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第9話後篇

なんなんだあいつ?ただ者じゃないことは確かだけど、偉そうなことをベラベラと。何様のつもりだ?

「くそっ」

すごくイライラする。バイクに乗っていても気が晴れない。

私の名前は長岡陽菜(ながおかひな)。今顔に似合わない名前だなとか思った奴、ちょっとこっち来てみようか。高2だが学校に行くことはめったにない。学校も私のことは諦めているようで何も言ってはこない。親も同じだ。私がどこで何しようとも関係ないといった感じだ。そもそも私があいつらと一緒にこんな風になった原因は親にある。

どこにでもある話しだ、親が原因でぐれるなんて。最初は本当に小さなことが始まりだった。子どものころから口より先に手が出るような性格だったが決してこちらから手を出すという事はしなかった。でもある日、友達の女子がある男子にいじめられているのを見かけた私はその男子と喧嘩し二人とも傷を負った。その夜その男子が父親を連れて私の家に来た。男子の父親は自分の子どもが私のせいで怪我をしたので謝れそう言ってきた。もちろん私は、父に私に非はない、あの男子が友達をいじめていたのが悪いと言った。

しかし、父は私の言ったことを信じてはくれず、私を殴った。嘘をつくな、お前が悪いんだろ、謝りなさい。父はそう言って私に無理やり頭を下げさせた。男子はざまぁ見ろといったふうに笑っている。

悔しかった…

あんな奴に頭を下げることが。

悲しかった…

親に信じてもらえなかったことが。

それからだ、私が親を信じられなくなった。ことあるごとに親に反発し、手も出したこともある。そんな時だった、こいつらと出合ったのは。二人も私と同じだった。

二人に名前は、ショートの茶髪が刈羽乃愛(かりわのあ)、ポニーテールの赤髪が阿賀野心(あがのこころ)。顔と名前が一致しないところも同じだ。私たちは目つきが鋭くて、いつも眉間にしわを寄せたような顔をしている。子どもなんか私たちの顔を見ただけで泣き出しそうだ。

私たちがバイクで走っていると前の方をバイクの集団を走っている。振り返ると後ろにもバイクの集団が走っていた。どれも、改造されたバイクだ。普通のツーリングではなさそうだ。どうやら私たちをどこかへ連れて行くつもりらしい。

「どうする?陽菜?」

隣を走っていた乃愛が聞いてくる。あたりを見回してみるが、抜け出すことは難しそうだ。

「ついて行ってやるさ」

私たちはその集団について行った。




連れて来られたのは郊外の廃工場、周りに民家はなく人もいない。そこには一人の男がいた。見覚えのある顔だ。太田拓真(おおたたくま)、結構有名な不良グループのリーダーである。

「待ってたよぉ、陽菜ちゃん」

太田は小馬鹿にした感じで言った。

「てめぇに下の名前で呼ばれる筋合いはないね」

下の名前で呼ばれるのは嫌いだ。乃愛と心以外は決して下の名前で呼ばせない。

「つれないねぇ知らない仲でもないのに」

「こんな話するために呼んだんじゃないだろ?」

「まぁまぁゆっくりしてけばいいじゃん」

「こっちも暇じゃないんだよ。さっさとしろ」

太田は前々から気に食わなかった。この前もこいつの仲間の何人かとやりあった。私たちは無傷だったが、相手はみんなボロボロだった。

「しょうがない」

太田がそう言うと、ぞろぞろと男たちが出てきて私たちを取り囲んだ。

「お前たちはちょっと頑張りすぎちまったんだ。俺が声かけたらこんなに集まったよ」

なるほど、日ごろの恨みを晴らそうってわけか。

「ふん、ぞろぞろぞろぞろ。女3人に相手にするのがそんなに怖いのかい」

私がそう言うと、

「かっこ悪ぅ」

「それでも男か?」

乃愛と心が続けてそう言う。わかってるこれは強がりだ。いくら私たちでもこの人数相手にして勝てるわけがない。二人もわかっているだろう。

「行くよ。乃愛、心」

「うん」

「ああ」

私たちは男たちに向かって行った。





「おら、さっきまでの元気はどうしたよ。え?陽菜ちゃん?」

「ぐぅ…」

結果は思っていた通りになった。最初こそ私たちが優勢だったが、時間がたつにつれ、相手の方に流れが傾いていった。乃愛と心の方も力尽きて一方的にやられている。

「もう殴るのも飽きてきたし、そろそろ…」

太田はいやらしい笑み浮かべている。何をするかはこの顔を見ればだいたいわかる。太田が私の服に手をかけようとした時、



「おっいたいた。いや〜バイク追っかけるのはやっぱつらいわ」



場違いなのんびりとした声が聞こえた。声のした方を向くと、さっき私たちに財布を返してくれと言ってきた少年がいた。

「あいつは…」

「なんだてめぇは?」

太田も気付き少年に言った。

「通りすがりの財布を返してもらいに来た高校生です」

「財布だと?」

「お取り込み中すみませんがこれあげるんで黙っててください」

そう言いながら懐から黒いボールのようなものを取り出し。太田に投げる。ボールは太田の足元に落ちた。よく見るとそれは…



手榴弾だった。




チュドォォォォン!

「ぎゃぁぁ!」

吹き飛ぶ太田。

「みなさんにもあげますよ」

あいつは手榴弾をいたるところに投げる。工場一体で爆発が起こり、男たちの悲鳴があたりに広がる。1分もしないうちに、男たちは全滅した。あたりは爆撃を受けた後のようだった。一人も死んではいない。少年は爆発の後を見つめ、何かを見つけたようだ。

「やったー!当たりが出た!駄菓子屋でもう1個手榴弾がもらえる!!」

なにその手榴弾10円ガム見たいな扱いされてんの?今の駄菓子屋って手榴弾も売ってんの?

私が心の中でつっこみを入れていると、

「大丈夫ですか?」

少年が私に声をかけ、手を差し伸べてきた。

「なんで私たち私たちを助けた」

私は手を取らずに聞いた。

「あえて言うなら俺の性分かな。男が寄ってたかって女に手を挙げるのが許せないんですよ。迷惑だったら謝ります。まぁほっといたら財布が返してもらえないと思ったのもあるんですけどね」

「迷惑だよ。誰も助けてくれなんて言ってないだろ」

私の言葉に乃愛と心が頷く。私たちのプライドが助けてもらうことを良しとしないのだ。

「失礼しました」

頭を下げて私たちに謝る。

「失礼ついでにもう一つ」

頭をあげて少年が言う。

「どんな理由でこういう事をするようになったかはわかりませんけど、あなたたちはそんなに綺麗なんだから喧嘩なんかして傷つくのはもったいないと思います」

少年の顔はとても真剣な顔だった。私たちを見下して言ってるわけではないのは顔を見ればわかる。私たちは何も言う事ができなかった。

「じゃ、俺は帰ります」

そう言って少年は歩いて行く。

「ま、待て!」

私は少年を呼び止めた。

「お前名前は?」

なぜかはわからない。でも私は少年にそう聞いた。

「俺は三条遊馬、なんでも屋です」

少年は微笑みながらそう言った。その頬笑みに私は見惚れてしまった。



次の日の学校…

「遊馬!俺の財布は!?」

俺の姿を見ると兼一が駆け寄ってきた。

「あっ忘れてた」

「忘れたってどういうことだ!?」

「昨日はいろいろあったんだよ」

すっかり忘れていた。途中まではちゃんと憶えていたんだけどな。最後の最後で忘れちまった。

「今日あたりまた行くから」

俺が兼一に言うとクラスの男子が俺に声をかけてきた。

「三条!なんかおっかない姉ちゃんたちが三条遊馬を出せって校門のところに来てるぞ!」

「おっかない姉ちゃん?」

こころあたりがすぐ最近にあった。

「兼一、財布すぐに帰ってくると思うぞ」

「?」



「よくここがわかりましたね」

俺が校門に行くと、やはり昨日の3人がいた。ところどころに包帯が巻かれている。

「今日はどうしたんですか?」

「あ、あの!」

ロングの子が口を開く。

「昨日はありがとうございました!」

3人は頭を下げる。

「え、いや、でも迷惑だったって…」

良いなりお礼を言われて戸惑う俺。

「あれは…その…、照れ隠しって言うか…強がりって言うか…。とにかくすみませんでした!私たちあの後話し合って今日お礼を言おうって、もう喧嘩はしないようにしようって決めたんです」

「そうだったんですか」

彼女たちが喧嘩をしないと決めてくれたことは嬉しい。

「それと、今日はお願いがあって来ました」

「お願い?」

「私たち3人になんでも屋の手伝いをさせてください!」

「「お願いします!」」

と、お願いされてしまった。どうしよ。

「う〜ん」

腕を組んで考える。3人の方を見るとなんか目が少しうるんでるような気がする。もとの顔が綺麗だから破壊力は絶大だ。

やめて!そんな目で俺を見ないで!断れなくなっちゃうから!

そんな俺の心の声が通じるわけもなく、3人は俺を見てくる。

「わかりました、お願いします…」

俺のバカ…

「「「はい!」」」

3人はとても喜んでいる。この顔を見ると自分の決断も良かったたんじゃないかと思える。

「そういえば、まだ名前聞いてませんでしたね」

ふと思い出した。

「私は長岡陽菜です」

「刈羽乃愛です」

「私は阿賀野心」

「よろしくお願いします。長岡さん、刈羽さん、阿賀野さん」

「三条さん、私たちは下の名前で呼んでください。呼び捨てでいいです。それと敬語もいりません」

俺の言葉に長岡さんがそう返す。

「えっ」

「お願いします」

また例の目で俺を見る。もう俺は断れない。

「わかった。俺も遊馬でいい」

「遊馬さん、これからよろしくお願いします!」

「「よろしくお願いします!」」

こうして陽菜、乃愛、心の3人は俺の手伝いをすることになった。桜になんて言えばいいんだろ。

「あの遊馬さん、遊馬さんが言ってた財布のことなんですけど…」

「ん?」




「てめぇどういうことだ?あの財布には600円しか入ってなかったそうじゃないか?」

俺は兼一に言う。兼一はボロボロで、顔ももう誰だかわからないくらい腫れている。俺がやった。

「ずみばぜん…でぼ、あでがぜんざいざんなんでず…」

顔が腫れているせいで話しづらそうだ。

「600円が全財産?てめぇはどこの小学生だぁぁぁぁぁ!!」

「ぎやぁぁぁぁぁぁ!!」

これから先は自主規制です。この様子を見ていた人はショックが大きすぎてしばらく眠れなくなったらしい。兼一病院に送られしばらくの間学校に来ることはなかった。

この事件は「600円の財布の惨劇」として語り継がれることになった…。






























前編と後編のバランス間違えました…。もっと計画的になりたいです。コメントお待ちしています。

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