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優しい音を奏でて…  作者: くっきぃ♪
12/13

公認



私たちは、結局、月曜の朝まで一緒にいた。


途中、着替えを取りに帰る事はあったが、なんだか離れ難くて、ずっと一緒にいた。



・:*:・:・:・:*:・


1月7日(月) 12時。


今日のお昼は前半組だ。


お弁当を持って、みんなと社員食堂へ向かう。


すると、5階エレベーター前に、ゆうくんがいた。


「ゆうくんも今お昼?」


「ああ。

奏、一緒に大丈夫?」


ゆうくんが私の後ろのパートさん達に視線を移しながら聞いた。


「うん。

いいですよね?」


と私がパートさん達に聞くと、


「もちろん。」


と笑顔で返事をくれた。



社員食堂に着くと、空いた席を見つけて2人で座る。


私がテーブルを拭いている間に、ゆうくんがお茶を汲んできてくれた。


今日はゆうくんもお弁当だ。

今朝、私が自分の分を作るついでに、ゆうくんの分も作っておいた。


一緒に座って同じお弁当を広げる。


「ふふっ。なんだか照れるね。」


と私が言うと、


「いいんだよ。」


とゆうくんは嬉しそうだ。


5分程して、若い男の子が2人近づいてきた。


「課長!

ここ、ご一緒してもいいですか?」


「あぁ、どうぞ。」


どうぞ、とは言ったものの、ゆうくんは、あまり嬉しそうじゃない。


「こんにちは。」


童顔なのか、20歳位に見える男の子が、ニコニコと私に挨拶をしてくれる。


「こんにちは。」


と私も挨拶を返すと、


「綺麗な人ですねー。

ね、課長?」


とゆうくんを見る。


ゆうくんは無言だ。


「どちらの部署の方ですか?

今度、飲みに行きましょうよ。」


とても人なつっこい。


「え? あの… 」


私が返事に詰まっていると、なおも畳み掛ける。


「あ、僕、5階にいます池沢 瑠偉(いけざわ

るい)っていいます。

連絡先、教えてもらえませんか?」


私が、ゆうくんをチラッと見ると、


「池沢ぁ

社食でナンパするな!」


とゆうくんが言った。


「えぇ!?

でも、今、聞かなかったら、次、いつ会えるか

分かんないじゃないですか?」


すると、池沢くんではない方の男の子が、気づいた。


「池沢、諦めろ。」


「なんで!?」


「彼女と課長の弁当、中身一緒だぞ。」


池沢くんは、私たちのお弁当箱を見比べる。


私は自分の顔が赤くなるのが分かった。


でも、ゆうくんはなんだか、とても満足気だ。


「えぇ~!?

もしかして、課長の彼女さんですか?」


割とよく通る彼の声が、周囲の視線を集める。


「そうだよ。」


ゆうくんが認めると、私はいたたまれなくなって、赤い顔のまま、俯いた。



「課長、いいなぁ、こんな綺麗な彼女に愛妻

弁当作ってもらえて。

彼女いるなんて、全然言ってなかったじゃ

ないですか?」


「わざわざ言う必要はないだろ。

それより、お前、うるさい。

メシぐらい静かに食え。」


「はーい。」


ゆうくん、課長さんなんだなぁ。

それにしても、この子、かわいい。


「ふふふ。」


私は、思わず、笑ってしまった。


「名前くらいは聞いてもいいですよね?」


池沢くんが、私の顔を覗き込んでくる。


私はゆうくんの顔をチラッと見てから、


たちばな かなでです。

よろしくお願いします。」


と自己紹介した。


「課長、大変ですね。」


と池沢くん。


「何が?」


「だって、こんな綺麗な彼女、いつ他の男に

口説かれるかヒヤヒヤしてないといけない

じゃないですか?」


ゆうくんの顔が一瞬、引きつったように見えた。


「ふん。大丈夫だよ。

お前らには分からない深~い絆で結ばれてる

からな。」


ゆうくんは、私がお弁当箱を片付けるのを確認すると、池沢くんが何か言う前に、


「奏、行くぞ。」


と私の腕を掴んで、立たせた。



背の高いゆうくんは、ただでさえ目立つのに、私の腕を引いて歩く姿は、社員食堂中の注目を集めた。



明日から、お弁当食べにくくなっちゃうじゃん。





あの田崎課長に本命の彼女ができたという噂が、あっという間に本社内を駆け巡ったのは言うまでもない。


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