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ファントムレイド  作者: 高町 凪
決戦編
16/17

決戦

本土に帰って来て早々二人はファントムに出くわした。間の悪いと思いつつ一瞬で倒して葉織家へと帰還する。そして紅羽たちから二人がいない間の出来事や調査について報告を受けたが、どうもファントムがさらに増えつつあるらしい。Ⅹがいよいよ本腰を入れてきたのだ。


信たちも暁に合流し、作戦会議を開いた。


「Ⅹをおびき寄せるために、ひとまず出現したファントムをなるべく一か所に集める。これは人的被害を抑える意味もあるが」

「集めるったって、どうやってだ?」

「これまでのファントムの傾向からして、どうもアビリティを持っている人間に引き寄せられるらしい。なら、俺たちがひたすら逃げ回って合流地点に行けば」

「自然と集まるわけか」

「けど、それでⅩは姿を現すのかしら」

「ただ集めただけじゃ出てこないだろうけど、あいつは必ずどこかでそれを見聞きしているはず。ならあとは、得た情報をもとにひたすら煽るなりすればいい」

「・・・結構単純な作戦だな。まあファントム集めんのは骨が折れそうだが」

「だが規模が大きくなれば複雑なことをしようとしても、成功する確率は低い。であればこそ、凜の作は意外とはまると思うがな」

「それに今、アライブの戦闘員も総出で各地を回ってファントムと交戦しているから、他に気を取られず集中出来るってもんだ」


全員が凜の作戦に賛同した。それを見た凜が号令を出す。


「いよいよ決戦だ。各々の奮闘を期待する。では各自配置に着け」

「「「「「了解!!」」」」」



それぞれチームに分かれて各ポイントに着き、いよいよ作戦を開始した。


各チームはファントムのこれまで以上の数に苦戦を強いられるも、どうにかファントムの誘導に成功する。


作戦開始1時間後、全員が合流しいよいよⅩを呼び出す。


「にしてもコイツら、ここに来た途端バッタリ攻撃して来なくなったな。どうなってんだ」

「おそらくⅩが統率しているのだろう。今ここに集められた状況を見て、警戒しているのかもな」

「・・・・それじゃあ、始めるか」


そういって凛は上を見上げながら大きな声で言い放つ。


「見ているんだろう! お前の過去は調べさせてもらった! 過去に人に裏切られて、その恨みでファントムだけの世界を作るだと? 笑わせるなよ、お前、そんなことがほんとにできんなら、なんですぐにやらねぇんだよ! バーカ!!」

「ちょ、総大将!?」

「なぜに煽る・・・」

「これでほんとに来るのかな」

「だいたいお前はなぁ・・・・!!」


尚も続けようとする凜。すると空間が少し揺らぎ、徐々にそれは姿を現した。


「・・・でた」

「まじか」

「まあ作戦通り・・・・・か?」


Ⅹは姿を現すと、凜を見据えて言った。


『・・・貴様、よもやそんな子供じみた言い草で、私が怒るとでも思っているのではあるまいな』

「ああ、思ってる。だってお前、要するにまだまだガキだってことだろ」

『・・・なんだと』

「そうでしょ。自分の失態を他人に怒られて、逆切れして世界を滅ぼしますってか。はっ、これがガキと言わずになんていうんだ」

『・・・・・・』

「もう一度言ってやる。お前はガキだ。たった一人で人間全てにアビリティを持たせてやる? たった一人で世界を救う? たった一人で世界を滅ぼす?・・・・叶いもしない夢は寝てから見てやがれ、クソガキ」

「うわぁ」

「こんなに煽りまくるお兄ちゃん初めて見た・・・」


煽りまくってる凜に若干全員が引いている中、Ⅹはずっと沈黙していたが、やがて口を開く。


『・・・言いたいことはそれだけか』

「まだまだあるが、聞きたいか?」

『いや、遠慮しておこう。どうやら貴様に私の思考は理解できなかったようだ』

「したくもないがな」


そう言ってお互い戦闘態勢に入る。それにつられて暁やファントムたちも構える。そして。


「総員、戦闘準備!!これよりファントム及びⅩの討伐を行う!!」

『ファントムたちよ! 今こそ我らが願いを叶える時だ!』


「『攻撃、開始!!!!』」


一斉に切り掛かる暁。一斉に襲い掛かるファントム。戦闘は開始直後から激しいものとなる。


しかしやはり暁は個々が協力なためか、次々とファントムはなぎ倒されていく。


「ハッ!!」


槍で縦横無尽に切り裂き、大小関係なくファントムを一撃で仕留めていく紅羽。そこにこれまでよりも大きなファントムが立ちはだかるも。


「吉柳神槍術・月花(げっか)!!」


月を描くように槍を振り回し、次いで花びらのように舞いながら前進していく。流麗な槍術であっという間に倒してしまった。


「お姉ちゃんやっぱりすごいなぁ」

「すごいのは分かるが、今は集中しろ」

「はぁい」


茜と善治郎も負けじとファントムを倒していく。さらにそれを見たアリアと美雨も、奮闘する。


「よっ!!・・・っと。フフ、私たちも負けてられないわね、美雨!」

「・・・うん、みんなのためにも、絶対勝つ」



ところ変わって、樹とアライブメンバーは。


「おらぁぁぁぁ!!!」


ドゴッっと鈍い音とともにファントムの体に穴が開き崩れ落ちていく。


「・・・・相も変わらずなバカ力だな、樹」

「うっせ! おれぁこれでいいんだよ! 大将がそう言ってくれてるんでな!」

「やれやれ」

「あはは、でもほんと、みんな強いよね。私自信なくしそう」

「ボクもですよ」


などと話し合いながらもファントムを倒していく四人。


「そりゃそうだろ。来るもの拒まずなうちではあるが、弱いやつはいらねぇ。入ったからには全員強くなってもらう。それが暁だ」

「怖ぇこった」


暁のルール? に若干引き気味な信だが、今この時ばかりは、これ以上心強いことはないだろうと思うのだった。



『・・・どうやら、こちらが押されているようだ』

「にしてはずいぶん余裕な感じみたいだけど」


凜とⅩは今だ戦闘を行わず、他の戦いを静観していた。


「さて、んじゃこっちもぼちぼち始めるか?」

『ふふ、そうだな。そろそろ貴様らを消し去って、願いを成就するとしよう』


凜は刀を抜き、Ⅹはどこから取り出したのか、黒い大剣を眼前に構える。


「・・・それもアビリティか」

『然り。まあこの大剣は()()()()()()()()()()()()

「手癖の悪いやつ」

『・・・・・・・・』

「・・・・・・・・」


この場だけシンと静まり返ったかのように錯覚するほど、二人は集中力を高めていき、やがて同時に踏み込んで刃を衝突させた。


―――――ギンッ!!


鍔迫り合いから一度離れ、再び刃が衝突する。次第にそれは目に見えないほど神速と化していった。


「ちっ、見た目と違ってずいぶん速いんだな!」

『ふふっ、むしろ貴様が遅いのではないか?』

「・・・・言ってくれるね」


斬り合いをやめて一度距離を取る凜。


「正直使うことは無いと思ってたけど、長引きそうだし仕方ないか」


そう呟くと、加具土命(かぐつち)を構えてアビリティを発動する。


瞬間、深紅の炎が吹き荒れる。その炎を纏い姿を変えた凛は、再度刀を構える。


「待たせたね。始めようか」

『ふふ、面白い』


Ⅹが凛に迫り、上から大剣を振り下ろす。しかし直前に炎がⅩを襲い、やむなく後退するが、そこをすかさず凜が強襲する。


『ぬっ!? ぐぅ・・・・貴様!!』

「どうした? 急に余裕なくなったな」

『戯言を!!』


Ⅹは距離を取り、大剣を上に掲げてアビリティを放つ。


『喰らうがいい!!――――ミョルニル!!』


とてつもなく大きな雷が天より降り注ぎ、凜を襲う。凜はその雷を冷静に見据えて、加具土命を振るった。すると炎の塊が雷とぶつかり、相殺した。


『・・・なにっ!?』

「ミョルニル・・・ね。神の名を語るにしては、こんなものか」

『・・・馬鹿に、するな!!』


立て続けにアビリティを使用するⅩ。炎、氷、風、岩、雷と様々な属性を用いたアビリティで凜に攻撃するも、どれも相殺されていった。


『貴様ーーーーー!!!』

「なんだ、この程度でキレるのか。やっぱりまだまだガキじゃないか」

『黙れーーーー!!!』


Ⅹは大剣を構えて今度は黒い炎を出す。それは次第に膨れ上がり、やがて天をも覆うほど巨大なものになっていった。


「お、それは凄そうだな」

『この炎で貴様事街も人も、全て焼き尽くしてくれるわ!!』

「それは困るなぁ」


そう言うと加具土命を納め、今度は蒼龍(せいりゅう)御神刀(のみかみがたな)を抜き放つ。


「じゃあ俺は、これで終わらせよう」

『思い上がるな!!勝つのはこの私だ!!』


言うや否や、大剣を振り下ろし、黒い炎を凜に向けて放つ。対して凜は刀を上段に構え、迫る炎をじっと見つめる。そして―――――。


「・・・・ッハ!!」


気合の込めた一閃を放つ。すると刀は黒い炎を吸収し、ついには全てかき消してしまった。


『な!? そんなことが・・・・!?アビリティを無効化したとでもいうのか!?』

「なんだ、お前は持ってないのか。何でもありそうな雰囲気出してたくせに」

『・・・・・っ!! 黙れ!!!』


Ⅹは自棄になったのか、大剣を構え凜に肉薄する。


『勝つのは私だ!! 私がこの世界を壊してみせるのだ!! 人間に復讐することこそが・・・・・私の!!!』

「悪いがその願いは叶わない。お前はもう、ここで眠りな」


蒼龍(せいりゅう)御神刀(のみかみがたな)を掲げ、一閃。刀に溜まったエネルギーは、巨大な斬撃となってⅩを飲み込み、切り裂いた。


『クソ!! こんな・・・・こんなはずでは!! 貴様を恨むぞ!! 葉織の末裔よ・・・・・・・!!』


最後にそう叫んで、Ⅹは消えていった。

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