転車やバイクで走ってる道だから。

だけど、この道に沿って建ってる家やビル……

知らないぞ、私は。


何だ?

ものすごい違和感を感じる。

違和感ありすぎて、本能が、この道から出ろと警告しているのが分かる。

私は元の市道へ戻ろうときびすを返す。


あれ?

少し歩いていただけなんで、すぐに元の道に戻れるはずが……

いくら歩いても見知らぬ家とビルが建っている路地が続く。


焦る。

早足になり、そして、軽く走り、ついには全速力!


はぁ、はぁ……

この道、何だ?

なんで、こんな路地から出られない?


焦る私は自分の現在位置を確認しようとスマートフォンを取り出す。

GPSで自分の位置を地図アプリに表示……

ん?

圏外表示もおかしい(ここは人里離れた山奥ではない)が、問題はGPSが一つも衛星を掴めないとエラー表示していることだ。


落ち着け、落ち着くんだ、私。

何かの気象異常の可能性だろう。

とりあえずスマートフォンの(GPSを使わない位置表示もできる高性能機なのだ)単独位置表示モードに切り替えると……


地図の表示が私の見慣れた近所の地図ではない。

何だ、これは。


「神隠しと言うんだ」


誰かが、私の耳元でささやく。


「誰だ?!」


「知ってるだろ?お前は、こんな話が好きだったよな……」


「おま……」


次の日の朝、ボランティアで近所の清掃に出ていた老人たちは、見慣れぬ落としものに戸惑っている。

そこには、早朝から110番で呼ばれた警官もいる。


「なんでしょうなぁ……いくらなんでも、服もズボンも財布も、スマートフォンすら脱いで、どこかへ行ってしまう人なんているんですかね?」


老人たちの代表が警官に聞く。


「ああ、この落とし物の持ち主は分かりました。中に免許証とカードも残ってたので。別の警官が近くの家に本人確認に向かってるんですが……あ、その警官から知らせが入ったようです。何?!家の主人は帰ってないって?鍵を開けた様子もない?合鍵で開けてもらったが帰って寝ていた様子もなし……」


これが神隠し事件の発端……


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― 新着の感想 ―
[良い点] 「神隠しと言うんだ」 このセリフがめちゃくちゃゾッとしました! しかも発端なんですか!? 怖いですわ!
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