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ファントムレイド  作者: 高町 凪
解明編
7/17

アリア・フォートルクスの秘密

サブタイも中々パッと出てこないものですね。


そしてやはりネックは戦闘描写。表現するって難しいです。

秀東女学院という名門校に通う暁メンバーの一人、アリア・フォートルクス。

当然ながら女子生徒しかいないこの学院内でも、彼女の美貌に全員が目を引かれる。


「あ、見て見て! アリア様よ!」

「はぁ~・・・なんてきれいな方なのでしょう」

「成績優秀、眉目秀麗。非の打ちどころがない完璧なお方」

などなど、彼女を褒め称えるような声がそこらじゅうで上がる。しかしそんな中本人はというと。


(う~ん。皆わたしを褒めてくれるのは嬉しいけど、もっと普通に話しかけてくれるほうが気が楽なのよね)


あまり今の状況には納得がいかない様子だった。どうしたものかと悩んでいると。


「アリア~! ちょうどよかった。今アリアを探してたんだ」

「あら、ゆき。どうしたの?」

アリアに声をかけたのは同じクラスの友人にして、この秀東女学院の理事長の一人娘、秀東院ゆきだった。


「えへへ。ねぇアリア、この後暇?」

「え? ええ、まあ暇といえば暇かしら」

「じゃあさじゃあさ、この間出来たばかりのケーキ屋さん行かない? ずっと気になっててさ!」

「そうねぇ。わたしも気になってたし、いい・・・っと」

いいわよと言いかけたところで携帯に電話が届いた。


「ごめん。少し待ってて」と言い残しその場を離れたアリアは電話に出た。


「もしもし? 紅羽、どうしたの?」

「アリアちゃん、至急応援を頼みたいの。今大丈夫?」

「ええ、問題ないわ。応援というと・・・」

「うん、『ファントム』が南地区に現れたの。今凜様が向かってるけど、たぶんアリアちゃんのほうが近いから先に現場に入って対処してほしいの」

「分かったわ。すぐに向かうわね。マスターにも伝えておいてくれる?」

「うん。わかった。ありがとう。詳しい座標はメールで転送するね」


そういって電話を切った紅羽。アリアは「・・・ふぅ」とため息をこぼした。


(くぅ~っ! せっかく久しぶりにケーキを食べられると思ったのに! ファントムのばか~!)


と心の中でファントムに怒るも、仕方ないとどうにか割り切り、待たせているゆきのもとへ戻る。


「ごめんゆき! 急用が入っちゃって、どうしても行けなくなってしまったの。今度埋め合わせするから、今日はもう帰るわね」

「あう~。そっか~残念。けどまあそういうことなら仕方なし。今度は必ずだよ?」

「ええ、必ず。また明日ね」

「うん! ばいばーい!」


アリアと別れたゆきは、そういえばと思う。


「アリアって割と放課後忙しそうにしてるけど、何してるんだろう?」




ゆきと別れたアリアは急ぎ現場へ向かった。


現場へ到着すると、そこには3メートルぐらいの茶色のムカデのような形をしたファントムが暴れまわっていた。幸いにも廃墟に近いため、人はいないようだ。


「うっ。今日のファントムは虫っぽいわね。・・・苦手なのよね、虫」

と露骨にイヤそうな顔をしながら、手に持っていた大きめのアタッシュケースから中身を二つ取り出した。


一つはフォートルクス家の家宝でもある宝剣メルセディアという赤を基調とした両刃の剣。

もう一つは対ファントム用に作られた銀色の銃。


アリアの戦闘スタイルはこの二つの武器を駆使したもので、扱いが難しいものの難なくこなしてみせるのだ。


「さて、マスターが来る前に終わらせちゃいますか」


瞬間、強く地面を踏み抜きファントムに接近しながら銃弾を3,4発撃ち放つ。銃弾はファントムの腹部分にヒットし、ヒットした箇所から紫っぽい色をした血が噴き出る。


「キァァァァ!!!」


奇声を上げながら苦しそうにするファントムに隙ができた。アリアはその隙を見逃すことなく、すかさず剣を上段から振り下ろす。

刃はファントムの足をいくつか切り落とし、さらに腹部や頭にも傷を作っていく。


「ふふっ。わたしの楽しみを奪ったこと、後悔させてあげるわ!」


ひるむファントムに対し、アリアは容赦なく剣を振り、銃弾を放ち追い詰めていく。

そして・・・。


「これで・・・おしまいよっ!!」


抜刀に近い構えから放たれた気合の一撃はファントムを両断し、ついにファントムは息絶えた。


「・・・ふぅ。これで――ッ!!」


終わったと思った次の瞬間、振り返ると背後から襲い掛かる先ほどのファントムに似た別のファントムが視界に移った。


(しまった!! 間に合わない!!)


そう思った時にはすでに大きな爪による攻撃が迫っていて、思わず目を瞑る。

しかし、待てども痛みは感じず、不思議に思い目を開けると。


「よっ。無事か? アリア」


そこには抜き身の薄い青を基調とした刀を持った凜が立っていて、ファントムはすでに両断されていた。


「え、ええ。大丈夫よ。・・・助かったわ、凜」

「そうか、ならいいけど」


でも、と続けて少し怒った顔をする。


「油断は禁物だよ。誰が相手でも、どんな状況でもね」

「うっ。悪かったわよ。・・・確かに相手が一匹だけだと勝手に思い込んでいたわ。反省する」

「ん。よろしい。それじゃあ後のことはアライブがやってくれるだろうし、さっさと退散しますか」

「ええ。そうね」


反省している様子をみて、明るい雰囲気に戻った凜だが、アリアはまだ少し落ち込んだままだ。

そんなアリアをちらっと見た凜が「あ、そうだった」と何か思い出したように言い。


「なあアリア。この辺に新しく出来たケーキ屋さんって知ってる?」

「え? ええ、もちろん。というか今日まさにそこへ行こうって友人と話してたとこなのよ」

「ありゃ、そうだったのか。なら俺に任せて行ってきてもよかったのに」

「バカ言わないで頂戴。わたしも暁の一員である以上、ファントムの件は見過ごせないわ。・・・ええ、たとえそれで楽しみを奪われたとしてもね」

「根に持ってんじゃん」


先ほどと変わってメラメラと燃えているアリアに対し、やれやれと呆れている凜。


「それで、そのケーキ屋がどうかしたの?」

「ああ、茜と美雨にそこのケーキ買ってきて欲しいって頼まれてて。でも詳しい場所知らないからアリアに教えてもらおうかと」

「そういうことね。いいわよ。わたしも食べてみたかったし。行きましょ」


そういって二人は目的のケーキを買い、そのあまりのおいしさにみんな幸せそうに食べたのだった。



次の日。


「あ、おはよーアリア」

「ええ、おはようゆき」


朝、教室に着くとすでにゆきが席についてなにやら携帯を見ながら挨拶してきた。


「何を見ているの?」

「それがさ、昨日南地区の廃墟付近でファントムが出現したんだって。幸い人的被害は無かったみたいだけど」

「あら、そうなの? まあ被害が出てないならよかったじゃない」


彼女の正体を知る人が聞いたら白々しく思える発言をしながら、アリアも自分の席に着く。


「・・・それはそうとさ。一つ気になってたこと聞きたいんだけど。いいかな」

「うん? 何かしら?」

「アリアってさ、放課後結構忙しいとき多いけど、何してるのかな~って。・・・教えて?」


と可愛くウィンクしながら両手を顔の前で合わせてお願いするゆきに対し。


「うーん。・・・な・い・しょ?」


とこちらも可愛く人差し指を頬にあててウィンクしてみせた。


「も~~! なんでよ~!」

「うふふ、なんでもよ」


ふたりの楽しそうな声はまだ人の少ない教室に響き渡っていた。

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