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ファントムレイド  作者: 高町 凪
解明編
15/17

離島の彗星とXの秘密

しばらく凜と美雨が遊んでいると、船長がやってきてもうすぐ離島の近くに着くと報告した。二人は甲板へ出て、目の前の景色を見渡す。眼前には確かに離島がある。


問題はこのまま近づいたときに信の言った通りの状態になるか、ということだが。そこまで考えたとき、それは起こった。


突然ぐにゃりと景色が歪んだかと思えば、目の前には離島はなくなっていた。いや、正確には船が後ろを向かされたのだ。船は今離島から遠ざかろうとしている。


「これが信の言ってたことか」

「・・・今、視界がぐにゃってなった」

「ああ、間違いなくアビリティによるものだったな」

「・・・どうするの?」


凜を見て聞いた美雨に、ニッと笑って答えた。


「こっちの刀を使うよ」

「・・・なるほど」


凜の持つ二本の刀のうち、薄い青色をした蒼龍(せいりゅう)御神刀(のみかみがたな)を抜いた。この刀の能力は、他人のアビリティを吸収し無効化する。吸収した際刀にエネルギーが溜まり、強力な蒼い斬撃を放つことができるのだ。


「この刀のアビリティを無効化する能力なら、おそらくさっきのやつも突破できるだろう」


そう確信した凜は、船長に船を戻すよう指示をする。しばらくして再び近づいたところで凜は刀を構える。そして――――。


「・・・・フッ!!」


刀を一閃。すると空間に亀裂が入り、そこから離島を囲うようにできていたバリアのようなものが砕けていった。


「よし、これで先に進めるだろう」

「・・・その刀も結構なチートっぷり」

「そうかな? まあ強いは強いけど、結局アビリティにあてないと意味ないからね。なかなか難しいんだよ」


そう、結局相手のアビリティに当てなければ、ただの刀。使い始めのころはかなり苦労したなと凜は思い出す。


5分後、ようやく離島についた二人は背伸びをする。


「ん~~~・・・・っはぁ。さて、それじゃあ探索しますかね」

「・・・ん。れっつごー」


二人は目的地である彗星の落下地点へと向かう。だが途中、何かの気配を感じて二人は足を止めた。


「・・・凜、これ」

「ああ、ファントムの気配だな。まだ遠いようだけど」

「・・・でも結構いる」

「道中気を付けないと、あっという間に囲まれでもしたら厄介だな」


島のそこかしこからファントムの気配が漂っている。凜の言ったように、囲まれたりでもすればいくら二人とて厳しいだろう。


「一応、刀はいつでも抜けるようにしておいてくれ」

「・・・了解」


二人は慎重に再び奥へと進んでいく。


しばらくすると川が見え、その向こう側に大きなクレーターがあるのが見えた。


「もしかしてあれか?」

「・・・あれっぽいね、それと」

「ああ、ファントムの気配も近いな・・・4体か」

「・・・どうする?」

「向こうは気づいてないし、こちらから奇襲をかけて、一瞬で終わらせよう」

「・・・わかった」


二人はファントムの背後に忍び寄り、凜の合図で音もなく刀を振るった。ファントムは悲鳴を上げることもなく、その場に倒れた。


「ふぅ。ナイスだ、美雨」

「・・・ん。これくらい当然」


近くにまだ潜んでいないかチェックし、いないことを確認した二人はクレーターを降りて彗星に近づく。


「これが彗星・・・・」

「・・・特に何も感じない」

「ああ、多分これに内包されていた力は全て、Ⅹが持って行ったんだろう」


会話をしながらも調査を続けると、美雨が何かを発見した。


「・・・凜、これ」

「うん?・・・・これは手記、か?」


美雨が手に取ったのはボロボロになった手記。なぜこんなところにあるのか疑問に思いつつ開いて中を見ることにした。


「・・・これって、Ⅹに関すること?」

「というより、本人が書いた物みたいだな、どれどれ・・・」


『XXXX年X月XX日。今日からこの手記に実験の経過を記すこととする。私が生まれてから昨日までに行ったアビリティによる実験について、そもそもの前提として、全ての人間がそれを持てるわけではなかった。なぜ同じ種であるのに持つもの持たざる者で別れるのか。調査が必要だ』


『XXXX年X月XX日。どうやら人間という生き物は、脳というものが身体の能力に影響を与えているようだ。そしてその脳の働きが個によって異なることにより、人間の能力に差が生まれている。ならばアビリティを持たない人間の脳に対し、直接アビリティを施したらどうだろうか』


『XXXX年X月XX日。まだたった一人だが、どうやら上手くいったようだ。持たざる者がアビリティを扱えるようになった。これがより確立されていけば、アビリティに関することで人間が争うことはなくなるのではないか』


『XXXX年X月XX日。今日も成功した。しかも複数人だ。これは順調と言っていいだろう。しかし問題もある。これを私一人でやっていたのではキリがない。何か良い方法はないだろうか』


『XXXX年X月XX日。今日も実験をしていると、どこからか聞きつけたのか、ある男が私に接触してきた。君のその力で我らを救ってほしいと言っていた。どうもアビリティのことで他国がいがみ合っているのだそうだ。詳しい話を聞こうと思う』


『XXXX年X月XX日。話はこうだ。アビリティを持っている国は今日本だけ。そのことに不満を持った他国がアビリティ保持者をよこせと言ってきたのだとか。しかしそういう訳にもいかず、どうしたものかと頭を抱えていたところに、私の噂を聞きつけたらしい。私の力を使って、数人程度でいいから、他国の人間にもアビリティを与えてやってはくれぬかと提案してきた。私の目的とも一致しているし、断る理由はなかった』


『XXXX年X月XX日。他国の人間にアビリティを与え、依頼を達成した私は日本へ帰国した。男がそのあとで、もし断られていたら戦争になりかねなかったと言った。どうやら本当に危なかったらしい』


『XXXX年X月XX日。再び実験に戻ろうとした。だが予想外のことが起こった。アビリティ保持者にも同じことをした結果、なんと異形の物へと姿を変えてしまったのだ。何とかそれを倒すと元の姿に戻ったのだが、すでに人間は息を引き取っていた。私はなんてことをしてしまったのか』


『XXXX年X月XX日。それでも何とか人間のためにと私はアビリティを与え続けた。だが以前の失敗のことを耳にした日本政府は、あろうことか私を排除しようとした。あいつら、私は貴様ら人間のためにやってきたというのに、貴様らの方から裏切るのか!!』


『XXXX年X月XX日。私はとにかく逃げ回った。ひとまずこの彗星の場所まで来た。そうだ、ここに結果を張って、誰もこの島に来れなくすればいい。私はすぐさま実行した』


『XXXX年X月XX日。日が経つ毎に人間への恨みが強くなっていく。私がいったいどれだけ貴様らのためにしてきたと思っているのか。なぜこうもあっさり裏切るのか。まったくもって理解できない』


『XXXX年X月XX日。私は考えた。人間に復讐するにはどうすればいいか。そして思い至った。以前の失敗を利用し、人間をすべて異形のものにしてやろうと。そうだ、そしてこの世を異形の物・・・・名をファントムとしよう。この世をファントムだけの世界にする!! 覚悟するがいい人間!! この恨み、必ず晴らしてやるぞ!!』




そこで記録は終わっていた。読み終えた二人はしばらく沈黙していたが、それを凜が破った。


「ふぅ、とりあえずまあ、色々わかったね」

「・・・ん、Ⅹの目的も、なんでこんなことしてるのかも」

「うん・・・・まあ、Ⅹにも問題はあるにせよ。結局は、人間の蒔いた種とも言えるかな。いつの世であろうと、そういうとこはあんま変わんないね」

「・・・・これからどうする?」

「ここでの目的は果たしたし、これ以上は危険だからね。さっさと帰ろうか」

「・・・わかった」


そうして二人は船へと戻った。ついでにとファントムをなぎ倒しながら。




「しかし、この世を全てファントムに・・・か。壮大な話だが、ほんとにやれると思ってるのかな」

「・・・わからないけど、まだアビリティを隠し持ってるなら、可能性はありそう」

「・・・・そうだね」


船の中で二人は先ほどの手記のことで話し合う。結局Ⅹの目的とこれまでの推測の裏付けは取れたものの、どういう手段で可能とするかまでは分からなかった。


「いずれにせよ、やつをおびき出せそうな情報は手に入ったし、後は実行するだけだな。それが成功したら・・・」

「・・・いよいよ決戦」

「だな」


いよいよⅩとの決戦が迫ってきたことを実感し、二人は準備を進めるべく暁のもとへ帰還するのだった。

ちょっと無理やり感ありますが、次回からⅩとの決戦に持ち込みます。

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