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第1話 芙衣ちゃんと衛くん

「ふえぇ~……転んじゃったぁ……」

「大丈夫か? ほら、立てよ」


 尻餅をついている幼馴染の芙衣ふえに手を伸ばす。


「うん、ありがと。まもるくんは優しいね」

「よせよ。いつものことじゃねぇか」


 俺はさも当たり前のようにキメ顔で言った。


「私がドジだから……いつも衛くんに迷惑かけちゃってゴメンね」

「こんなの迷惑のウチに入らないさ。芙衣の事は俺が守るからな」

「うん……衛くん、好き……」


 朝の通学途中、幾度となく繰り返されたテンプレート。

 いつもの場所で待ち合わせをし、並んで歩き始めて数歩、いつものように芙衣は転んでしまう。

 そして先程のやり取りというわけだ。


「まったく、なんでいつもバナナの皮が都合よく落ちてるんだ?」

「きっとこの道、なんかのレースコースなんじゃないかな?」


 芙衣にはアイテムボックスが見えるのだろうか。残念ながら俺には見えない。


「さあ、今日も困難を乗り越えて無事学校に到着するぞ!」

「うん、衛くんよろしくね」


 そうして俺と芙衣は勇んで学校に向かうのだった。


 正直、芙衣のドジっ子っぷりは完全に常軌を逸している。

 学校まで30分の道のりですら、なんのトラブルにも見舞われないということはない。

 困ったことに、このトラブルというのが不慮の事故的なものではなく、すべて芙衣のドジに起因するものだった。


 さあ、歩き始めて約50歩。まだ1分も経っていない。

 ここでまた、芙衣のドジが発動する。


「ふえぇ~……かりんとうふんじゃったぁ~……」


 はい、かりんとう頂きました。

 説明は不要かと思うが一応言っておくと、かりんとうとは道端に落ちてる犬や猫の排泄物のことだ。


 俺はドジっ子救済セットからすかさず折り畳み式の椅子を取り出すと、そこに芙衣を座らせる。

 そしてかりんとうのついたローファーを脱がしてウェットティッシュでかりんとうを綺麗に拭き取った。


「ほら、綺麗になったぞ」


 俺は芙衣にローファーを履かせ、汚れたウエットティッシュをゴミ袋へ仕舞う。


「ありがと……衛くん、好き……」


 ふぅ。これにてミッション完了。

 ちなみにかりんとうは週に四回、多い日に一日二回は踏むのでレア度は☆1。対策はバッチリだ。


 そんなこんなでドジっ子レア度☆1~2のミッションをいくつかこなしていると、難所のドジにぶち当たる。


 それは学校の最寄駅に着き、電車から降りて改札に向かう途中のことだった。


「ふえぇ~……カバン電車に置き忘れちゃった……」


 電車にカバンを置き忘れる。週に一回はやらかすのでレア度は☆2だ。


 取りに行くと大幅に時間をロスするし、駅員さんに回収してもらって、あとで取りに行くとしてもその後の授業に多大な影響を及ぼす。

 発動すると厄介な上に、頻度が多い割にはなかなかいい対策が浮かばないでいた。


 しかしそれも昨日までの話。今日の俺は一味違う。


「まったく、しょうがない奴だなぁ。ほらよ」


 そう言って俺は芙衣にカバンを差し出す。


「ふえぇ? 確かに持ってたカバン、置き忘れちゃったと思ってたんだけど、衛くんが持ってたんだあ」

「いや、芙衣はカバンを置き忘れたよ。だが、それは俺が3Dプリンターで作った精巧なダミーだ。本当のカバンは最初から俺が持ってたんだよ」

「そっかぁ、ありがとう」


 嬉しそうに芙衣はカバンを受け取った。


「次からは忘れないように気を付けるんだぞ」

「うん、気を付けるね。衛くん、好き……」


 さあ、気を取り直して学校へ向かおう。まだ五合目に差し掛かったばかりだ。


 しかしアレだな。芙衣とは付き合いが長いが、やっぱりドジっ子というは対策さえしておけばこの上無く可愛い存在だと思う。


 何故こんなにもドジっ子が可愛いのか。理由はいくつか挙げられるだろう。


 まずは見ていて可愛い。本人はなにより一生懸命なのだが、その全てがドジの前に台無しにされてしまう。ドジを踏んで落ち込んで、そして立ち直ってもすぐにドジをする。可愛い。


 そしてこんな行動と言動からはイメージしにくいと思うが、芙衣の見た目はかなり綺麗系だ。

 艶やかな長い黒髪を靡かせ、目つきや口元もキリっと引き締まっている。

 黙って立っているだけなら知的クール美人といった感じだ。


 しかしそんな見た目とは裏腹に繰り広げられる数多のドジっぷり。

 マジこのギャップが堪らない。萌え。


 俺はそんな希少価値の高い天然ドジっ子の芙衣を守りたいと思っている。

 というかこんなの守りたくならないほうがおかしいだろ?


 しかし何故か芙衣はモテない。


 容姿は抜群、ギャップも抜群、行動の可愛さも抜群なのに、今まで一度も告白されたことがないらしいし、もちろん彼氏なんか出来たことなどない。

 こんなにも可愛いのに何故なんだ。解せん。


 まあ、芙衣に近づく下賤な輩がいるものなら、この俺が全て排除してやるけどな!

 そこらへんの男が芙衣のドジの対処が出来ると思えないし、それは俺の役目だから誰にも譲るつもりはない!


「衛くん、好き……」


 さあ、この言葉を励みに、今日も一日頑張るか!


頭からっぽで勢いのまま書いているので超不定期気まぐれ投稿になるかと思います。


次話は近々投稿予定です。


この二人の続きが気になる方はブクマお願いします!

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