第6話前篇
「これなんてどうかしら?」
「そうですね…、こっちもいいんじゃないですか?」
「それもいいわねぇ」
「…」
今日は土曜日。ここは俺たちの住んでる町にある大型デパートだ。今はその洋服売り場に俺、桜、バルバートルさんの3人で来ている。
俺たちの住んでいる町、時雨町は人口がそれほど多いわけではないのにこういったデパートなどが充実している。
なぜ俺たちがここにいるかというと、それは昨日の学校にさかのぼる。
「明日、買い物に出かけたいんだけど」
昼休み、昼ごはんを食べようとしているとバルバートルさんが声をかけてきた。
「だから、俺に案内しろと?」
「えぇ護衛を兼ねてね」
「わかった。桜も一緒でいいかな?」
「むしろそうしてもらったほうがありがたいわ」
「ということだ、桜明日大丈夫だよな?」
「はい」
「じゃあ、明日よろしくね」
というふうなことがあり、いまにいたるわけだが。女子の買い物というのはこうも時間がかかるもなのか?何時間服見てれば気がすむんだ?俺が服買う時なんて長くても1時間しかかからないってのに。
「ねぇ三条君あなたはどっちがいいと思う?」
「う〜ん、右かな」
両手に服を持ったバルバートルさんに聞かれ彼女が左手に持っている服を選んだ。
「やっぱりこっちか。うん、これを買うわ」
やっと決まったらしい。これで終わると思ったら、急に腹が減ってきた。時計を見るともうとっくに1時を過ぎていた。
「あら、もうこんな時間?どこかでお昼食べましょうか」
「それだったら、この下の階にレストランがありますよ。今の時間ならすいてると思いますし、そこで食べませんか?」
「賛成!」
「そうね、そうしましょう」
といううことで、俺たちはおそい昼食をとることにした。
「ふぅ、ごちそうさま」
「なかなかおいしかったわね」
「えぇここのレストランはおいしいって結構有名なんですよ」
「これからどうするの?」
「そうねぇ、少し小物が見たいわ」
「えっまだ買うんですか!?」
俺の長い1日はまだ終わりそうにない。
俺たちがデパートの中を歩いていると
「遊馬お兄ちゃん!!」
小さな女の子に出会った。
「こんにちは、歩美ちゃん。お父さんたちと買い物?」
「うん!今日お父さんもお母さんもお仕事お休みだからお買い物にきたの!」
この子は神原歩美ちゃん。俺の家の近くに住んでいる女の子で、確か今小学3年生だ。歩美ちゃんのお父さんとお母さんは共働きで、たびたび俺が彼女の面倒をみることがあった。
「遊馬くんこんにちは」
「こんにちは、神原さん」
彼女の後から来たお父さんと軽く挨拶を交わす俺。お父さんの隣のお母さんとも会釈を交わす。
「遊馬君たちも買い物かい?」
「まぁそんなとこです」
「遊馬君も隅に置けないわね、両手に花じゃない」
「そんなんじゃないですよ」
俺がお父さんたちと話をしていると
「遊馬お兄ちゃん『りょうてにはな』ってなに?」
と歩美ちゃんが聞いてくる
「う〜ん、歩美ちゃんが大人になればわかるよ」
困ったように笑いながら俺は答える。
「それじゃあね遊馬君」
「また今度なにかあったらよろしくね」
「お兄ちゃんまたね」
「またね歩美ちゃん」
俺たちは神原一家と別れ、買い物に戻った。
「今日はありがとう。三条君、御巫さん」
「どういたしまして…」
バルバートルさんの買い物が終わり、俺たちはデパートの出口に向かっている。買い物が終わってみると買った物の量は結構なもので、俺は両手に花ならぬ両手に紙袋状態である。速く家に帰りたいなどと思いながらエレベーターに乗り、1階に降りる。
「きゃぁあああ」
エレベーターを降りるといきなり悲鳴が聞こえた。なんでこのまま終わらせてくれないんだよ…。
「なに?!今の悲鳴!?」
「なにかあったんでしょうか?」
「なにかあったんだろうな」
悲鳴に驚いているバルバートルさん、これといって驚いていない俺と桜。
「なんであなたたちそんなに落ち着いてるの!?少しは驚くでしょう?普通!」
「「なんでも屋だから?」」
「なんで疑問形なのよ…それとハモろな」
「とりあえず見てみよう」
俺たちは物陰に隠れて悲鳴の聞こえたほうを見てみる。
見てみるとそこには一人の中年の男がたっていた。ただの中年の男が立っているだけでは誰も驚かないだろう。問題はその男が手に持っている物にあった。男は右手に包丁、そして左手には…
歩美ちゃんをかかえていた