末日・最後の生鮮食品
ダラダラと書き連ねた旅行記はこれで御仕舞いです。
起きたら、えらく薄暗い。
カーテンを開けても薄暗い。
雨が降っていた。
そぼ降る中、ホテルを出て駅へと向かう。ホテルが駅近くで良かった。
コンビニでビニール傘を買い、ティファニーとは縁もゆかりもない富士そばで朝食を。
昨夜は結局コッテリだったので朝食はさっぱりとしたものを、すんません、ミニかつ丼セットをかけそばで。
ホンマは早朝の巣鴨を散策する予定でやんしたが、雨天なので断念。とげ抜き地蔵さんくらいは参詣しても良かったなぁ。
駅前には「もてなしの街すがも」と刻まれた石碑が。
モテなくて、わーるかったな! もてない御蔭でエエ歳こいて独りモンだよこのやろー!
八つ当たりをしてスッキリしたら電車に乗ろう。通勤ラッシュが落ち着きだした山手線で上野へ、行け行け!GO!GO!ジャーンプッ!
駅改札内のチケットショップで三種類の観覧券を購入し、不必要な荷物をコインロッカーに押し込んだら上野公園をブラブラと。
目的の開場時間は確か9時。今は8時50分、まぁ丁度いいやな。
さぁ来たぜ、東京国立博物館!
観るぜ、『特別展 三国志』!
開場は9時半からでした、アッハッハ!
50人ほどの列に混ざり、並ぶ事30分少々。やっと入館、傘を傘立てに、コインロッカーに必要最低限の荷物も収め身軽になったら、音声ガイドをレンタルだ。
ゲームキャラのではなく、吉川晃司氏のを借りる。何でも曹操の墓・高陵を訪ねた事もある中国史ファンなのだそうで。
「これから幾ばくか、貴方の耳目は貴方の身体を離れて、この稀有壮大な時間の中に入って行くのです……」
低く落ち着いた声音に導かれながら古代の世界をフラフラと彷徨う。
日本史の幕を開けた卑弥呼が誕生する前にあった、漢帝国。西欧とも交流し、インド亜大陸とも繋がっていたユーラシア大陸の巨大国家が中断を挟んだ前後東西凡そ四百年の歴史が閉じた時、三国志の時代が始まる。
人形劇『三国志』に親しみ、陳舜臣御大の『秘本三国志』を愛読し、王欣太先生の『蒼天航路』に胸躍らせた私は、吉川英治御大とも横山光輝御大とも無縁でして、御蔭様にて曹操とその配下と魏が大好きでありまする。
蜀って国はあきませんですねぇ、物語において正義面して掲げた理想へと邁進する主人公って超絶苦手なのですわ。正義の味方への忌避感は、幼少期から変わらぬ気質だったり。
そんな私にとって、曹操孟徳公は敬愛すべき偉人。魏の太祖・武皇帝の陵墓、高陵を模した特設コーナーと出土品はワクワクを通り越して、もう死んでもいいや五十年後に、と思わせるものでした。
ひゃっふー♪
此処も撮影し放題でしたので、あっちでパシャパシャ、こっちでパシャパシャ。
もう気になった展示と気に入った展示は片っ端から撮り捲くりました。
すると又もや、断末魔の如きメッセージが。
「エネルギー切れや、ほなねー」
ふふん、それはどうした、今日の俺は大宰府で買った充電器を持ち歩いてるんだぜ、リュックに容れてな……リュックは入館して直ぐにコインロッカーに放り込んだっけ……おーまいぶっだ!
因みに、中国へ仏教が渡来したのは後漢第二代・明帝の御世。首都・洛陽郊外に建てられた最初の官寺、白馬寺。
それから百数十年の時を経て、帝国に少しずつ仏教が定着していきます。しかし伝統的宗教である道教に比すれば微々たるものでした。
当時の道教がどれくらい勢力を誇ったかは、漢帝国の終焉を告げ、三国志時代の呼び水となった黄巾の乱の母体が、道教の一派の太平道だったという周知の事実が表しているでしょう。
宗教って怖い!と私が言うのはアレですが(苦笑)。
但し、宗教怖い!で思考を停止しちゃあいけません。有史ってのは即ち宗教史でありまする。人類が意図的に歴史を刻み始めたのは、宗教を記録に残す為でもあったりします。文明と宗教は不可分なのですから。
黄巾党を打破し、魏の国において淫祠邪教撲滅の号令を発した曹操御大ですが、決して無宗教の人ではありません。何故なら、自分の死後の葬儀と埋葬について指示しているのですから。
無宗教の人に無縁なのは葬儀と御墓ですからね。
さて、話を戻してガラケーのバッテリー。
高陵の再現展示を撮り終えた処で力尽きましたので、其処から後の展示は心に留め置く事と相成りました。人形劇『三国志』の曹植を撮影出来なかったのが返す返すも口惜しや。
三国志の時代を堪能したら、常設展示へレッツラGO!
いつ来ても魂消るやら感服するやらですよ、此処は。
あ、その前にリュックを回収して充電器様に御活躍戴かねば!
ガラケーに命与えよ!
フラフラと夢心地で彷徨い、企画展『日本のよろい!』で正気に戻る。
子供にも判るように鎧や兜が如何なる工程で出来上がるのかを紹介してあり、 一週間も通い詰めたら100均の素材だけで作れるようになるかも?是非作ってみたいなぁ!と思わせる素晴らしい企画展でしたよ、作りませんけど。
幾ら100均でも材料費は1万円を超えるでしょうし、作るとなったらどれだけ時間がかかるやら……。余生を費やしても完成しなさそうですし。
まぁそれはそれとして、特別展が開催されておらずとも何度でも来たい場所です、東京国立博物館。私のアナザー・スカイの一つです。屋内だけど。
さぁお次は、国立科学博物館だ!
来たぜ『恐竜博2019』!
時間は午前12時半。先にお昼御飯にしようかとも思ったが食欲より知欲を優先だ。
入館して直ぐに音声ガイドを借りるのは当然の事。案内人は、放送作家の鈴木おさむ氏。大の恐竜ファンであるらしい。科博の標本資料センターコレクションディレクターの真鍋先生を筆頭に幾人もの先生方が入れ替わりで、微にいり細にいり開設してくれる超オトクなガイドだぜ!
展示化石の冒頭は、ディノニクスの足先。映画『ジュラシック・パーク』シリーズで大活躍のヴェロキラプトルの近縁種だ。恐ろしく鋭い爪にゾッとするぜよ。
集団生活をしている小型ながら恐ろしい奴だ。恐竜戦隊コセイドンでもなきゃ勝てないよねー。
まだまだいるぜ、始祖鳥、デイノケイルス、マイアサウラ、デール・ラッセル博士、ディノサウロイドなどなど。
気分はもう、恐竜探検隊ボーンフリーさ。ボーンフリー、つまり骨はタダ。だが、タダほど高い物はない。此処に展示されている数々の骨格は、人類誕生以前の地球史の証人達なのだ。その価値は無限大だぜ。
処がギッチョン、最近の発掘作業は以前とは大違いだったりする。
以前ならばゴリゴリガリガリと岩盤から骨だけを削り出していたのだが、昨今は無闇矢鱈と削り出しをせずに岩盤ごと保存したりする事例が多いようで。
理由は、骨の周囲に内臓や筋肉の痕跡が確認出来る可能性が高まった為。羽毛の存在、足跡などの生活痕は昔から知られていましたが、CTスキャンなどの検査機器の性能が向上したので、実に様々な事が判明するようになったのでさぁね。
非破壊検査、万歳!!
ふと周囲を見渡せば、男の子女の子の別なく子供達が齧り付きで観ている。若きカップルやアベックは男子が知ったかぶりを披露しようとするも、女子がキャーキャーと歓声を上げているので、微妙な表情と仕草で固まっている。
子連れのお父さんは連れている子供と同じようなテンションとなり、お母さんはしょうがないなぁと少し呆れ気味。
結論、お母さんは偉い。人間でも恐竜でも、お母さんが一番エラい。
デッカイのからチッコイのまで、部分部分から全身まで。
シェークスピアもビックリの、ロミオとジュリエットの化石も。
巨体を見上げれば、その上には空中を泳ぐ海竜類の全身骨格。
何処を見ても白骨死体ばかり。
目玉展示は何と言っても「カムイサウルス・ジャポニクス」の全身骨格!
訂正。
私が拝見した時点では「むかわ竜」でした。
平成の大合併で鵡川町と穂別町がダグオンのように融合合体して誕生した地方自治体にて発見された日本の恐竜。
そー言えば私の子供の頃、フタバスズキリュウ発見の物語を読んで胸を熱くしたものでした。
そして、ミカサリュウが見つかり、タンバリュウが発見され、ゴモラが大阪城天守閣を壊し、ギャオスが東京タワーに巣作りし、恐竜帝国がゲッターロボと激しく戦ったり。
日本は昔から恐竜のまします国なのですねぇ。
展示物の終盤は、大絶滅時代の化石。
所謂、K-Pg境界線上のアリア、である。ざっくり言うと、いやいや期と思春期の間、みたいなモノと理解すれば概ね間違いである。
種のレベルで最大約75%、個体数では99%が死滅した恐ろしいタイミング。それを引き起こしたのはユカタン半島に落ちた直径約10kmの隕石だとされている。
1974年にオニール博士により提唱されたシリンダー型のコロニー、サイド2の8バンチ「アイランド・フィッシュ」でも直径約6km。びんちょうタンでは一溜まりもないだろう。
因みに地球史における大絶滅時代は過去に五回あったとか。
オルドビス紀末の「O-S境界」、デボン紀末の「F-F境界」、ペルム紀末の「P-T境界」、三畳紀末の「T-J境界」、白亜紀末の「K-Pg境界」、ノアの箱舟の「創世記6-9章」、宇宙世紀0079の「ブリティッシュ作戦」、ポールシフトによる『七都市物語』などがそれである。
しかし驚く勿れ、現在は第六番目の大量絶滅期なのだとか、超愕然!
人類が増え過ぎた人口を……無理からに重力圏に押し込めている今日、その影響が動植物の棲息環境を無秩序に破壊し続けているからである。
海洋準変動、寒冷化、海洋無酸素事変、マントル上昇、火山活動活発化、隕石落下、コロニー落としなどの人の行いによらぬ自然環境の激変ではなく、人の行いによる絶滅。
カマキリ先生こと市川中車師匠も、『昆虫ヤバイぜ!』でも仰っておられましたが、今の地球は本当にヤバイと思います。マスターアジアが出て来ても可笑しくないような、そんなー気がするー。
古代以前の遥か遥かな時の向こうを堪能して、表に出たら喫煙コーナーで一服。
あー、タバコが美味い。
さてそれじゃあ、本日最後の特別展へと行くとしましょうか。
来たぜ、国立西洋美術館!
観るぜ、『松方コレクション』展!
……観られませんでした。
もう足腰が限界、もうパンダパパンダコパンダ状態。
何故だ!? ……オッサンだからさ。
だもんでグッズショップで図録などを購入して退場。
ロダン御大の『弓を引くヘラクレス』の股間をぼんやりと眺めてから上野公園を後にする私。アイル・ビー・バック!
そんな訳で、崎陽軒のシウマイ弁当を頬張りながら、グリーン車で帰途に。
ああ、面白かった楽しかった、そんで疲れた旅でした。
さてお次は何処へ行こうかな?
さて、後は写真を差し挟まねば。
まぁ、何れその内に。