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一話 異世界召喚は突然に!

続けられたらと思います。


それは妹の手作り料理をじっくりとかみしめている時の事だった。


突如視界がサーモグラフィーで覗いたかの様な色に染め上がり、いつもの見慣れた家のダイニングから真っ白な空間へと姿を変えていたのだ。


神谷 総司(かみたに そうじ)は白米が盛られた茶碗と箸を持ちながら只々この光景に呆然とするしか方法がなかった。緩んだ手から箸が抜け落ちやたらと周りに音が響き渡る。


どこじゃここは?


あまりの混乱におじいちゃん言葉になってしまう。

・・・ふむふむ状況を整理してみよう。俺は確か妹と仲睦まじく夕食を取っていたはずだ。

いつもと変わらない楽しい時間を過ごしていたら、急に風景が変わりこんなところに来てしまった。


うんどうしてこうなったんだ?


いまだこの状況に脳内が追いつかず、混乱しているとやたらと可愛らしい悲鳴めいた声が後方から耳へと届く。

俺の考えが正しければこんな澄んだ声の持ち主など1人しかいない。

そっと後ろを振り返るとそこには俺と同じく、茶碗とお箸を持ち、十人中十二人が美人だと太鼓判を押すであろう麗しき少女。

妹の 神谷桃華(トウカ)がその流れる様な淡い紫色の髪をなびかせながら驚き戸惑っていた。

まるでアニメから出てきた様な可愛さを持つ妹は年がら年中スカウトだの告られたりするらしい。そんな奴は俺が闇へと葬ってやりたいのだが、何故だか妹に止められてしまうのが残念だ。


そんな妹は周りをオロオロしながら見渡すとお箸を握りしめたまま俺の方へと寄って来た。


「兄さんここは一体どこなのでしょう?」


花の香りなのか良い匂いが鼻腔へと伝わり、思わず天にも昇ってしまいそうな気分になる。

しかし!これ以上は変態の域へとなってしまうので根性と自分の頬を叩くことでそれを回避。


そんな俺の行動にどこか心配した面持ちで、近寄る桃華これ以上は刺激しないでほしいな!


「兄さん大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫!それより妹よ怪我はないか?」

「私は大丈夫です。それより兄さんここは一体・・・?」

「分からん。最後の記憶は視界が染め上がって気付いたらここにいたってことだけだし・・・。まじここどこだよ。それにしてもな~んもねえな」


見渡す限り真っ白な空間。

しかし後ろを振り向いてみるとそれを超える異様な光景が広がっていた。


「どうやらここに来たのは俺たちだけではなさそうだな」

「その様ですね」


そこにはスーツ姿の男性や寝間着の少女、制服姿の少年など統一性のない人々が地面に横たわっている光景があったのである。

1番近くにいた寝間着姿の少女(本当は男性サラリーマンの方が近いのだがどうせなら男より少女の方が良いのは言わずもだ)を見てみるがちっとも起きる気配が無い。

念のため脈を図り口元に手を当ててみるとしっかりと脈も呼吸もしていた。その光景をどこか怪訝な目で見つめてくる桃華の事はあえて無視しておこう。


「お~い大丈夫か~」

「うっ・・・」


と俺が揺すってみると寝間着姿の少女は一旦眉を寄せるとゆっくりとまぶたを開き始めた。


「ここは・・・一体?」

「お?目が覚めたみたいだな?」


と俺が言うと声に吊られたのか寝間着少女は俺たちの方を向く。パチパチと数回瞬きし目が合うとビクッと体を震わせて、肩を抱き後ろへと下がった。


「な、なんですか貴方達は!こ、ここは一体何処なんですか!」


と声を出して行く、うわーすげーめんど臭いと顔前面に表現しているとその顔を見た寝間着少女はイラっとしたのか俺の方へ指を指す。


「あ、あなた今面倒くさいって思ったでしょ!」

「なんで分かったんだ!?」


と惚けた調子で言うと俺を制して、桃華が片膝をつき寝間着少女に手を差し出す。


「落ち着いてください。私の名前は神谷桃華ですあなたのお名前は?」

「えっと!わ、私は間宮 恵美(まみや えみ)って言います。誕生日は4月4日!好きな食べ物はパフェです!」


聞いてもいない情報をペラペラとしゃべるこの寝間着少女の名は間宮恵美と言うらしい。

やはり桃華の美貌に息を飲み魅了されている・・・。


流石は我が妹だと心から感心していると突如視線を感じた俺はバッと後ろを振り振り返ってみる。

するとそこには白く長い髭をたずさえたハ○ポタにでてくる何某ら校長先生みたいな格好の爺さんが微笑みを浮かべながら突っ立ていた。

爺さんはその髭を撫でつけながら俺の方をジーと見て、フォフォフォっと何故だか笑い始める。


このじじい舐めてんのか?


ピクピクと眉を動かし一発かましてやろうかと思った矢先爺さんは静かに口を開く。


「うむうむ・・・!今回の召喚は随分と期待できる者が揃っておるの~。特に御主とあのめんこい少女」


色白の細長いかりんとうみたいな指で俺とトウカを指差す爺さんはスッと目を細めると俺にも聞こえない様な囁き声を出し腕を振った。

何を言ったのか分からなかった俺は眉をひそめ爺さんを見つめる。なんだかさっきからこめかみを動かしまくっている気がするぞ?


「兄さん見てください!」


と服を引っ張るトウカにつられ振り向いてみるとそこには気絶していた奴らが続々と声を上げて目覚める姿、そしていつの間にか白い空間から様々な装飾のなされ床に奇怪な円や文字などが描かれている部屋へとその姿を変えていたのだ。


「一体どうなってんだ?」


と俺が素っ頓狂な声を上げた。

原因であろう爺さんの方を見たがいつの間にか爺さんもあの白い空間と共に綺麗さっぱり消え去っていた事に俺は唖然とする。


「どうしたんですか兄さん?」


そんな俺の態度を疑問に思ったのかそうトウカは聞くが俺はどう説明した方がいいかと悩み「なんでもない」と俺の錯覚かなんかだろうと考えブンブン首を振った。


「それにしてもここはどこだ?」

「作りはヨーロッパ中世風ですよね?装飾もとっても素晴らしいです!」


桃華は目を輝かせずっと室内を見渡す。

昔からヨーロッパにはよく行っていたらしくやはりこういう装飾に関しては人より詳しい。

しかしこの中で一番食いついたのは寝間着少女こと間宮 恵美だった。


「これはこれはこれはもしや!この奇怪な模様と言い中世ヨーロッパの造りといいこれは間違いないですよ!!」


と俺に詰め寄る寝間着少女。

一体なんなんだこいつは?


「ここは異世界ですよ!」

「はあ~?」


俺が訳分からんと首をかしげると圧倒的圧力で更に詰め寄り俺の襟を掴み顔を引き寄せてくる。近い!近い!近い!近い!近い!近い!近い!近い!近い!いい匂い!近い!!


「だ、か、ら!異世界ですって!」

「い、いやわかったから!ち、近いからさっさと離れろ!」


一瞬キョトン?とした寝間着少女は俺の顔をジロジロ見て自分の手と俺の襟を交互に見ると急にばっと俺を押し出して顔を真っ赤にさせた。押されたことで足がもつれた俺はそのまま尻を思い切り床に強打する。


「いっでー!!」


すると俺の声に反応したのかビクッと寝間着少女は体を震わせると指の隙間からマジマジとケツをさする俺を見た。

さすがに悪いと思ったのかジリジリと俺に近付くと片手を出して俺に手を貸そうとしてくる。


「あ、ああ。悪いありがとう」


全て相手が圧倒的に悪いのだが、一応ご厚意に甘え俺は彼女の手を取る。

初めて触る妹以外、それも見ず知らずの少女の手は強く握って仕舞えば形が変わってしまうのでは無いかと言うほど柔らかく同時に熱を帯びてどこか暖かい。

俺が立ち上がるも少女の手を離さず、ずっとギュッと握っていることで、少女は恥ずかしげにこちらを向き、妹の桃華は不機嫌な顔を前面に俺を睨んできたので俺は慌ててその状況に気付いて手を離した。


「その・・・。なんだすまなかった」

「う、うん。こっちもごめんなさい・・・」


どこか気恥ずかしい雰囲気が流れてきたのだが、突如その雰囲気を破る声が響く。


「ここはどこだ?」

「一体ここは・・・?」

「何よここ!」


どうやら眠っていた奴らが本格的に起きてきたようだ。俺はその目覚めた奴らをざっと見つめる。

俺たちも含めここに今いる人数は20人前後、みな年齢、服装、職業など全部バラバラで統一性は見られ無い。

起きた者たちは各々が周りの人々と話し始め、話し声が部屋中に響き渡ってゆく。

ここが寝間着少女の言う異世界ならどうゆう経緯、条件で俺たちは召喚されたのだろうか?

小説のように高校生や若い者を召喚した方が、確実に良いのにここではバラバラだ。

しかしいくら考えても仕方ない。ここで待っていれば俺たちを召喚した張本人が出てくるだろうし今は待つしかないだろう。


そんな事を考えていると金髪の好青年(めっちゃイケメン)が何かを気づいたような顔を浮かべてこちらに向かって走り出す。

見慣れた高校の制服だったので同級生でも見つけたのかな?と思っていると・・・。


「ああやっぱり桃華だ!君もここにいたのか?」


と妹の桃華に親しげに声をかけてくる。

あん?一体誰だこいつ?


「・・・うん。もしかしてレイ君も?」

「そうなんだよ・・・。部活帰りにだったんだけど気が付いたらな・・・。一体ここはどこなんだ?」

「私も分からない・・・」

「それにしてもよかった!何処も怪我はしてないみたいだし」


桃華の肩に手を置き何処かホッとしているレイと言う好青年に、俺は眉をこれでもかと寄せて睨みつける。


誰だあいつ?なにやってんのあいつ?桃華に触るとかなに考えてんだこいつ?もう殺すしかなくね?いや絶対に殺すべきだ!!!!


俺は目をカッと見開くと立ててあった棒を握りしめ、キリキリとまるでロボットのように動き未だペラペラと喋っている罪深き者レイの脳天へ叩きつけようと振り上げる。しかしその行動を見た寝間着少女は俺を慌てて羽交い締めにして来た。


「離せこの寝間着少女がー!」

「ね、寝間着少女?ていうかダメですよ!危ないじゃないですかそんな物振り回しちゃ!」

「うるせえ!俺はこの世のためにもあいつを滅さなければならないんだー!」

「な、何わけわからないこと言ってんですか!?」


と俺はブンブンと振るが少年には当たらない。

クソがあああ!!もうちょっと長ければ!と俺はフシューと鼻から息を吐きキョロキョロともうちょっと長い棒を探していると、突如ガチャッと言う音が部屋中に響き渡り俺たちは一気に扉の方へと向いた。

ギギーっと開かれる扉。そして次の瞬間そこから全身鎧に包まれた騎士のような風貌の者達が現れ俺たちを囲んで行く。


皆がどうした!なんなんだ一体!と騒ぎ立て、桃華を守るように前に立つ少年にイラっとしながらも俺は冷静に相手の殺気が感じない事を雰囲気で感じて肩から力を抜いた。

一方寝間着少女の方はと言うとブルブルと震え俺のTシャツを恐怖からか力一杯握りしめている。

・・・シワになるから握らないで欲しいと思うのだが寝間着少女には恐怖でそれも通じないみたいだ。

そうこうしている内に扉の向こうからコツコツコツと何かの足音が徐々に近づいてくるのを感じ、目を向けているとそこから1人の可憐な少女と少女の護衛のような女性騎士が2人部屋へと入ってきた。


少女は汚れのない真っ白なドレスを身に纏っていて、年も俺達に近いように見える。


「すごく可愛い子じゃないか?」

「やべえめっちゃタイプ!」

「リアル二次最高!!」


皆が美少女やらなにやら言うが俺は思わず首を捻ってしまう。いや確かに美少女だと思うのだがそこまで皆が言うような美少女なら俺のまじかにもいる。


俺は妹の桃華の方へ目を向けた。


うむやっぱ妹の方が可愛い。


そしてレオ少年もそれを思ったのか同じく首を傾げている。

目の前の少女は皆の反応に少し笑みを浮かべると、その可憐な声で話し始めた。


「ようこそ召喚者の皆さま。私はここカルティーナ王国の王女の1人で名をクラリスと申します以後お見知りおきを」


ドレスの裾を掴み少し持ち上げ一礼をする王女ことクラリスに吊られほとんどの者がオドオドと礼をする。


「さて皆様には分からないことが多々あるでしょうから私が説明致しましょう。まずここはあなた方召喚者の皆様とは全く異なる世界です。名はヴォルスと呼ばれ、七つの大きな大陸で形成されています」

「ヴォルス・・・」


と俺が思わず呟くとクラリスは頷いてさらに続け始めた。


「ここでは魔力というモノが存在し皆がこの魔力を活用して、魔法や力を発揮することができるのです。そして皆さんには私達よりも多くの魔力を保有し神の加護と呼ばれるモノで強さも上がっています」

「ふむそれはわかったんだけどいい加減本題に入って欲しい。そんなことを言われても何故俺たちがこのヴォルス?に召喚された理由になってないからな」


黒縁眼鏡の明らかに優等生ぽい男子が眼鏡を上げながらそう言う。

なんだか悩みすぎていつか禿げそうだな・・・。と俺がだいぶ話とはかけ離れた事を思っていると王女はそうですねと呟き事のきっかけを話す。


「何故私達があなた達を呼んだのか。それは私達を救って欲しいからです」

「救って欲しい?」

「はい・・・。今私達は窮地に立たされています七つの大陸の内の一つ魔族が支配する大陸の王、魔王が他の6大陸の人々を全滅させようとしているのです。強大な力を持つ魔王を倒すには召喚者である皆様の力が必要不可欠なのです」


眼鏡優等生は眼鏡をクイっとあげると溜息を吐きクラリスを冷たい目で見つめた。


「はー。論外だな俺は大事な勉強があるんでねさっさと元の世界へ返してくれ」


それに触発されたかのようにサラリーマン風の男性も手を挙げおずおずと答える。


「えっと私も仕事も待っている家族もいますので元の世界へ返してもらえませんか?」


しかし王女は下を向き下唇を噛むと顔を上げ苦々しげに答えた。


「それはできません・・・」

「はあ?冗談だろ?」

「しかし魔王が保有する送還の術を手に入れられれば、召喚された時間に皆様を戻す事ができます!ですからどうか力を貸して下さい!」


眼鏡優等生は理解出来ないという顔を浮かべたが、皆はそれを聞いて俄然やる気が出てきたようだ。


「いいぜ!なあみんなやろうぜどうせこんな機会滅多にないんだからさ?」

「確かにな!こんな小説やゲーム見たいな事今後絶対味わえないぜ!」

「いいね!私もやる!」

「俺も!」

「私も!」


と続々と手を挙げ賛同し、王女様は目に涙を浮かべありがとうございますと感謝の言葉を述べてゆく。

その姿を見て優等生は溜息を吐くとわかったよやればいいだろう!とどこか投げやりに答えた。

そんな俺はと言うとちょっと眠くなって目がショボショボし始めていた。


「やべ。ちょっと眠いかも」

「貴方こんな時によく言えますね」


と寝間着少女に呆れ混じりに見られるが眠いモノは眠い。

俺はすっと手を挙げると王女はそれに気付いてどうぞと俺を促した。


「俺たちが召喚されたのはちょうど夜だったからな。詳しい話しはまた明日って事にして今日はもう休んだほうがいいと思うのだが?」

「確かにななんか疲れた」

「げ!もう10時ぐらいになってんじゃん!」


ギャル風の女がスマホを取り出しそう言うとクラリスはそうですねと頷き、騎士に何かの命令をさせて行く。


「皆様のお部屋は2人一部屋で用意してありますのでどうぞ今日は休んでください!場所は騎士に案内させますので!」


それでは私はこれでと王女は部屋を去って行く。

こうして俺たちの異世界生活の幕が開いたのであった。


お読みいただきありがとうございます!

ブックマーク、レビューなどありましたら執筆の力になりますので是非いただければと思います。


最後になりますが「友人Aはラブコメしながら無双する」も書いておりますのでそちらの方も是非見ていただけると嬉しいです

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