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第6話後篇

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「あの子、さっきの!」

驚くバルバートルさん。俺も声には出さないが相当驚いている。桜も同じだ。


「歩美!!」

「助けて!お父さん!お母さん!」

「お願い!歩美を放して!」

「うるさい!騒ぐな!」

歩美ちゃんたちの声が聞こえる。男はだいぶ興奮しているようだ。周りの人たちはうごけないでいる。

「下手に動いてみろ、このガキを殺すぞ!」

そう言って男は包丁を歩美ちゃんにむける。

「やめて!」

涙を流しながらお母さんが言う。


「こりゃまずいな」

と、様子を見ながらつぶやく。

「なんとかできないの?」

「下手に動くと歩美ちゃんがあぶない。でも動かなくてもこのままじゃあぶないな」

考えて、思いついた方法は

「バルバートルさん、携帯あるよね?」

「あるわよ」

「じゃあエレベーターに戻って警察に連絡して。桜今から俺は気付かれないように相手の側面に移動する。合図したら男の注意をひいてくれ。男が桜に気を取られているうちに俺が歩美ちゃんを助ける」

「わかりました」

「わかったけど、できるの?そんなこと」

バルバートルさんが不安そうに聞いてくる。

「まっやるしかないでしょ。じゃあ頼んだよ二人とも」

うなずく二人。それぞれ行動を開始する。


デパートの中は身を隠すのには困らなかったので、男に気付かれずに動くことは難しくなかった。最適な位置に移動し桜に合図をだす。

桜が声を出し、男の注意がそちらにむく。

俺は商品の間を抜け男に肉薄する。男がこちらに気付いた時にはもう相手の右手に手刀をいれ、包丁をおとし、関節をきめ左手の力が抜けた瞬間歩美ちゃんを助け出し抱きかかえて男から距離をとった。

「遊馬お兄ちゃん!」

「もう大丈夫だよ。ほらお母さんたちのところに行きな」

「うん!」

お母さんのところに走っていく歩美ちゃん。

「てめぇなにしやがる!!」

包丁を拾い俺にむける男。

「あなたこそなにをしてるんですか、あんな子にそんなのむけて恥ずかしくないんですか?」

「うるせぇ!」

男は包丁で襲いかかってくる。俺は包丁を交わし鳩尾に突きを入れる。

「ぐっ」

男は崩れ落ちる。

「せっかくの家族団欒の時間を邪魔するような無粋なまね、するもんじゃないですよ」



「ありがとう、遊馬くん…ありがとう…」

歩美ちゃんのお父さんが涙を流しながら俺に感謝してくれている。

「俺だけの力じゃないですよ。彼女たちがいてくれたおかげですよ」

あの二人がいなければここまでスムーズにことは進まなかっただろう。

「そうだね、君たちもありがとう」

「いえ、そんな…私は何も」

「私も遊馬さんの指示に従って動いただけですから」

謙遜しながら二人は答える。そこまで謙遜しなくていいと思うんだけどなぁなんて考えていると、クイクイと服が引っ張られる。

「ん?」

「遊馬お兄ちゃん」

「歩美ちゃん」

俺はしゃがんで目線を歩美ちゃんにあわせる。

「歩美ちゃん、怖かった?」

「うん…、すごく怖かった…」

「そっか…」

俺は彼女の頭をなでてやる。少しでも気持ちが和らぐように。

「えへへ、お兄ちゃんになでてもらっちゃった」

歩美ちゃんがくすぐったそうに言った。

「いやだった?」

「ううん、すごくうれしい」

「そうか、よかった」

「お兄ちゃん…」

「なに?歩美ちゃ…」

言い終わる前に彼女の唇が俺の頬にふれていた。

「ありがとう、お兄ちゃん。大好き!」

数秒間思考停止する俺。あらかじめいっときますが俺は断じてロリコンじゃありません。いやだって相手が小学生だからって、いきなりこんなことされればどうしたらいいかわかんなくなりません?

思考が正常な状態にもどる。

「歩美ちゃん、こういう事するのは大人になって旦那さんになってくれる人とじゃなきゃダメだよ」

「じゃあ大人になったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!」

「えっ」

「嫌なの…」

「うぐっ」

今にも泣きだしそうな顔をする歩美ちゃん。困った非常に困った。歩美ちゃんは泣きだすとなかなか止まらないだよなぁ。

「ありがとう…歩美ちゃんすごくうれしいよ…」

「やったー!」

はぁ…もっとなんか違う言い逃れ方があっただろうに。俺のバカ。

「よかったな、歩美」

「遊馬君、歩美をよろしくね」

あんたら、人事だと思って。

「へぇ、三条君ってそういう趣味だったんだ。こういうのってロリコンって言うんだっけ?」

「よかったですね遊馬さん。お幸せに」

バルバートルさん蔑むようなま目で人を見るのはやめてください。俺はロリコンじゃありません。桜さん、その笑顔すごく怖いです。俺泣いちゃうよ?泣いちゃっていいですか?なんでだろう歩美ちゃんの満面の笑みがとても残酷に見える。



歩美ちゃんたちと別れ、俺たちはバルバートルさんを彼女の家まで送った。

「ありがとう、三条君」

「…どういたしまして」

俺はもうぐったりだ。今日はいろいろありすぎた。

「なんか、今日は三条君のこと見直しちゃったわ」

「そりゃ、どうも」

「もっと喜んでくれてもいいんじゃない?」

「疲れすぎてそれどころじゃないんだよ」

俺の疲れは現在進行形でたまり続けている。隣にいる桜が負のオーラを流しっぱなしだからだ。桜の近くは周りより5℃ほど低く感じられる。

「とりあえず今日はごくろうさま。もう帰って休んで」

「そうするよ」

「じゃあまた月曜日に」

「えぇ御巫さんも気をつけて帰ってね」

「はい」



「あのぉ桜さんそろそろ機嫌を直していただけないでしょうか?」

「あら、別に私はぜんぜん機嫌なんて悪くないですよ」

いや、そんな顔で言われても説得力ありません。

「はぁ、いいよもう。それよりも今日は誰かにずっとつけられてたなぁ」

「やはりそうでしたか、よろしかったんですか?バルバートルさんに伝えなくて?」

「素人じゃなそうだたけど武器は持ってなそうだったから、まだいいと思うけど。これから少し気をつけた方がいいかもな」

今伝えてバルバートルさんを不安にさせなくてもいいだろう。でもいつかは伝えなくてはならない時が来る。せめてその時までは普通に笑っていてほしい。だから俺がしっかりしなくてわ。

「私もいますよ」

「わかったのか?俺の考えていること」

「えぇ」

桜にはかなわないな。俺もまだまだ半人前だ。

「これからもよろしくお願いします」

「はい、だから無理はしないでくださいね」

「善処します」

桜と一緒ならこれからもがんばれる。そう思った。





















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