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優しい音を奏でて…  作者: くっきぃ♪
5/13

愛の賛歌


翌日 12月16日(日) 11時45分。


お昼ご飯、何にしようかなぁと思っていると、携帯が鳴った。


ゆうくんからのメッセージ。


『今から昼飯作るから、食べに来いよ。』


いいのかな?


ゆうくんだけど、一応、男の人の部屋に行くって事だよね?


どうしようかなぁ!?



私は、迷いに迷ったが、


ま、いっか。

昼間だし。

ゆうくんだし。


と考えて行くことにした。


『楽しみ((´艸`*))

502だったよね?

今から行くね(^∇^)』


と返信して、部屋を出た。




ピンポーン ♪


─── ガチャ


ドアが開いて、ゆうくんが顔を覗かせた。


「いらっしゃい。上がって。」


「お邪魔…しまーす。」


靴を脱いで部屋に入ると、ゆうくんは、すでにキッチンに立っていた。


初めてのゆうくんち。


「ゆうくんち、広いね。」


「そう? まぁ、奏んちみたいに防音室入れて

ないから、余計にそう見えるのかもな。」


リビングの隅に置いてあるのは、電子ピアノとバイオリンと細長い黒いバッグ。


「ゆうくん、これ…?」


私は思わず立ち上がってそこに近寄った。


「あぁ。いいだろ?

p BONE って言うんだ。

出して吹いてみていいよ。」


そう言われて、バッグを開けると、中には真っ黒なプラスティック製のトロンボーン。


「こんなのあるんだ。音は? いいの?」


「んーー。

趣味でやる分には、これで十分かな?

ほら、ピアノだって、電子ピアノだし?」


と言って笑うゆうくんは、一緒に吹奏楽をやってたあの頃のままのような気がした。


「奏、もうすぐできるから、こっちのサラダ

運んでもらっていい?」


「分かった。」


ゆうくんが作ってくれたのは、パスタ。


私が1番好きなカルボナーラだった。


「どうぞ。」


私の前にお皿を置くと、ゆうくんはまたしても向かいではなく、隣に座った。


「私、ゆうくんにカルボナーラが好きって

言った事あった?」


「ないけど、みんなで出かけた時、いつも

食べてたじゃん。」


「よく覚えてたね。」


「ずっと見てたからな…… 」


うそ!?


ほんとに?



それから、何を言っていいのか分からず、私は俯いて無言でカルボナーラを口に運び続けた。




「………ごちそうさまでした。」


「お粗末様でした。」


ゆうくんは、やっぱりにっこりと微笑んでいた。




「ねぇ、ボーン吹いてみてよ。」


「いいけど、防音室じゃないから、ミュート

付けるよ?」


「いいよ。聴きたい。」


ゆうくんが吹いてくれたのは、聖者の行進。


とても楽しそうだった。


「私、ピアノ弾いていい?」


ゆうくんが頷いたのを見て、電子ピアノの電源を入れる。


ゆうくんのトロンボーンのメロディに合わせて、ピアノで伴奏を紡いでいく。


あの頃に戻ったみたい。


楽しい。




ジャズの定番曲を何曲か演奏すると、ゆうくんがボーンを下ろした。


「ちょっと、休憩。

これ以上吹いたら、唇腫れそう。」


「まだまだ、修行が足りないね~。」


私が茶化すと、


「バイオリンに変えてもいい?」


と聞いてきた。


「いいよ。

バイオリンも聴きたい。」


「でも、やっぱり休憩してから。

奏、お茶飲むだろ?」


そう言って、ゆうくんはキッチンへ行った。



「どうぞ。」


ゆうくんが出してくれた紅茶には、ミルクが添えられていた。


ゆうくんが自分の手に持っているのは、コーヒー。



「……… これも覚えててくれた?」


「………あぁ。」


私は、子供の頃からコーヒーが苦手で、いつもミルクティーを飲んでいた。


もう、胸がいっぱい。




2人で静かにお茶を飲み終えると、ゆうくんが立ち上がった。


バイオリンを取り出し、調弦していく。


調弦を終えると、ひとつ深呼吸をして、演奏を始めた。




愛の讃歌



バイオリンの音色に心を揺さぶられる。



……… これは、ゆうくんの想いだ。


ゆうくんの心が伝わる。


私の自惚れじゃない。


ゆうくんからの愛の告白。



ありがとう………





演奏を終えたゆうくんが近づいて来て、バイオリンを置くと、右手で私の目元を拭った。


「奏、愛してる。

ずっと、奏だけを想ってた。」


そう言って、ゆうくんは、私の肩を抱き寄せ、優しく包み込んでくれた。



私が泣き止むのを待って、ゆうくんは、私の耳元で囁いた。


「返事は今じゃなくていいから、俺との事、

ゆっくり考えて。

俺は、ずっと奏を想ってた。

この気持ちは、きっともう変わらないから。

慌てなくてもいいから、考えてみて。」



「うん… 」



私は、放心状態のまま、自分の部屋に戻り、考える事も出来ずに翌日を迎えた。


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